反米保守
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反米保守(はんべいほしゅ)とは、反米の立場をとる保守のことであり、特に近年の日本の外交を対米従属外交として憂う思想をさすことが多い。主に西部邁が唱えた。
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[編集] 思想傾向
基本的に彼らは戦前・戦中の大日本帝国を支配していた支配層の流れを組むグループである。15年戦争に関しては「アジア解放の為の自存自衛のための戦い」「中国、アメリカの挑発により仕掛けられた陰謀」として背定している。戦前への回帰主義を目指し、戦後民主主義を、占領軍と国内の左翼勢力が結託した戦前の日本の価値観に対する否定として非難している。冷戦時代は共産主義に対する脅威のため反共主義でアメリカ合衆国、親米保守とやむなく妥協していたが、冷戦構造の終結やイラク戦争、また2001年の靖国神社参拝を公式に掲げて登場した小泉純一郎政権の登場や中国・北朝鮮脅威論を背景に近年台頭してきている。
傾向として、「ヤルタ・ポツダム体制打倒」を掲げる新右翼に似ている。親台派・親アジア(中国、北朝鮮を含まない)派が多く、米国・中国・北朝鮮・ロシアなどの近隣諸国に批判的で、日本の伝統を重んじる傾向にある。韓国に対しては、北朝鮮に対する太陽政策に批判的で、北風政策を支持している。外交では、拉致問題の早期解決の為に経済制裁を発動する意見が多く、対中・韓においても、領土問題や歴史認識等で批判的な立場を取る。また、台湾・東トルキスタン・チベット・南モンゴル・満洲の独立を支持している場合が多い。しかし感情論のみの反中・嫌韓論的な意見には、批判的である。靖国神社問題では、8月15日以外の参拝は意味がないとし、中国との取り引きのため8月15日以外の参拝なら、中止してかわりに日本の安保理常任理事国入りを支持してもらうように主張もされているが、実現性を無視したナイーブな主張との見方もある。また、国連を「アメリカの代弁者」であるとして脱退を主張する論もある。
歴史認識では、太平洋戦争(大東亜戦争)に肯定的で、日中戦争(支那事変)に関しては、日華両国や中国共産党それぞれに責任があると考えているが、南京大虐殺や三光作戦などは中国政府や台湾国民政府のプロパガンダという認識をしている。さらに大東亜戦争に関連して、日本を戦争へと追い込み空襲・原爆投下などの残虐行為を行い、遂には日本を占領して憲法を押し付けたとしてアメリカを批判し、反米の一つの根拠としているほか、日本が大東亜戦争を通じてアジア諸国の独立を援助したとして評価し、現在の日本もアメリカを離れ、アジア諸国との共存の道を歩むべきだと主張する。この点は戦前の大アジア主義と類似している。
反米の姿勢が特に顕著に現れている面として、イラク戦争を侵略戦争と認識、対米従属を懸念する。この点は、保守であってもイラク戦争を支持・肯定する立場とは相容れない部分であり、親米保守との大きな対立点となっている。多くの保守派がイラク問題において対米従属になびいていると批判し、反米こそが真正保守であるという人もいる(西部邁など)。
郵政民営化や皇室典範改正など小泉内閣の政策の多くに対して日本の伝統的な慣習を破壊するという理由から反対で、憲法改正には賛成だが、それによる対米従属強化を警戒し、日本の真の独立(自主独立)を志向している。そのため核保有に対して肯定的。郵政民営化に反対したため、2005年の解散・総選挙で自民党執行部に「刺客」候補を送り込まれて落選した城内実は自らの立場を「真正保守主義」、「革新的な保守主義者」であるとして[1]、「最近の規制緩和路線、市場原理主義、株式至上主義の行き着くところはアメリカ型の格差社会である。格差が広がりつつあることは、現場の声を聞けば明らかである」[2]と小泉内閣を激しく批判し、月刊『現代』2006年7月号誌上で平沼赳夫、関岡英之との鼎談「アメリカ崇拝政治を排し、保守を再生せよ!」を行っている[3]。
[編集] 現状
- 若年層と一部戦中世代からは支持されているが、35-60歳の年代からは支持されていないため、保守系雑誌やメディアへの出演は少なく、親米陣営からは「極右」と、左翼・革新陣営からは「右翼」と認識されていて、言論界でも、孤立的傾向にある。しかしながら、ゴーマニズム宣言シリーズのベストセラーぶりから、若年層には支持層を広げているという見方も多い。
- 蔑称としてエセ保守という言い方がある。これは行き過ぎた反米ゆえ、誤解されやすい事が起因すると思われるが、これに対しては反米保守は「二極的な思考しか出来ない者の空虚な論」と斬って捨てて反論している。
- また別の蔑称として自称愛国者とか亡国奴とか自慰保守という言い方がある。これは反米保守が「日本の生残り・安全保障」より「個人的な民族主義的爽快感」を重視していると言う批判・揶揄である。外交は国の生残り・安全保障のために行うものであり「自称愛国者の亡国奴」の民族主義的自尊心に奉仕して爽快感を味あわせるために行う物ではない。他国との摩擦が戦争に発展しようものなら「自称愛国者」は爽快かもしれないが他の国民にとっては迷惑至極である。一般社会人も言いたい事を言って居れば爽快かもしれないが排除されるので、力関係や場の空気によって言いたい事を我慢するのは当然である。また外交に理非などは関係なく多数派工作があるばかりなのが現実であり、10人中9人がカラスは白い方が自分にとって都合が良いと思っている場で1人でカラスは黒いと言い張っても袋叩きに合うだけなのが反米保守には判らない・・という事情により、「国の生存より民族の誇りを優先するのは亡国行為であって、反米保守は自称愛国者だが実際は国家の厄介者の極右亡国奴か子供である」と親米保守からは見做されている。
- 小林よしのり及びその信者に対する蔑称として反米コヴァと言うのもある。反米民族主義者の意見が良く発表される雑誌SAPIOや宝島は反日中国人・韓国人留学生等によく読まれており、新浪論壇など中国のネット掲示板で「侵略を美化し日本帝国復活を目論む悪のファシストの意見」として格好のネタにされており、引用されている。
- またその鎖国的主張から、特に親米保守派からは「現実を見ていない」「現代の尊王攘夷論者」「ノムヒョンの同類」と批判されているが、これに対しては「安易な迎合的・妥協的リアリズムに堕す事を善しとせず、現実と葛藤しながら理想を追求するのが本道」と反米保守は反論している。其れに対して親米保守からは「国連軍創設主義者や核廃絶主義者が保守は理想を忘れていると言うなら判るが、民族主義の反米保守の言う理想とは何だ?靖国参拝したら世界の軍縮や核廃絶が進むわけでもあるまい?」という疑問が提議されている
- 安全保障重視派保守と民族主義派保守の最大の争点は靖国問題と歴史認識問題である。実際は安全保障重視派保守も民族主義者保守と「靖国に関する事実認識」や「歴史認識」では大差がない。安全保障重視派保守が問題にしているのは、靖国分祀反対や歴史教科書編集に於ける民族主義保守の外交的配慮の欠落した行動が、中国の「日米・日韓離間策」「日本軍国主義キャンペーンによる中国の軍拡隠蔽」に政治利用されて「利敵行為」そのものになっている事による。結果として発生した問題点を列記する
- 中国の日米/日韓離間策は極めて成功している。最も親日的な米国人ですら太平洋戦争を日本の自衛戦争だとは認める気は全くないので説得は無意味で手遅れである。米下院外交委員長のトムラントスの発言「靖国参拝は(ナチの)ヒムラー崇拝同然である」「日本が中韓と摩擦を引き起こし米国の国益を損なっている」ドイツ元首相シュミットの発言「日本が第二次大戦について反省がないため中韓と摩擦を引き起こしている」など、反米民族主義者の言動は、米議会において反日的・対日警戒的議員を増やし、日本の安全保障の根幹である日米同盟にヒビを入れている。
- 「日本は第二次大戦に反省のない軍国主義者」という中国のキャンペーンが成功した上、麻生氏の核議論発言が益々「軍国日本イメージ」を呼び起こした結果、北朝鮮が「日本は6者協議に核と関係がない拉致問題を持ち込んで6者協議を潰そうとしている」と言っただけで、米民主党支持者の中には「日本を6者協議から外せ」という意見さえ出る有様になってしまった。北朝鮮核問題は日本にとって重篤な安全保障上の問題になっているが、米議会で多数を占める民主党が上記のラントス氏のように中国・北朝鮮寄りになっており、共和党のブッシュ政権が北朝鮮核施設を攻撃しようとしても上記ラントス氏等が反対して実行させない事も韓国の反対と並んで根治的手段が取れない原因である。その結果、日本を狙う北朝鮮の核は今も日夜増えつつある。
- 中国の江沢民ら上海閥・韓国のノムヒョンなど中韓にも日本の反米民族主義者のような民族の誇り重視の民族主義者・自国至上主義者は多い。中国国内の反日民族主義者は中国がアジアのリーダーであるためには日本は邪魔だと考えており、中国では競争相手に「資本家の手先」などとマイナスイメージレッテルを貼って攻撃するのはありふれたやり方である。また中国は経済成長で余裕ができたのと台湾統合が悲願であるために、軍事支出を世界2位の10兆円/年に増やしており、米国に仮想敵国扱いされるのを恐れていて煙幕を張りたいと考えている。中国が選択した手段は「日本は軍国主義復活を目指しており中韓との摩擦を増やしている」と米国・欧州などで宣伝することである。現代の軍国主義者・ソ連化しつつある中国は日米が敵対関係にあった60年前の記憶をほじくり返すことでソ連化しつつある自国軍備に対する米国の警戒を日本に向けてそらしており、日本は戦後一度も戦争をせず、1987年以降軍事予算は微減しており量的には軍縮しているのに、軍事支出世界2位で17年間に渡って軍事支出を年率12-17%づつ増やし続けて今やソ連の軍事費に近づいている中国に靖国を突付かれて軍国主義者と罵られて米独にもそれに同調する者が少なくないという、外交的に非常に損な立場に陥っている。分祀に関する宮司や総代・小泉前首相の行動・つくる会の教科書などは中国に絶好の宣伝ネタを与えており、事実上「利敵行為」となっている
- 中露の戦闘機は2-3000機で日本は300機であり、最新情報によれば中国のSu-27系列は契約済み・製品/部品未引渡分も含めると474機、J-10をあわせればここ10年内に新鋭機だけでも1千数百機に達する見込みであり、ロシアも同等である。空自は数の格差を質で埋めるため米軍事技術の結晶であるF-22 (戦闘機)の輸入を切望しているが、日英豪へのF-22 (戦闘機)輸出を許可する法案は下院は通過したものの、親中派/対日警戒派議員の動きもあって上院では潰されてしまった。60年前をほじくる中国の作戦に靖国宮司と小泉氏が嵌り、対日警戒派議員を増やした事も大きく影響した。
- 国連の負担金はGDPに応じて割り当てられるので、中国やロシアは少ない分担金で常任理事国として大きな発言権を有し、日本やドイツは負担金ばかり多くて発言権がないという状態が長く続いている。また現在日本は其れを行うのに充分な政治力を有しないが、日本の長期的な国益は、日米経済力を中印経済力が追い抜いてゆく過程において、米国と共謀して1940年代に挫折した国連常備軍の創設と各国軍縮>軍備解除の理想主義を再提起し、国連軍以外は米露中印とも軍縮という世界軍縮について世界与論の支持を取り付けて中印を軍縮のテーブルに座らせ、中印の軍備が米露を超えて拡大してゆくのを阻止する事にあり、国連常任理事国入りは重要である。そして現在は日本が国連分担金で圧倒的であり事務局中心に一定の影響力を行使できるが、10年後には中国のGDPが日本を追い越されてしまうので、日本が常任理事国になりたければ、あと数年以内に目処を付けねばならない。そして実際問題として各発展途上国に支持してもらうためにはODAを約束して票を買わねばならないのである。2005年国連創立60周年が1つの山場であった、常任理事国にあぶれそうな韓国・イタリアが実質的反対運動を繰り広げた上に、日本の国際政治力伸長を喜ばない中国は靖国参拝や民族主義団体つくる会の教科書などを理由に日本の常任理事国入りに反対して潰しにかかった結果、日本はODAを払って票を買った挙句、靖国と教科書で潰された形になっており、安全保障重視派は「詰まらない意地で国益を損ねた」と小泉氏と民族主義保守派と宮司を非難した。
- 国連改革の経緯http://mochida.net/report05/5jara.html
- 国連憲章には敵国条項というものがあり、旧枢軸国が、国連憲章に違反した行動を行なった場合には連合国の構成国は国連決議に拘束されずに無条件に軍事制裁を課すことができるとしている。1995年に国連憲章の敵国条項は削除する事が決まったが、常任理事国変更などの決定を待って、一括して国連憲章全体を改訂し、各国で批准する事になっていたのに、常任理事国変更が潰されてしまったので敵国条項削除も1995年に決定されたものの批准されておらず、削除は発効せず宙に浮いてしまった。
- 前任者小泉前首相(親米安保重視でも反米民族主義でもない対米事大主義者)が外交的に大失敗を仕出かしたため、個人的には最も民族主義的歴史認識でありながら、現実主義的な安倍首相は2006年現在、中国を刺激する行動を慎重に避けており、日中歴史共同研究の年内開始で中国側と合意した。今後日中の歴史共同研究で一致点に達するかどうかは非常に困難な問題である一方、たとえ妥協が成立しても「日中協定史観」に対してつくる会等、民族派保守が日本常任理事国入り可決まで抵抗運動を控えるなどと言う事は考えにくいので国益が再び毀損される事を安全保障派保守は懸念している。尚 自民党議員で日本遺族会会長の古賀誠氏は党内の対外関係・安全保障重視派と宮司等の板ばさみになった結果、遺族会会長辞任の方向と伝えられる(詳細靖国神社問題参照)
- http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_abe/cn_kr_06/china_gaiyo.html
[編集] 主な反米保守著名人
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[編集] 関連項目
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