憲法改正
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憲法改正(けんぽうかいせい)とは、成文憲法の条文を修正、追加、もしくは削除すること。
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[編集] 憲法改正の限界
限界説と無限界説がある。
- 限界説 いかなる憲法にもその基本原理があり、当該憲法の改正手続に基づく改正としては、基本原理を超える改正はできない。
- 無限界説 憲法の定める手続によれば、どのような改正でも可能である。
限界説が通説とされているが、双方の説にもさらにいくつかの学説がある。
なお諸外国では、ドイツ・フランスなど、憲法で人権や統治機構などの一定の事項について改正を条文で禁止している例もある。
[編集] 日本国憲法の改正手続
日本国憲法では、第96条においてその改正手続を定めている。
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- 参考:日本国憲法第96条
- この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
- 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
[編集] 国会の発議
国会の発議は両院の総議員の3分の2以上の賛成によってされる。ここでいう「総議員の3分の2」はそれぞれの議院の3分の2であり、両院の議院全員で3分の2ではない。 その他、細かな争点には以下のものがある。
- 発案権は当然各議員が有する。内閣に発案権はあるともないとも言われるが、発議権はない。ただし、国会議員たる国務大臣が発案することが現実には可能である。
- 審議の定足数は総議員の3分の2が望ましいとされるが、特別の規定がなければ3分の1で足りる。
- 総議員の意味は、法律上の定数とする説と、現在議員の総数とする説がある。
- 両議院の議決は対等である。また、両院の議決が異なった際に両院協議会を開くということはない。
[編集] 国民の承認
国会が議決すると、法案は国民投票にかけられ、承認は多数決によって行う。投票の規定については、法律(国民投票法)が必要である。
「過半数」の内容にも諸説ある。
- 有権者の過半数
- 投票総数の過半数
- 有効投票の過半数
これについては国民投票法で決めることができるともされる。
[編集] 天皇の公布
国民投票で可決されると、改正憲法は天皇がこれを国民の名において公布する。
[編集] 日本の憲法改正の歴史
制定以来、現在にいたるまで、日本国憲法は一度も改正されたことがなく、改正のために必要な手続を定める国民投票法の制定もされていない。また、大日本帝国憲法も日本国憲法の制定まで一度も改正されることがなかった。
[編集] 海外の憲法改正
成文憲法がある国家で、日本のように憲法改正を行っていないのは実は世界でも珍しい部類に入る。03年3月に国立国会図書館が行った調査では対象の71か国中改正を行っていないのは日本とデンマークだけであった。日本より古く成立した世界の憲法で無改正のものは存在せず、結論として日本国憲法が世界で最長に改正されていない憲法である。
アメリカは18回、27か条を修正・追補している。日本の憲法と同様に第2次大戦後に新たに憲法を制定したドイツは51回,イタリアは13回の改正を行っている。最多の改正を行っているのはメキシコで、02年までに408回改正している。スイスも改正が多い国で、過去140回以上にもわたる改憲を行っている。
イギリスのように成文憲法を持たず判例および慣習法が憲法を成り立たせている不文憲法国家もある。(詳細はイギリスの憲法を参照)
ヨーロッパでは欧州連合(EU)加盟国の統一した意思決定のための条約として欧州憲法が存在するが、フランス、オランダで相次いで否決された。
[編集] アメリカ合衆国憲法の憲法改正
アメリカ合衆国憲法は、いわゆる硬性憲法である。憲法の修正がなされた場合には、それまでの条文はそのまま残され、憲法修正条項として追加される形により修正される。
憲法修正の手続は以下のとおり大きく二つの方法が規定されている。
- 連邦議会は、両議院の3分の2が認める場合には、憲法の修正を提案する。この場合には、4分の3の州(38州)の立法府により採択されれば、憲法への修正条項として追加されることとなる。
- 3分の2の州の立法府からの要請があった場合には、修正に関する憲法会議が招集され、そこで4分の3の多数により可決された場合にも、憲法への修正条項が成立する。
これまでの憲法修正は全て前者の方法によっており、憲法会議を経たものはない。
なお、アメリカ合衆国の場合には、各州にも独自の憲法が存在する。
[編集] 大韓民国憲法の憲法改正
大韓民国憲法は9回にわたって改憲され、特にそのうちの5回におよぶ改憲は、韓国の国家体制を大きく変えるほどの修正がなされた。現在の憲法は第六共和国憲法。
[編集] 関連項目
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