ファーストパーソン・シューティングゲーム
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ファーストパーソン・シューティングゲーム(First Person Shooting Game, FPS)とは、シューティングゲームの一種。
狭義には画面に登場する主人公の視点(一人称視点 First Person view)でゲーム中の世界・空間を見て、拳銃などの武器で相手を攻撃するタイプのゲームのこと。広義にはフライトシミュレータのうち空戦主体のものや拳銃型コントローラで画面中の敵を狙い撃つガンシューティングも含むが、ここではもっぱら狭義の意味でのFPSについて解説する。
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[編集] 歴史と概要
1974年にアメリカで発表された「Spasim」を始祖とする。id Softwareが1992年に発表した「Wolfenstein 3D」や、1993年に同社が発表した「DOOM」の世界的ヒットにより、FPSは一気にゲームジャンルとして定着した。日本では当初、これらが洋ゲーの一種として輸入され、一部のマニア層に愛好されていた。現在では、コンピュータ・ゲームの一大ジャンルとして認知されつつある。
アメリカではファーストパーソン・シューター(First Person Shooter)と表現される。一方日本では「一人称視点シューティングゲーム」と訳される。また、「ファーストパーソン・シューティングゲーム」という呼称が定着する前は「3Dシューティングゲーム」や、「DOOM系シューティングゲーム」とも呼ばれていたこともあった。
FPSと同じようなシューティングゲームのジャンルには、TPS(サードパーソン・シューティングゲーム Third Person Shooting Game)という、俯瞰する視点(三人称の視点)から主人公を操作するタイプのゲームがある。ゲームによっては、視点を一人称と三人称の両方に切り替え可能なゲームもある。
有名なTPSにはマックスペイン、スプリンターセル、BloodRayne、Grand Theft Auto(III以降)、Mafia、Hitman、コンシュマーではメタルギアソリッドシリーズやバイオハザードシリーズなどがある。
[編集] スポーツ系とリアル系
現在発売されているFPSの多くは、そのゲーム性から「スポーツ系FPS」と「リアル系FPS」との2つに分けることが出来る。
「スポーツ系FPS」は派手なアクションとスピード感が特徴的なFPSで、QUAKEシリーズやUnrealシリーズに代表される。
一方「リアル系FPS」は現実の銃器による戦闘を模したもので、一撃必殺の緊張感を売りにしたFPSである。Delta ForceやCall of Duty、カウンターストライク、Rainbow sixシリーズなどが有名。
もちろん全てのFPSがこの2つに分類されるわけではなく、スポーツ系の要素とリアル系の要素を併せ持ったようなものや、全く独自のシステム・ゲーム性を持ったものもある。
[編集] コンピュータ関連企業との結びつき
近年のファーストパーソン・シューティングゲームにはプレイヤーのPCにかなりのスペックを要求するものが多く、そのため特に海外ではnVIDIA等、多くのコンピュータ関連企業がファーストパーソン・シューティングを広めるべく、ゲームの大会にスポンサーとして参加している。Cyberathlete Professional League(CPL)、World Cyber Games(WCG)などには日本からも毎年代表選手が送り込まれている。
また、カリスマ性を持つプレイヤーやチームに対して海外大会への遠征費やパーツ等を提供する企業も増加しており、多くのプロ・ゲーマーが誕生している。日本では、2005年1月10日にPSYMIN(才民)がカウンターストライクチームの4dimensioNをスポンサードすることを発表し、日本初のプロ・ゲーマーが誕生した。同時期2005年4月18日にAggressiveGene(AXG-GAMING)というチームも大阪Internet Cafe NEXTAGEを拠点とし、8月1日にSoftTrading社からスポンサーを受けカウンターストライクチームでは2つ目のプロ・ゲーマーが誕生した。
[編集] 主なFPS
(ABC順)
- Alien vs Predator
- America's Army
- Brothers in Arms
- BLACK
- CALL OF DUTYシリーズ
- Delta Forceシリーズ
- Deus Ex
- DOOMシリーズ
- FarCryシリーズ
- F.E.A.R.(First Encounter Assault Recon)
- Ghost Reconシリーズ
- Giants-CitizenKabuto-(のメッカリンパート)
- HALF-LIFEシリーズ
- HALOシリーズ
- Joint Operations
- Kingpin
- Land of the Dead: Road to Fiddler's Green
- Marathon
- Nexuiz
- No One Lives Forever
- Operation Flashpoint
- Painkiller
- POSTALシリーズ
- QUAKEシリーズ
- Rainbow sixシリーズ
- RUNE
- SeriousSamシリーズ
- SIN-罪-
- Soldier of Fortuneシリーズ
- SWATシリーズ(SWAT3,SWAT4のみ)
- Thiefシリーズ
- Tribesシリーズ
- Turok
- Unrealシリーズ
- Unreal Tournamentシリーズ(Unrealシリーズのマルチプレイに特化した派生バージョン)
- War Rock
- Wolfensteinシリーズ
- TrueCombat:Elite(Wolfenstein:Enemy TerritoryのMod)
- アウトトリガー
- ゴールデンアイ 007
- ジャンピングフラッシュ!シリーズ
- バトルフィールドシリーズ
- メダル・オブ・オナーシリーズ
[編集] 日本におけるFPS
上記のタイトルの中には、日本製のFPSは皆無であるといってよい。バーチャコップシリーズやタイムクライシスシリーズ・デスクリムゾンシリーズ・THE HOUSE OF THE DEADシリーズなどはガンシューティングゲームであって狭義のFPSではない。またエースコンバットシリーズは俯瞰視点と主観視点の切り替え機能があるが、これはフライトシューティングであって狭義のFPSではない。任天堂にはメトロイドシリーズの中にFPSの「メトロイドプライム」シリーズがあるが、これはアメリカにある任天堂の子会社レトロスタジオによる制作である。
プレイステーションなど3DCGを利用可能なゲーム機が登場した当時には、FPSあるいはFPSに近い主観視点の日本製ゲームソフトも少なからず制作されていた。しかしこれらは日本のプレイヤーにはあまり受け入れられなかった。単純にゲームとしてのおもしろさに問題があるものも少なくなかったが、それ以上にともかく難しいマニアックなゲームという印象が強くなりすぎたことが大きい。さらにアメリカ製の作品は、人物などキャラクターのデザインが日本人好みではなかったこともFPSが受け入れられないことに繋がっている。しかしゴールデンアイ 007のように日本国内でもヒットしたFPSもあり、単にメーカー側の普及への努力不足も否めない。
根本的な理由として、FPSがマウスとキーボードを併用することで、素早く、複雑かつ精確なコントロールが実現でき、実際に自分の視点であるかのようにプレイできる環境で生まれ育ったことが挙げられる。反面、日本で支配的であった家庭用ゲーム機のコントローラーでは、そもそも直感的な視点操作を得ることが難しかったのである。事実、プレイステーション時代に北米では日本以上に多くのFPSが発売されたが、同様の理由から高い評価を受けたものはきわめて少なかった。また日本国内でも、ガングリフォンシリーズや機動戦士ガンダム外伝シリーズなど、ロボットを題材とすることで操作系の煩雑さを操作する楽しみへ昇華させたものもあったが、一般化するには至らなかった。
FPSに類似したゲームはバイオハザードシリーズや戦国無双に代表される三人称視点シューティングがある。これらはプレイヤーの周囲がある程度見渡せ、視点の切り替えが頻繁には必要でないことからコントローラーの問題はさほど大きくなかったが、それでもたとえば『ゼルダの伝説 時のオカリナ』では「注目」と「視点固定」という手法によって操作を簡素化し、問題を乗り越えていた。この操作上の問題が、(特にTPSにくらべて)FPSは複雑で難しいという評価の定着につながった。ニンテンドウ64以降アナログスティックが一般化したことで、またソフト自体も家庭用ゲーム機でのプレイを考慮して開発されるようになって操作性の問題はずいぶん改善されたが、未だマウスとキーボードの操作には及ばないという一部のマニアの声が多い。しかしながら海外でもコンシューマスタイルでのFPSやTPSがすでに市民権を得ており、作る側もすでにキーボード・マウスでの操作だけに依存することは出来なくなっているのが現状である。この点については、標準のコントローラーにポインティング機能を搭載したWiiが注目されるところである。
その他の理由として、三人称視点のゲームとの成功の差を日本人の嗜好に求める説もある。自ら主人公を演じるよりも、活躍する主人公を見る方を好むといったものであるが、これらの学問的研究は始まったばかりである。さらに、FPSは登場初期がインターネット黎明期にあたり、ネットを介してコミュニティが形成され、オンライン対戦や情報交換が盛り上がったり、ユーザーの手によって多数のModが公開されたことが爆発的人気の後押しをしたが、家庭用ゲーム機版ではそのような底上げ要因が全くなかったことも大きい。
近年、国内メーカーの中には日本国内のゲーム市場縮小の影響と北米、欧州での販売拡大に向けて、FPSタイトルを製作する動きがある。またコナミやカプコンといった大手メーカーが海外製FPSの日本語化を手がけたり、日本国内向けに対戦用サーバーを用意するなど、国内でもプレイヤー層は広がりつつある。ファミ通でPCのFPSが紹介されるなど、知名度も上がっているようだ。
[編集] 欧米でのFPS
FPSはゲーム画面を3Dで表示する事が前提となっているため、よりリアルで美しいゲームグラフィックが、FPSゲームを評価する大きな要因となっている。そのため、欧米での最新のゲームグラフィックを表現したゲームは、FPSである事が多い。また、一回のゲームプレイ時間が他のゲームジャンルと比べて比較的短く、手軽にプレイできることもあって、インターネットのオンラインマルチプレイが非常に盛んでもある。以上の事から、欧米では最も人気のあるゲームジャンルの一つであると言える。
[編集] ゲームエンジンの利用
FPSを製作する際には最初にベースとなるゲームエンジンを構築してから製作される場合が多い。
有名なゲームエンジンは「DOOMエンジン」「Quakeエンジン」「Unrealエンジン」「HalfLifeエンジン」(それぞれそのエンジンが使用されたゲームのタイトル)「Lithtechエンジン」(米Monolith社)などがある(正確には「Quake3エンジン」といったシリーズ番号が入る)。
このゲームエンジンは3Dグラフィック(3Dレンダリング、アニメーション処理など)、ファイル(3Dオブジェクトやテクスチャなど)、入力出力(キーボード、マウス、サウンド)、物理処理(衝突処理や人体骨格のシミュレーション)、ネットワークなどの処理を行う基本処理を統合しており、ユーザーから見たゲームはこの上に構成されたスクリプトやマップファイルとして明確に分離階層化されている。
有名なゲームエンジンでは3Dオブジェクトを他社3Dモデリングソフトから変換するための仕様やプラグイン、スクリプト処理の仕様などが公開されている場合もあり、Modとしてユーザー側でキャラクタやマップ、ゲームのルールを追加したりすることも可能になっている。
このゲームエンジンのライセンスを取得し、その上に独自のキャラクタとゲームシステムなどを乗せてFPSやそれ以外のゲームが製作される場合も多い。PC上だけでなく、プレイステーション2などの家庭用ゲーム機上での動作もほとんどのエンジンで可能となっている。家庭用ゲーム機にも数多くの有名FPSが移植されつつある。
ファーストパーソン・シューティングゲームのゲームエンジンを利用すれば、あまり3DCGに関する知識を有していなくても比較的簡単に3DCGを使ったコンテンツを製作することが出来、具体例としては、マシニマ(Machinima)などが挙げられる。海外では大学の卒業研究の題材としてFPSのエンジンを用いた映像製作に取り組んだ例もある。
[編集] 関連項目
- FPSで遊ぶ事により、乗り物酔いに似た症状を訴える人も居る。
- ずっと同じ姿勢で遊び続けることにより血栓ができ、最悪の場合は肺塞栓により心停止に至る。韓国ではMMORPGにより、少なくとも2名の死亡者が発生している。予防のため、定期的に姿勢を変える・水分を摂取する・ストレッチをする・室内の湿度を高めに保つなどの工夫が必要である。
- FPSで遊びすぎる事により、FPSと現実の現象を混同してしまうとされる、架空の病気。