Debian
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
公式サイト: | debian.org |
開発者: | Debian Project |
OSの系統: | Linux |
ソースコード: | Debian Free Software Guidelines |
最新リリース: | 3.1r4(sarge) / 2006年10月28日 |
対応プラットフォーム: | i386, AMD64, PowerPC, 68k, SPARC, Alpha, ARM, MIPS, HPPA, S390, IA-64 |
カーネル種別: | モノリシックカーネル |
開発状況: | 開発中 |
Debian(デビアン)またはDebian Projectは、ボランティアの集まりによってフリーなオペレーティングシステムを作成しようとするプロジェクト。またはそのプロジェクトによって作成されたオペレーティングシステムを指す。歴史が長く保守的なLinuxディストリビューションのDebian GNU/Linuxが最もよく知られている。 Hurdのような他のカーネルのためのDebianを提供する計画も進行中。正式リリースはされていないが、FreeBSDやNetBSDをベースにした移植版もある。
目次 |
[編集] プロジェクトの組織
プロジェクトは、世界中の有志の開発者によって構成されている。プロジェクトには誰でも参加できるが、正規の開発者になるためには、技術的なチェックを受ける必要がある。現在、1000名以上[1]のメンバーがいる。日本人の開発者は40人ほどである。
プロジェクトの抱負として、Debian社会契約[2]を掲げている。Debian社会契約は、プロジェクトが尊守すべき事項を定めたもので、1997年7月5日に採択された。その中のDebianフリーソフトウェアガイドライン (DFSG) は、Debianにおけるソフトウェア評価基準となっており、このガイドラインに適合しない、フリーではないと評価されたソフトウェアは、Debianの一部として提供されることはない。
プロジェクト内の意思決定はDebian憲章[3]の元で行なわれる。Debian憲法は、組織構成やその権限、投票にかけるまでの手続きなどを定めたもので、1998年12月12日に採択された。
[編集] Debian GNU/Linux
Debian GNU/Linuxは、Debian Projectが作成しているLinuxディストリビューション。Linuxディストリビューションとして見た場合、コミュニティによる体制維持と、パッケージ管理システムによるコンパイル済みパッケージ (拡張子 .deb) のソフトウェアの導入が特徴となっている。
また、基本となるシステムは、Debian baseとして、最小限度にまとめられ提供されているため、必要機能を構成し易い。
[編集] メンテナンスの容易さ
Debianの特長として、メンテナンスの単純さがある。パッケージ管理システムを備えており、ひとたびインストールが終了すれば、パッケージマネージャのAPT (Advanced Package Tool) により、ソフトウェアの更新が行える。パッケージのインストールは、セキュリティ関連の更新やプログラム相互の依存性確認も含めて、仮想端末 (コンソール) より容易に操作できる。また、APTには幾つかのフロントエンドが開発されており、もっとユーザーフレンドリーなユーザーインターフェイスで操作する事も可能である。
代表的なコマンドは次のとおり。
- ソフトウェアをダウンロードできるサイトのリストの更新
apt-get update [ Enter ]
- インストール済みのソフトウェアの更新
apt-get upgrade [ Enter ]
- 新しいソフトウェアのインストール
apt-get install パッケージ名 [ Enter ]
またこれらapt-getコマンドを使用すると、システムに必要なパッケージが存在しない場合、その不足している依存性パッケージを自動的に判別し、そのパッケージも同時にインストールしてくれる。
パッケージの依存関係には、大きく分けて、depends (依存)、recommends (推奨)、suggests (提案) という三種類の項目が設定されており、動作に必須なものがdepends、動作に必須ではないが常識的に必要とするものがrecommends、組み合わせる事で更に便利に使えるものがsuggestsに指定されている。
しかしAPTではdepends以外の項目を上手に扱えないため、これらの項目を最大限生かす事ができるaptitudeの使用がSargeでは勧められている。
aptitude update [ Enter ] aptitude upgrade [ Enter ] aptitude install パッケージ名 [ Enter ]
また、パッケージ管理にはdebconfと呼ばれるフレームワークが用意されており、パッケージ作成者はユーザーに対して簡易のフロントエンドを提供できる。そのため、このフレームワークを積極的に利用しているパッケージでは、インストール後にユーザーが行うであろう初期設定の大半を、対話形式の質問に答えていくだけで、インストールと同時に終える事ができる。またdebconfのフロントエンドは、対話形式のものから、非対話形式なもの、キャラクタベースなものから、グラフィカルなものまで、ユーザーが自由に選択可能である。
[編集] リリース
公開は、四つのレベルで何時でも行なわれている。
- 安定版 (stable):これは、厳密に安定性を検証したリリースで、公式のリリースはこれになる。これは、おおよそ一年から二年の間隔をもって公開されている。
- テスト版 (testing):次期の安定版となる公開テスト中の版である。次に説明する不安定版で一定期間致命的なバグが発見されなかったパッケージが、自動的にテスト版に組み入れられる。
- デスクトップなどで使う分には支障のない程度の安定度を持っていると言われ、最新のデスクトップを使いたい場合は、このテスト版を使うことが多いようである。だがパッケージ更新が機械的に行なわれるため、依存関係が壊れやすい。
- リリースが近付くと段階的にフリーズされ、この自動処理が止められる。すべてのRCバグ (Release Critical Bug。安定版として致命的なバグ) が無くなったとき、テスト版は安定版としてリリースされる。
- テスト版が安定版としてリリースされる時期が近付くとセキュリティ・アップデートの提供が始まる。それ以前は提供されない。だが、2005年9月より、Debian開発者の有志らがDebian Testing Security Teamを結成し、非公式な形でテスト版向けのセキュリティアップデートを提供している。
- 不安定版 (unstable):これは、開発者向けの版である。「sid」とも呼ばれる。
- セキュリティのアップデートは提供されないが、パッケージの更新サイクルが早いため、セキュリティの問題も比較的早く取り除かれる。またテスト版とは違い、DSA (Debian Security Advisory) によってどのバージョンから当該セキュリティホールが塞がれてるか告知される。
- experimental:これは、影響が大きなパッケージ群が、不安定版に入れる前に一時的に置かれて、不安定版との組合せによりしばらく実験が行われる。experimentalだけで全てのインストールを行うことは出来ず、他の版との組み合わせにより動く。
なお、apt pinningの技法を使うと、一部のパッケージをより開発途上の版から借りてくる事ができる。例えば、基本的にシステムは安定版で動いているが、Webブラウザをテスト版の物を使うなどと言った事ができる。この状態でもAPTが、各パッケージの依存関係を解決してシステムの整合性を保ってくれるので、パッケージの依存関係による問題は生じないようになっている。
Debianのコードネームは、ディズニー配給の映画「トイ・ストーリー」のキャラクタから取られている。 これは、過去にDebianのプロジェクトリーダを務めたブルース・ペレンズ氏が、トイ・ストーリーを製作したピクサー・アニメーション・スタジオ社の社員であったためである。
- 1.1 - buzz (1996年6月17日)
- 1.2 - rex (1996年12月12日)
- 1.3 - bo (1997年6月2日)
- 2.0 - hamm (1998年7月24日)
- 2.1 - slink (1999年3月9日)
- 2.2 - potato (2000年8月15日)
- 3.0 - woody (2002年7月19日)
- 3.1 - sarge (2005年6月6日)
- 4.0(予定) - etch (次期安定版:テスト版)
- --- - sid (常に開発版:不安定版)
[編集] 移植版
Debianはいくつかのアーキテクチャに移植されている。以下は実際にリリースされた移植版である。括弧内はプロジェクトでの呼称である。
- x86 (i386、ただし80386は対応しない)
- MC68000 (m68k)
- SPARC (sparc)
- Alpha (alpha)
- PowerPC (powerpc)
- ARM (arm)
- MIPS (mips と mipsel)
- PA-RISC (hppa)
- IA-64 (ia64)
- System/390 (s390)
まだ正式リリースされていない移植版もいくつかある。
- AMD64
- SuperH (sh)
- Motorola/IBM PowerPC64 (ppc64)
- Linksys NSLU2 (armeb)
- Renesas Technology M32R (m32r)
- Sun UltraSPARC (sparc64)
こちらも正式リリースはまだだが、Linuxカーネル以外への移植版もある。
- Debian GNU/Hurd (hurd-i386)
- Debian GNU/NetBSD (netbsd-i386, netbsd-alpha)
- Debian GNU/kFreeBSD (kfreebsd-i386, kfreebsd-amd64)
- Debian GNU/Solaris (solaris-i386)
[編集] Debianベースのディストリビューション
Debianはいくつかのディストリビューションのベースとして利用されている。以下はその一部である。
- Damn Small Linux - 名刺サイズのCDに収まるLiveCD。
- KNOPPIX - ポピュラーなLiveCD。産総研による日本語版あり。
- Linspire - 企業向けディストリビューション (旧Lindows)。
- Progeny Debian - RHELのAnacondaインストーラーを移植したディストリビューション。
- Ubuntu - ポピュラーなディストリビューション。
- UserLinux - 企業向けディストリビューションのベースとなるべく開発されている。
- Xandros - 企業向けディストリビューション。
[編集] 注釈
- ↑ http://db.debian.org/
- ↑ http://www.debian.org/social_contract
- ↑ http://www.debian.org/devel/constitution
[編集] 外部リンク
[編集] プロジェクトの公式リソース
[編集] コミュニティサイト
[編集] カスタムDebianディストリビューション
Custom Debian Distributions Wiki Pageに一覧などがある。
- Debian Desktop - デスクトップ向け。
- Debian Enterprise - 企業向け。UserLinuxと協調作業を行う可能性がある (2003年12月現在)。
- Debian Junior - 1歳から99歳までのこども向け。
- Debian Lex - 法律事務所向け。
- Debian Med - 医療組織向け。
- Debian Nonprofit - NPO向け。
- DeMuDi - オーディオ/マルチメディア開発者向け。
- Skolelinux (Debian-Edu) - 学校向け (School Linux)。