遺伝学
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遺伝学(いでんがく)は生物の遺伝現象を研究する生物学の一分野である。遺伝とは世代を超えて形質が伝わっていくことである。
[編集] 遺伝学の歴史
遺伝現象は古くから知られていたが、遺伝する形質(表現型)は交雑とともに混じりあっていくと考えられていた。メンデルはエンドウマメの形態に注目して交配実験を行い、形態の遺伝が一対の遺伝粒子を仮定することで説明できることを発見した。詳しくはメンデルの法則を参照。またウォルター・S・サットンが染色体の観察から遺伝の染色体説を提唱し、モーガンらが遺伝学的手法を用いて遺伝子が染色体上にあることを証明した。
染色体は DNA やタンパク質から構成されており、当時、遺伝子の正体はタンパク質であると考えられていた。アベリーやハーシーらの実験により DNA が遺伝情報を担っていることが明らかにされた。ワトソンとクリックらによるDNAの2重らせん構造の発見後は、DNA上にある遺伝子の物質的な側面からの研究が発展し分子生物学とよばれる研究分野が開拓された。遺伝子の機能の解析は生物学のほとんどの分野と関係がある。
[編集] 方法論としての遺伝学
生物学の方法論においては、遺伝子操作や突然変異の解析によりその機能を調べるアプローチ(遺伝学的手法)を遺伝学と呼ぶことが多い。この場合の対義語は生化学や生理学となる。
遺伝学的手法は二通りある。突然変異体の表現型に注目して、その原因遺伝子を同定し、機能を明らかにしていく古典的な正の遺伝学 (forward genetics) 、逆に遺伝子を先に単離し、遺伝子破壊等の手法を用いて機能を調べる逆遺伝学 (reverse genetics)である。前者をヒトに応用した疾患の解析方法が連鎖解析や関連解析である。多くのメンデル型疾患において連鎖解析によって原因遺伝子が特定され、診断や治療に寄与している。また後者はPCRやシーケンサーといった技術の進歩によって近年盛んになってきた手法であり、特定の機能を有するタンパク質を同定し、その表現型から予測される疾患との関連を調べる手法である。
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