軍備拡張競争
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軍備拡張競争(ぐんびかくちょうきょうそう、軍拡競争)とは、各国家が自国の軍備を拡張し、他国よりも軍事面で優位に立とうとする争いのことを指す。軍備の拡張には兵員の増強、軍事技術の開発、装備の更新などが含まれる。
古来より、国家は他国家に対して軍事的優位性を得ようと軍備の拡張に努めてきたが、軍拡競争の最たる例はアメリカ合衆国とソビエト連邦の超大国同士が凌ぎを削った冷戦期の核開発競争である。東西両陣営の「盟主」として世界情勢に大きな影響力を持った米ソは、互いに相手を上回る核兵器の開発・改良に全力を注いだ。
ソ連は計画経済体制で得た資金を軍拡競争につぎ込み、西側陣営に対して大きな脅威となるICBMサタンを1970年代後半に開発、1980年に実戦配備した。これに対抗する形でアメリカは1983年、レーガン大統領がスターウォーズ計画を提唱。さらなる軍拡の道を進んだソ連経済は疲弊し、結局体制崩壊の一因となった。
19世紀末から20世紀初頭のドイツでは、宰相ビスマルクを更迭した皇帝ヴィルヘルム2世がそれまで親善関係にあったイギリスの3C政策に対抗する形でいわゆる3B政策を推進。積極的な海外進出を目的として海軍増強をはじめとする軍拡を企てたが、この動きは英・仏・露に事実上のドイツ包囲網である三国協商を形成させることとなり、結果として第一次世界大戦へとつながった。
21世紀に入った現在でも、「不安定の弧」に含まれる極東地域においては軍備拡張の動きが盛んである。中国・北朝鮮・台湾・韓国・日本・在日米軍が密接し、海洋権益や領土・独立問題などで国家間の対立がみられるこの地域は、世界的にみても有数の軍拡競争地域となっている。軍拡の理由として国内の市民団体や反戦団体などの左翼勢力、および中国・韓国・北朝鮮などは在日米軍再編や日本の改憲世論を理由にあげており、逆に在日米軍や日本政府および右翼勢力は中国・北朝鮮の軍事的脅威を主張している。
アメリカ人作家カール・セーガンはかつて軍拡競争を「二人の男が腰の高さまでガソリンにつかり、一人が3本のマッチを持ち、もう一人が5本のマッチをもっている」状態に例えた。軍拡競争に絶対的なゴールはなく、あるとすれば他国よりも前を走っているという相対的なものでしかない。