資金洗浄
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資金洗浄(しきんせんじょう)とは、犯罪行為によって得られた収益金の出所などを隠蔽してしまう行為である。「マネーロンダリング」(money laundering)の訳語。
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[編集] 概説
汚れた(=不法な)資金が、あたかも一見綺麗な(=合法的な、違法とは容易に判別できない)資金に洗浄されたかのように見えることから、このように言われる。
具体的には、麻薬や覚醒剤などの規制薬物取引、盗品などの贓物(ぞうぶつ)取引、脱税、粉飾決算などによって得られた収益金を、捜査機関による差押え・摘発を受けたりすることなどを逃れたり、新たな犯罪の資金源として利用したりする目的で、架空人または他人名義の金融機関口座などを利用して転々と送金を繰り返したり、または会社の債券や株式の購入、古典的な方法としては大口寄付など、その他合法的な財産と混和させるなどの方法が採られる。また、最近ではオンラインゲームでゲーム内経済を混乱させるとして問題になっているリアルマネートレーディング(RMT)行為なども、これに悪用されているのではないかという懸念が根強く指摘されている。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が発生した後、国際テロリズム組織「アルカーイダ」が資金洗浄行為を行っていたという疑惑が浮上し、各国の金融機関がテロリストのメンバーの口座を凍結した。
日本国内では、指定暴力団「五菱会」(現在の「二代目美尾組」)の実質的ナンバー2で、「闇金融の帝王」と呼ばれていた梶山進が、クレディ・スイス本店に設置した口座を利用して資金洗浄行為を行ったとして、2003年8月に摘発された、という例がある。スイス銀行は秘匿性が高いために利用される事が多い。
また金融口座は在日コリアンの持つ通名によっても開設できるため、これを悪用した架空口座が資金洗浄などの犯罪の温床になっているとする指摘がある。
日本では、規制薬物取引に関する資金洗浄行為は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(平成3年法律第94号)、その他の資金洗浄行為および組織的な資金洗浄行為(不法資金による会社乗っ取り行為など)は、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号)により、それぞれ禁止されている。資金洗浄対策を強化するため、現金でのATM振り込み限度額を引き下げる動きがある。
[編集] 資金洗浄行為への国際的対処に関する主な歴史
- 1988年12月 「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(麻薬新条約)採択。
- 1989年7月 アルシュ・サミット開催(フランス)。金融活動作業部会(Financial Action Task Force, FATF)設立。
- 1990年4月 FATF、マネーロンダリング対策に関する「40の勧告」提言(1996年に改訂。警察庁による和訳)。
- 1995年6月 ハリファクス・サミット開催(カナダ)。薬物犯罪以外の重大犯罪に関するマネーロンダリング対策についても討議。
- 1998年3月 バーミンガム・サミット開催(イギリス)。先進国間で、マネーロンダリング情報分析機関(Financial Intelligence Unit; FIU)の設置義務付け(日本は2000年2月に、金融監督庁(現在の金融庁)のもとに「特定金融情報室」を設置)。
- 2000年6月 FATF、マネーロンダリング対策に非協力的な15カ国・地域(Non-Cooperative Countries and Territories, 一覧)を公表。
- 2006年10月 FATF、マネーロンダリング対策に非協力的な国・地域のリストからミャンマーを削除し、疑わしい取引の届出に関して特別の注意を払うべき国や地域は無くなったと発表した。
[編集] 関連項目
- 経済犯罪
- タックス・ヘイヴン
[編集] 外部リンク
- 金融庁・特定金融情報室(マネー・ローンダリング対策)(日本版FIUとして国際的に認定された機関)
- What is Money Laundering
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