荒川稔久
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荒川 稔久(あらかわ なるひさ、1964年3月14日 - )は、日本の脚本家。愛知県名古屋市出身。主にアニメ、特撮テレビドラマの脚本・シリーズ構成を手掛けている。
愛知県立大学在学中の1986年、小山高生が主宰するシナリオ学校「アニメシナリオハウス」の第1期生となり、同年、『ドテラマン』でデビュー。翌1987年、川崎ヒロユキ、影山由美、らとともに、小山が設立した企画集団「ぶらざあのっぽ」の創立メンバーとなる。同集団にはのちに隅沢克之、あかほりさとるらも加わった。
特撮テレビドラマ作品のデビューは1988年、『仮面ライダーBLACK』第28話「地獄へ誘う黄金虫」にて。
目次 |
[編集] 脚本作品
(シリーズ構成、もしくはメインライターを務めた作品)
[編集] アニメ
- BLUE SEED(1994年)
- センチメンタルジャーニー(1998年)
- 快傑蒸気探偵団(1998年)
- 課長王子(1999年)
- 鋼鉄天使くるみ(1999年)
- セラフィムコール(1999年)
- りぜるまいん(2002年)
- カナリア ~この想いを歌に乗せて~(2002年)
- D・N・ANGEL(2003年)
- 超変身コス∞プレイヤー(2004年)
- ヒットをねらえ!(2004年)
- LOVE♥LOVE?(2004年)
- ジンキ・エクステンド(2005年)
- エレメンタル ジェレイド(2005年)
- ラブゲッCHU ~ミラクル声優白書~(2006年)
- サルゲッチュ ~オンエアー~(2006年)
[編集] 特撮
(▲はシリーズ構成、もしくはメインライターを務めた作品)
- 仮面ライダーBLACK(1987年)
- 超光戦士シャンゼリオン(1996年、木下健名義)
- 仮面ライダークウガ(2000年)▲
- スーパー戦隊シリーズ
- 鳥人戦隊ジェットマン(1991年)
- 恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992年)
- 五星戦隊ダイレンジャー(1993年)
- 忍者戦隊カクレンジャー(1994年)
- 激走戦隊カーレンジャー(1996年)
- 電磁戦隊メガレンジャー(1997年)
- 忍風戦隊ハリケンジャー(2002年)
- 爆竜戦隊アバレンジャー(2003年)▲
- 特捜戦隊デカレンジャー(2004年)▲
- 魔法戦隊マジレンジャー(2005年)
- 轟轟戦隊ボウケンジャー(2006年)
[編集] 作風
- 女性キャラクターをストーリーの中心に据えた作品やエピソードには定評があり、「ヒロインものの名手」と言われる。「鋼鉄天使くるみ」「りぜるまいん」等、自分の手がけたヒロインアニメの主題歌作詞を自ら手がけることで有名。また、戦闘シーンで戦場を様々な世界に二転三転させることでも知られる。
- アニメにおいては、もっぱら「美少女アニメ」をシリーズ構成から手がけることが多く、その「美少女もの」としての安定した作風と王道ぶりには定評がある。また、熱狂的なアイドルファンであり、脚本中にアイドル芸能ネタを随所に絡めることでも有名である。
- 特撮テレビドラマにおいては、「例え何度裏切られても、それでも人間を信じたい」という強い信念を持つ人物(『五星戦隊ダイレンジャー』〔1993年〕の将児、『仮面ライダークウガ』の五代雄介、『爆竜戦隊アバレンジャー』の伯亜凌駕など)を好んで物語の中心に据える傾向が見られ、スーパー戦隊シリーズではエピソードのテーマを意図的に「戦隊メンバー全員の結束」に集約するなど、人間の連帯を暗に訴える作品が多い。また、「ヒーローでなくなった後」をも視野に入れた「ヒーローである人物の日常」を非常に重視する。
- 1990年代後半~2000年代の東映特撮作品でメインライターを担当した脚本家の殆どがそうであるように、1990年代前半までの特撮ヒーローが持っていた「完全無欠」「孤高」といったステロタイプには懐疑的で、『超光戦士シャンゼリオン』(1996年)で1本だけ書いた脚本(第30話「ヒーローの先生!」)では、ヒーローおたくのダークサイドを通してそれらを戯画化している。そういったことから、「説教臭い」「ヒーローが弱い・ワイルドさがない」「カタルシス不足」等の批判もある。
[編集] エピソード
- 名古屋出身のせいか、所々に名古屋ネタを絡める事もある(彼が脚本を手がけたドラマCD・コンパイラFXでは、同じ愛知県出身の水谷優子演じるアセンブラが名古屋訛りになったり、当時ののぞみ号の1本が名古屋飛ばしにされていた事に怒り狂うと言う、完全に原作から外れた話になっていた)。
- プロ野球中日ドラゴンズのファンで、『仮面ライダークウガ』や『爆竜戦隊アバレンジャー』では、登場人物にドラゴンズの選手・監督の姓名を振る趣向を見せ(『クウガ』の「杉田守道」『アバレンジャー』の「杉下竜之介」など)、『りぜるまいん』でもヒロインのりぜるに、応援歌『燃えよドラゴンズ』の替え歌で「一番素敵なダンナ様、二番素敵なダンナ様~」と歌わせている。自身も井上敏樹の代打で『超光戦士シャンゼリオン』の脚本を執筆する際、「木下健」(姓名を倒置し音読するとケン・モッカになる)の筆名を使っている。
- 『帰ってきたウルトラマン』(1971年)のファンでもあり、『仮面ライダークウガ』のプロデューサーだった高寺成紀の回想によれば、『クウガ』のシナリオの打ち合わせで行き詰まった時、同作に出演していた藤田進の物真似で「MATは解散だ」と言ったこともあったという。
- スーパー戦隊シリーズでは二度目のメインライターを務めた『特捜戦隊デカレンジャー』は1970年代~1980年代の刑事ドラマのテイストを織り込んだことでも知られるが、第37話「ハードボイルド・ライセンス」は、自身が「一番ハマった刑事ドラマ」という『非情のライセンス』にオマージュを捧げたエピソードであり、いい意味で泥臭く、しかし重苦しくやるせない内容は多くの反響を呼んだ。
- 多くの作品で主題歌・挿入歌の作詞を手がけている。特に『鋼鉄天使くるみ』主題歌「KissからはじまるMiracle」、同OVA版エンディングテーマ「すきすきすきすキスして!」、『りぜるまいん』主題歌「はじめて♡しましょ」、『激走戦隊カーレンジャー』挿入歌「暴走戦隊ゾクレンジャー」、同「夢見るらぶらぶラジエッタ」など、いわゆる電波ソングを作詞させると妙に上手い。一方で、前出の『特捜戦隊デカレンジャー』「ハードボイルド・ライセンス」のために書いた「私だけのぬくもり」は、『非情のライセンス』のエンディングテーマ『昭和ブルース』を髣髴とさせる出来になっている。
- 『カーレンジャー』第34話には、同時期に担当していたアニメ『水色時代』のパロディ『夢色時代』が、ゾンネットの愛読書として登場している。