自由研究
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自由研究(じゆうけんきゅう)とは、学習者が自由に多様な事項を研究することであり、主に次のような意味合いがある。
- 大正自由教育運動の中で新しく誕生した新教育の学校(例えば、成城学園、玉川学園など)で始められたこどもたちの関心と体験に重きをおいた学習活動の時間のこと。日本における自由研究の源流とされている。
- 日本において、1947年(昭和22年)から小学校に5年間ほど設けられた教科の1つ。昭和22年度における『学習指導要領 一般編(試案)』(文部省著作)に示された。自由研究の時間のおかれる理由としては、児童の個性から生じる探求活動について、「何かの時間をおいて、児童の活動をのばし、学習を深く進める」ことと説明されていた。 ⇒ 自由研究 (教科)
- 以上から派生して、詰め込み教育への反省として、こどもが問題意識を出発点にして、主体的な学習活動をする時間として、小学校・中学校・高等学校などのカリキュラムに取り込まれたもの。教科外活動として学校の設置者が設ける「ゆとりの時間」「学校裁量の時間」などを利用して実施され、各学校ごとに「自由学習」「自由活動」などさまざまな呼称が用いられてきた。2003年度施行の学習指導要領からは、このような教科外活動のスタンスに類似する総合的な学習の時間が規定され、すべての初等教育段階(小学校など)・中等教育段階(中学校、高等学校など)の学校でこのような活動が実施されている。
- 小学校・中学校・高等学校などの長期休業(夏休みなど)の期間中に児童・生徒に課される宿題のひとつ。多くのこどもたちにとって、休み期間中の悩みの種となる。以下、この項目で解説する。
長期休業(夏休みなど)に出される自由研究の課題に対して、こどもたちは、10日~40日ほどの期間を通して教員の指導や方法論を離れ、保護者の協力も得るなどして、思い思いの方法で研究を行うことができる。特に夏季休業(夏休み)は、日数も多いため、まとまった課題に取り組むことができる。
本来は、「自由」の名のとおり無理強いするものではないが、保護者や教員の強い意向でやむなくこなしたり、自身の成績のためにおこなう場合もある。
休み明けには絵や写真、文章でまとめられた研究のレポートを教員に提出し、優秀作品は学校や市町村単位での「作品展」などに出品されることが多い。時にこどもならではの実行力や視点に基づく研究もあり、大人の方が驚かされることもある。
目次 |
[編集] 手法と心得
自由研究のレポートは、およそ以下の組み立てに基づく。標本や工作などもレポートを別に作成しておくとよい。
- 自由研究のテーマ
- テーマ選定の理由(なぜこの研究をしようと思ったか)
- 研究の方法
- 結果の予想(まず自分なりに結果を予想することが大事)
- 結果
- まとめ(結果についての考察、予想と結果がちがう場合はなぜそうなったのか、など)
- 研究を終えての感想
- 参考文献、謝辞など(最後に感謝の気持ちを忘れずに)
自由研究のテーマや方法についての書籍はすでに数多く出版されている。2000年前後からはパーソナルコンピュータやデジタルカメラが一般家庭に普及したため、これらを駆使して整然とまとめられたレポートも多く提出されるようになった。その反面、レポートにインターネット経由で入手した画像や文章を流用するなどの不正も増えている。自由研究も時代背景が色濃く反映されるものといえる。
良い自由研究を作りあげるには、結局は子ども自身が研究対象へどれだけ愛着を注げるかにかかってくる。自由研究をする子どもも協力する大人も、「なにかを好きになる」という気持ちは大事にしなければならない。
[編集] 例
[編集] 研究
研究のテーマは身近なところにある。
- 公園にいるセミやアリ、チョウはどんな種類か、時間帯によってどんな活動をするか、どのように羽化するか。
- 校庭の植物の名前は何か、植物の生えている環境はどうか、花はどんな形をしているか。
- 海岸にある貝殻や岩石の名前は何か。流れ着いた網の浮きにハングルなどの文字が入っていないか。
- しらす干しや干しサクラエビには、小さなイカやハダカイワシなども混じっている(ただし最近はこれらを「異物」として取り除いてしまったものも多く、入手がやや困難)。
- 植物などの煮出し汁に布をつけてからミョウバンの水溶液につけると色染めができる。なかには想像もつかない色に染まるものもある。
たとえばセミの羽化の観察などはデジタルカメラで簡単に記録ができる。羽化の観察に数時間、まとめに数日あればよいのでセミが多い7月下旬ならば手軽な自由研究である。ただし数日あれば済むだけに、羽化の記録だけでは内容が軽い。成虫の生態なども調べておけば後々自他ともに役立つ研究となるだろう。
これらを本格的に調べるには複数の図鑑や専門家の協力が不可欠だが、正確さについては子どものできる範囲でもかまわない。まとめる際には絵や写真を多くし、自分がやったことを示すために保護者などに証拠写真(実験風景など)を撮影してもらうとよい。
[編集] 採集
昆虫類、植物、貝殻、岩石、化石などを採集し、標本をつくる。生物標本にはある程度の熟練が必要だが、標本にすることは命を奪うことなので、標本の扱いはおろそかにしてはならない。
- 昆虫標本は展翅板や虫ピン、標本にした後の消臭剤や防虫剤などがいる。
- 植物はできるだけ花や胞子のうがあるものを採取して標本にする。イネ科植物やシダ植物などは、葉だけでは専門家でも種類がわからないものもある。また、標本にすると色が黒くなる植物もあるので、生きていた時の写真があればよい。
- 貝殻、岩石、化石などの標本は堅いし腐る心配もないが、状態によっては専門家でも分類が難しい。
どの標本も、収納するための標本箱が必要である。標本には種名、科名、採集地、採集日時、採集者などを記入したラベルを必ずつけるようにする。博物館や動物園などは「分類会」「同定会」を開く所もあるので、標本の種名などがわからない場合はそこに持ちこんで専門家の鑑定をうけるとよい。
[編集] 工作
工作もテーマや必要性は身近なところにある。PETボトルなどをリサイクルしたり、日常生活のちょっとしたことで役に立つもの、伝統的で科学性の高いおもちゃなどを作るよい機会である。
[編集] 関連商品
実際には多くの子供、それに親が苦労しており、それを当て込んだ商売も数多い。たとえばちょっとした科学工作キットや、貯金箱制作セットといったものが夏休み後半になると文房具売り場などに登場する。また、学習雑誌などでも特集を組み、そのためそのようなところで取り上げられた題材はその年の展示会でいくつも眼にすることになる。昆虫採集が盛んであった頃には、出来合の昆虫標本セットまで存在した。北杜夫はどくとるマンボウ昆虫記の中で「台湾産の昆虫標本などが提出され、そのまま腐っている」ことを批判している。