チョウ
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チョウ | ||||||||
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ミヤマカラスアゲハ Papilio maackii |
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分類 | ||||||||
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上科 | ||||||||
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英名 | ||||||||
Butterfly |
チョウ(蝶)は、昆虫綱・チョウ目(鱗翅目、ガ目とも)に分類される21上科のうち、顕著な昼行性グループのアゲハチョウ上科、セセリチョウ上科、及び近縁のシャクガモドキ上科を併せた分類群の総称である。
その他のチョウ目の種はガ(蛾)と呼ばれるが、チョウとガに本質的な区別はない(チョウ目参照)。しかし、一般には完全に区別して扱われ、チョウは昆虫採集に於いてもっとも愛された昆虫である。
目次 |
[編集] 概要
南極大陸を除く全世界の森林・草原・高山など、ほぼ全ての陸上環境に分布する。広い分布域を持つものもいれば、その地域の環境に特異的に適応したものもいる。日本では250種類ほどが知られている。
おもな特徴としては以下のようなものがあるが、ガとの明確な区別点はなく、総合的なものとして判断する。強いて区別点を上げると、触覚の形状の相違点である。チョウの触覚は、先端がふくらんでいて、ガの触角はクシ状や糸状を呈している。日本に於ける約2700種の蝶や蛾は、これで区別できる。
- 卵 - 幼虫 - 蛹 - 成虫という完全変態をおこなう。幼虫は外見や行動によってアオムシ、イモムシ、ケムシなどと呼ばれる。
- 幼虫はほとんどが植物食で、種類によって食べる植物(食草)がほぼ決まっている。ただしシジミチョウ類には例外的なものが多い。
- 蛹は尾部だけでぶら下がる垂蛹(すいよう)と、胸に帯糸をつけて体を上向きにする帯蛹(たいよう)に大別できる。ただしセセリチョウやシジミチョウなどには例外もある。
- 成虫の4枚の翅は鱗粉や毛でおおわれる。ただしマダラチョウは部分的に鱗粉を欠く。
- 成虫の触角は細長くまっすぐ伸び、先端が棍棒状にふくらむ。セセリチョウの中には先端が再び細くとがり筆状となるものもいる。
- 成虫の口はストロー状に細長く伸びており口吻と呼ばれる。花の蜜や樹液、果汁など水分を吸う。
- 昼に行動する種類が多い。
一般に、チョウの翅(はね)は細い体に比べて著しく大きく、カラフルな色彩で人目に付きやすいため、身近な昆虫として古くから親しまれている。研究者もプロ・アマチュアを問わず数多く、大阪府立大学や京都大学など研究機関も各地にある。
[編集] 分類
多くの科に分けられ、その生活や外見はグループによって差異が大きい。
[編集] アゲハチョウ上科 Papilionoidea
- アゲハチョウ科 Papilionidae
- 大型のチョウで、成虫は種類によって翅の模様や突起が異なる。幼虫は刺激を与えると頭部と胸部の境界部から1対の色鮮やかな臭角(体液の圧力で反転突出し、異臭を放つ)を突き出す。
- ナミアゲハ、キアゲハ、カラスアゲハ、クロアゲハ、ジャコウアゲハ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ、ジャコウアゲハ、トリバネアゲハ類、ホソオチョウ、ギフチョウ、ウスバシロチョウなど
- シロチョウ科 Pieridae
- 中型のチョウ。成虫の羽は突起が少なく、白や黄色が多い。幼虫は緑色で細長く、俗にアオムシとよばれる。
- モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、キチョウ、モンキチョウ、クモマツマキチョウ、ツマベニチョウなど
- シジミチョウ科 Lycaenidae
- 小型のチョウ。成虫の翅の模様は、表と裏で非常に異なる。幼虫の食性は多様で、アリと共生するクロシジミ、アリの卵や幼虫を食べるゴマシジミ、アブラムシを食べるゴイシシジミなどもいる。
- ベニシジミ、ヤマトシジミ、ルリシジミ、ムラサキシジミ、ムラサキツバメ、ミドリシジミ、ウラナミシジミなど
- タテハチョウ科 Nymphalidae
- 中型から大型。成虫の翅は角ばっていて、黄・赤・青など多彩。また、成虫の前脚が退化して短くなっている。幼虫は突起や毛、角をもつ。
- キタテハ、アカタテハ、ルリタテハ、オオムラサキ、コムラサキ、ツマグロヒョウモン、ミスジチョウ、コノハチョウなど
なお、以下のチョウは長く「科」として扱われていたが、近年ではタテハチョウ科の亜科として扱う分類方法がある。
- テングチョウ亜科 Libytheinae
- 中型のチョウで、日本にはテングチョウ1種のみが分布している。食草はエノキ。和名は成虫の頭の先端が、天狗の鼻のように突き出ていることに由来する。
- マダラチョウ亜科 Danainae
- 中型から大型。成虫の翅は体に対して大きく、丸みがある。翅は部分的に鱗粉を欠く。飛ぶ力が高く、遠距離を移動する種類もいる。
- オオゴマダラ、アサギマダラ、カバマダラ、オオカバマダラなど
- ジャノメチョウ亜科 Satyrinae
- 小型から中型。成虫の翅は目玉模様があり、黄や褐色のものが多い。また、森林などの日陰で活動するものが多い。幼虫は細長い形をしていて、おもにイネ科植物を食草とする。
- ヒメウラナミジャノメ、キマダラヒカゲ、タカネヒカゲなど
- モルフォチョウ亜科 Morphinae
- 大型のチョウで、中央アメリカから南アメリカに分布する。翅は鱗粉の構造色で金属光沢を放つ。
[編集] セセリチョウ上科 Hesperioidea
[編集] シャクガモドキ上科 Hedyloidea
- シャクガモドキ科 Hedylidae
- すべて中南米産で、日本産のチョウは含まれていない。
キアゲハ Papilio machaon(アゲハチョウ科) |
ウラナミシジミ Lampides boeticus(シジミチョウ科) |
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ツマグロヒョウモン(オス) Argyreus hyperbius(タテハチョウ科) |
オオゴマダラ Idea leuconoe(タテハチョウ科マダラチョウ亜科) |
[編集] 昆虫採集との関わり
チョウは昆虫採集、及びそのコレクションとしてもっとも愛されて来た昆虫である。そのためチョウに関しては世界中どの地域においても詳しい情報があると言っても過言ではない。
それ以外にも、隣粉転写という方法でチョウの翅の模様を写し取り、これを工芸作品として販売する例も知られている。現在も熱帯地方ではチョウの標本やそれに基づく工芸品は重要な土産物である。
しかし、これらの採集圧によって絶滅の危機に瀕した種もあり、トリバネチョウ等はワシントン条約によって販売が制限されている。
[編集] その他
- 「蝶の数え方は一頭、二頭」
- 由来については諸説あるが、英語圏の動物園では飼育している動物全体の個体数を種類に関係なく"Head”で数えることがあり(日本語の「あたまかずを数える」と同じ発想)、これを日本語に直訳したものが定着したとする説が有力とされている。慣用的な数え方であり通常は小動物を数える「匹」を用いるのが一般的になっている。これに対して、ガを頭で数えることはない。
[編集] 蝶をモチーフにしたキャラクター
- 『エスプガルーダ』シリーズの登場人物(キャラクター名の由来が蝶の名前)
- 『超星神グランセイザー』のセイザーヴェルソー
- 『ビーファイターカブト』のビーファイターアゲハ
- 『美少女戦士セーラームーン セーラースターズ』のセーラー・ヘヴィメタル・パピヨン(原作のみ登場)
- 『武装錬金』のパピヨン(蝶野攻爵)
- 『ポケットモンスター』シリーズのバタフリー
- 『ポケットモンスター ルビー・サファイア』のアゲハント
- 『魔法戦隊マジレンジャー』のマジピンク
- 『ウルトラQ』のモルフォ蝶
- 『イナズマン』のイナズマン
- 『ウルトラマンA』のバラバ(アゲハ蝶の幼虫がモチーフ)