神居古潭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
神居古潭(かむいこたん)は北海道旭川市にある地区の名称であり、また同地区を流れる石狩川の急流を望む景勝地の名称。地名はアイヌ語のカムイコタン(神の住む場所)の音訳である。
[編集] 概要
石狩川が上川盆地を抜け、石狩平野へと流れていく途中の渓谷にあり、川の流れは細くかつ急になっている。川の最深部は水深70mにも達すると言われている。水上交通に依存していたアイヌにとっては最大の難所であり、しばしば犠牲者が出たこと、あるいは無事な通過を神に祈ることから、カムイコタンという地名になったとする説がある。
地区内には竪穴式住居跡、ストーンサークルなど、縄文時代にさかのぼる遺跡群が点在し、古くから集落が存在していたことが示されている。
明治期から1960年代までは函館本線が北岸を走り、神居古潭駅も設置されていたが、線形改良とともに廃止された。現在は旧線跡がサイクリングロードとなり、駅舎も復元されて休憩所として利用されている。また旧国道12号が南岸を通っていたが、現在はトンネルを通るルートに切り替えられている。
当地は地学・地質学の分野でも注目されている。川岸には小石が川床を侵食して形成された甌穴(おうけつ)群が見られる。北海道を南北に分断する特徴的な構造帯は当地を縦断し、神居古潭構造帯(神居古潭変成岩帯)の名で知られる。
紅葉の名所でもあり、毎年秋分の日には「こたんまつり」が開催される。
[編集] カムイコタンの伝承
上記のように石狩川が急峻な流れを持つことから、以下のような伝承(ユーカラ)が生まれたといわれ、現代に伝えられている。
かつてこの地にはニッネカムイ(またはニチエネカムイ)が住んでいた。ニッネ(悪い)+カムイで、悪神・魔神と訳される。ニッネカムイはこの地に大きな岩を投げ込み、往来するアイヌを溺れさせようとした。
ヌプリカムイ(山の神)が見とがめて岩をどかすが、ニッネカムイは怒ってヌプリカムイと争った。英雄サマイクルがヌプリカムイに加勢したため、ニッネカムイは逃げようとしたところ川岸の泥に足を深く沈めてしまい、動きが止まったところでサマイクルに切り殺された。
川岸に残る大きな甌穴は、そのときにニッネカムイが足を取られた跡であるという。また周辺にはニッネカムイの首やサマイクルの砦とされる奇岩が見られる。