機甲猟兵メロウリンク
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機甲猟兵メロウリンク | |
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ジャンル | ロボットアニメ |
OVA | |
監督 | 神田武幸 |
アニメーション制作 | サンライズ |
製作 | バップ サンライズ |
リリース日 | 各話リスト参照 |
話数 | 全12話 |
『機甲猟兵メロウリンク』(きこうりょうへいメロウリンク)は、1988年から1989年にかけてバップから発売されたオリジナルビデオアニメーション(OVA)。全12話。
テレビアニメ『装甲騎兵ボトムズ』の外伝に当たる作品であり、世界観を共有している。
目次 |
[編集] 作品解説
『機甲猟兵メロウリンク』は、ロボットアニメでありながら主人公がロボットに乗らない異色の作品である。これはベースとなった『装甲騎兵ボトムズ』の作品世界に登場するロボットアーマードトルーパー(以下ATと略する)の全高が4メートル前後と非常にコンパクトであり、人間が1対1での接近戦を行うことが可能であることから。
主人公メロウリンクは、AT対人間という圧倒的なハンディキャップを、ある時は地の利を活かし、またある時は周到に罠を仕掛けることによって、この戦力差を埋め勝利を得る。
全12話のストーリーのうち、前半6話は1話完結、後半6話は連続物として展開する。
[編集] あらすじ
軍上層部の陰謀に巻き込まれた少年兵士メロウリンクは、戦友たちを死に追いやり、自らをも陥れた士官たちへの復讐の旅に出る。その後に待ち受ける過酷な運命も知らず……。
[編集] 登場人物
- メロウリンク・アリティー(声:松本保典)
- 17歳。愛称は「メロウ」。元シュエップス小隊所属の伍長で、ただ1人の生存者。小隊の最期を軍の記録に残すという一念で帰還を果たすも、略式軍事法廷でプランバンドール・スキャンダルに関わる無実の罪を着せられたことに怒り、脱走。以後偽証した士官たちを対ATライフルで次々と殺害していく。
- 復讐のターゲットに対しては、脱走時に奪った仲間の認識票を事前に何らかの方法で提示し、相手に「復讐の対象である」ことを知らしめる。また、とどめを刺す際にはしばしば己の血(もしくはそれに類するもの)でフェイスペイントを施す。
- ルルシー・ラモン(声:玉川紗己子)
- 年齢不詳(企画書によれば18~20歳)。流れ者のカードディーラー(第6話では手品も披露している)。本名はフルレル・C・ヘルメシオンで、ヘルメシオン准将(後述)は叔父に当たる。
- キーク・キャラダイン(声:大塚明夫)
- 25歳。メルキア軍の情報将校で階級は中尉。ギルガメス軍上層部のバッテンタイン中将(『ボトムズ』の登場人物)からの特命を帯びており、プランバンドール・スキャンダルを追っている。メロウリンクに協力する素振りを見せているが本当の使命は…。
[編集] メロウリンクが仇として追う人物たち
- ドックマン(声:永井一郎)
- 第1話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属大尉で、惑星ミヨイテの辺境にあるザキ基地の司令官。最前線の基地を任されている割に昼間からカードゲームに興ずる。部下からの人望は薄く、メロウリンクの挑発に乗せられた結果、自らスコープドッグ(7連装ミサイルポッドと2連装ミサイルランチャーを装備)で出撃する羽目に陥る。
- ギャルビン・フォックス(声:納谷六朗)
- 第2話と第5話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属中尉で、港町タ・ビングでバトリング(AT同士の格闘戦)のスター選手「メルキアの銀狐」としてその名を馳せている。そのリングネームの通り「一点の曇りもなく」銀色に磨き抜かれたスコープドッグを愛機とし、その両腕にはアームシールドと呼ばれる追加装甲を装着している。試合に勝利した際には対戦相手をコクピットから引きずり出し、ATの腕で握りつぶすパフォーマンスを行う。
- スヌーク(声:加藤精三)
- 第3話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属少佐で、クメン地方(『ボトムズ』第2クールの舞台)でスタブロスという偽名を使い、一大荘園主として君臨する。ゴメス(声:飯塚昭三)ら、かつての部下を従えてのATによるゲリラ狩りを趣味とする。踵の部分に大型のグライディングホイールを装備したスタンディングトータスに搭乗する。
- ゴルフィ(声:若本規夫)
- 第4話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属軍曹で、ゲリラ戦の教官でもあった。メロウリンクの復讐を知り、逆に先手を取って罠を仕掛ける。本編ではATに搭乗しない。
- バンス(声:仲木隆司)
- 第6話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属少佐で、ドッパー軍刑務所所長。その反面で囚人の脱獄を楽しみにしており、逃げる囚人を自らライフルで狙撃するといったサディストの一面がある。所内で囚人による暴動が発生した場合には暴徒鎮圧用のATであるライアットドッグで出動する。
- ガナード(声:岸野一彦)
- 第7話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属少尉で、バンディットと呼ばれる山賊のリーダー。機体の各所にロールバーを装着した赤いスコープドッグを愛機としている。死の間際に、自分たちの背後に黒幕が存在することをメロウリンクに示唆する。
- ガルボネール・J・ボイル(声:兼本新吾)
- 第8話~第11話に登場。元プランバンドール機甲大隊所属少佐で、現在は第2師団特殊機甲部隊隊長。武人としての誇りを持ち、ヘルメシオンの策略に荷担したことを後悔している節がある。スコープドッグの山岳戦用バリエーションであるバウンティドッグ(指揮官仕様)に搭乗する。戦後もヘルメシオンの指揮下にあり、ルルシーとは面識がある。
- ヌメリコフ(声:三田松五郎)
- 第5話と第9話に登場。階級は大尉で、メロウリンクの復讐のきっかけとなった軍事法廷では検事を務めた。ヘルメシオンの陰謀面のサポート役。性格は陰湿で、ルルシーの父を殺害した張本人。戦闘においてはチェーンガンを装備したライト・スコープドッグ(スコープドッグの一部装甲をはずして軽量化したもの)に搭乗する。
- オスカー・フォン・ヘルメシオン(声:阪脩)
- 第7話~第11話に登場。階級は准将。プランバンドール・スキャンダルの黒幕。プランバンドール機甲大隊の作戦参謀であったが、事実上大隊そのものを私兵化していた。
[編集] シュエップス小隊隊員
ギルガメス連合軍第18メルキア方面軍プランバンドール機甲大隊第8中隊に属する小隊で、隊長はシュエップス少尉。元は装甲騎兵小隊(ATによって構成される部隊)であったが、百年戦争末期の第2次ミヨイテ戦役において、シュエップスが上層部の作戦に抗議したため、懲罰として機甲猟兵小隊として再編され、敵AT部隊と交戦した結果、メロウリンクを除く隊員全員が戦死した。その後、プランバンドール・スキャンダルに関わった犯罪者達として無実の罪を着せられる。
- シュエップス・F・ブライアン(声:森功至)
- 23歳。階級は少尉。軍上層部の無謀な作戦案に直接抗議するが、逆に抗命罪に問われ自らの小隊は懲罰を受けることとなる。バララントの機械化部隊の攻撃から辛うじて生き延びるが、偵察にやってきた兵士からメロウリンクをかばって銃撃を受け、死亡する。
- スタルコス(声:田中信夫)
- 32歳。階級は軍曹。葉巻を愛用するベテラン兵。塹壕への至近弾からメロウリンクをかばって戦死。その際にも口には葉巻がくわえられていた。田中の配役は『コンバット!』のサンダース軍曹を意識したもの。
- コビニーチン(声:柴本広之)
- 16歳。階級は上級兵。小隊の最年少。敵AT部隊の接近に恐慌状態に陥って塹壕を飛び出してしまい、小隊最初の戦死者となる。
- カットレー(声:目黒裕一)
- 24歳。階級は曹長。自分たちが友軍撤退のための「生贄」であることを、シュエップスが抗議に行った時点で見抜いていた。
- スカルペス(声:中多和宏)
- 28歳。階級は准尉。小隊のナンバー2で、まとめ役でもある。本編中でメロウリンクは「スカルベス」と呼んでいるが、ここではエンディングの表記に準じた。
- セプレス(声:関俊彦)
- 17歳。階級は一級兵。塹壕から飛び出そうとするコビニーチンを止めようとする。
- ブリエル
- 23歳。階級は上級兵。大柄だが童顔の兵士。
- ヤペスティン
- 19歳。階級は伍長。年少の黒人兵士。
[編集] 用語
『ボトムズ』本編と共通するものに関しては「装甲騎兵ボトムズ」を参照。
- 機甲猟兵
- 生身でATと戦うことを強いられた兵士たちのことで、「猟兵」とも略される。ATを失った者や何らかの理由で懲罰を受けた者などがこの待遇に堕とされる。生き残る為にありとあらゆる手段を使い、時には友軍の兵士の死体をトラップに使うことすらあることから、その存在は「最低の存在」を意味するボトムズ野郎(ATパイロットの俗称)の生き血をも吸う『戦場の蛭』(リーチャーズ・アーミー)と蔑まれた。本作の英文タイトル『LEECHERS ARMY MEROWLINK』はこれに由来する。
- 機甲猟兵の概念自体は『ボトムズ』本編にはなく、1985年11月20日にみのり書房から発売された『ボトムズ』のムック「VOTOMS ODYSSEY」が初出(このときの呼称は『戦車猟兵』)。この戦車猟兵を主人公とした、ちだま・ひらかずの同人誌『PANZER JÄGER』(1987年12月発行)が『メロウリンク』の原型となったと言われる。
- 戦車猟兵は小説『青の騎士ベルゼルガ物語』の第3巻『青の騎士ベルゼルガ物語『K'』』にも登場する。元メルキア軍のAT乗りで対要塞戦等のスペシャリストだった筈のクローマ・ツェンダーは、成り行きから再戦に伴って徴兵を行う軍に反抗するグループに属することとなるが、戦闘の際には何故かATに乗ることを拒む。そしてクローマは対戦車ライフルやグレネードランチャー、投擲地雷、手製のパンツァーファウスト、アーマーマグナム等で武装し、防弾マントに身を包んで生身で軍警のドッグ系ATはおろか軍の次世代ATフィア・ダンベルとさえも互角にやり合うという活躍を見せる。ここでも猟兵は「AT乗りから格下げされたが故に、猟兵だった事は本人にとってトラウマでさえある」「戦場で軽んじられ疎まれる存在である」事が語られている。
- 対ATライフル
- 機甲猟兵の標準的な武装と言える武器。メロウリンクが使用するものは全長2,050mm、重量30.3kg、型式番号はHS-SAT。銃身の下部にパイルバンカーと呼ばれる特殊合金製の槍を射出するユニットが装着できるため、「パイルバンカーカスタム」の名称で知られる。照準器が捉えた情報はゴーグル(ATのパイロットが使用するものと同様)を通して射手の網膜に投影される。
- 使用する弾丸は口径17mm、全長160mmの徹甲弾で、装弾数は3発(マガジンは使用せず、弾丸を直接銃に込める)。有効射程距離は60mで、25mmの普通鋼を貫通できる。
- パイルバンカーは全長454mmで、液体火薬の爆発力で射出されるため、ATの複合装甲をいとも簡単に貫く。射出時の反動は、無反動砲式に後部から噴出する発射ガスで相殺される(しかしリアルに考証した場合、後部ノズルが一方向に斜めに向いているので反動は相殺できず、また装甲を貫通する時の衝撃は射手が受け止めることとなり、物理的に問題がある。あくまで、アニメとしてのハッタリ、ケレン味を優先した兵器といえる)。液体火薬のカートリッジにはATのアームパンチ(肘から先をスライドさせて攻撃する接近戦用の機能)用のものを使用するが、装弾数は1発のみ。ユニット単体での使用も可能。
- デザインを担当した大河原邦男によると、当初パイルバンカーは設定にはなかったが、「いくらなんでも銃だけでATを倒すのには無理があるのではないか」との声が上がり、見せ方として派手な倒し方を模索した結果採用されたとのこと。
- プランバンドール・スキャンダル
- ギルガメスとバララントの両国家によって展開された百年戦争(第3次銀河大戦)の末期、惑星ミヨイテにおいてプランバンドール機甲大隊に所属する一機甲猟兵小隊が敵前逃亡し、重要軍事物資であるヂヂリウム(ジジリウムとの表記もある)が強奪された。しかし、強奪されたヂヂリウムの行方は杳として知れず、これらの事件に大隊の一部将校が関与しているとの疑惑が持たれた。
[編集] メインスタッフ
- 企画:伊藤梅男(バップ)、渋江靖夫(サンライズ)
- 原案:江田文行
- 原作・シリーズ構成:高橋良輔
- 監督:神田武幸
- キャラクターデザイン・作画監督:谷口守泰
- メカニックデザイン:大河原邦男
- 音楽:乾裕樹
- 音響監督:浦上靖夫
- 美術:平川英治
- プロデューサー:平山博志(バップ)、指田英司(サンライズ)
- 製作:バップ、サンライズ
[編集] 主題歌
- オープニングテーマ「ソルジャー・ブルー 」
- エンディングテーマ「VANITY」
- 歌:マーキーズ、作詞:売野雅勇、作曲:今村勝己、編曲:小島良喜
[編集] 各話リスト
発売日 | 話数 | サブタイトル | 脚本 | ストーリーボード | 演出 | 作監補 | メカ作監 |
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1988/11/21 | 1 | stage01 ウイルダネス |
五武冬史 | 滝沢敏文 | 今西隆志 | - | 吉田徹 |
2 | stage02 コロシアム |
山口宏 | 横山裕一朗 | 渡辺信一郎 | - | スタジオダブ | |
1988/12/21 | 3 | stage03 ジャングル |
平野靖士 | 今西隆志 | - | 吉田徹 | |
4 | stage04 リーニングタワー |
山口宏 | 高松信司 | - | スタジオダブ | ||
1989/1/21 | 5 | stage05 バトルフィールド |
高橋良輔 | 横山裕一朗 | 渡辺信一郎 | - | 吉田徹 |
6 | stage06 プリズン |
外池省二 | 今西隆志 | - | スタジオダブ | ||
1989/2/21 | 7 | stage07 レイルウェイ |
山口宏 | 高松信司 | 八幡正 | ||
8 | stage08 ゴーストタウン |
五武冬史 | 横山裕一朗 | 渡辺信一郎 | - | 吉田徹 | |
1989/3/21 | 9 | stage09 フォレスト |
五武冬史 | 今西隆志 | 山田きさらか | ||
10 | stage10 キャッスル |
山口宏 | 高松信司 | - | |||
1989/4/28 | 11 | stage11 ベース |
高橋良輔 | 横山裕一朗 | 渡辺信一郎 | - | |
12 | ラストステージ | 山口宏 | 今西隆志 | - |
[編集] セット商品
- 機甲猟兵メロウリンク コンプリート・ステージ・ファイル 1995年3月20日発売
- 全12話をLDに収録し、サントラ未収録分を含めたBGM集を収録したCD2枚組をセットにしたもの。
- 機甲猟兵メロウリンク ステージ・コンプリーツ 2006年12月6日発売
- 3枚組DVD。ミクロマン2006 メロウリンク・アリティと、同サイズの対ATライフルを同梱。
[編集] 関連作品
[編集] 小説
- 『機甲猟兵メロウリンク(1)』 1989年3月31日発売 朝日ソノラマ
- 著:高橋良輔/イラスト:谷口守泰
- 本編の第1話から第5話までをノベライズしたもの。アニメ版とはエピソードの順序が若干入れ替わり、『バトルフィールド』は『ウイルダネス』と『コロシアム』の間に挿入されている。『ジャングル』のエピソードには、アニメ版では登場しなかった『ボトムズ』のキャラクターも登場する。
- 第1巻として発売されたが、続刊はなし。
[編集] コミックス
- 『装甲騎兵ボトムズ外伝 無防備都市』 1993年2月20日発売 バンダイ
- ストーリー原案:山口宏/作画:柴田文明
- キークを主人公とした番外編で、本編の前日談に当たる。キークがバッテンタインからプランバンドール・スキャンダルについて聞かされるシーンがあるが、本編との直接の関係はない。
- ドッパー軍刑務所を脱走した“パルミスの黒い狼”の異名を持つATパイロット・ベラック大尉が、捜査を担当したキークを狙う。
- 作画を担当した柴田のあとがきによれば、山口からのストーリーは完全なシナリオ形式で提供されたとのこと。このシナリオは「機甲猟兵メロウリンク ステージ・コンプリーツ」に同梱された。
[編集] その他
- 青い髪の男
- 第6話の冒頭で、ドッパー軍刑務所に向かう輸送機の機内に『ボトムズ』の主人公であるキリコ・キュービィに似たキャラクターがいるが、これはアニメ誌の企画用に描かれた一種のお遊びであり、キリコ本人ではない(その後のシーンにこのキャラクターは一切登場しない)。
- ルルシーの性格描写
- 第1話と第2話以降ではキャラクターとしての描かれ方が異なっている。これはシリーズ構成を担当した高橋良輔と神田武幸監督との間でルルシーというキャラクターの捉え方が異なったためである。第1話でのルルシーはかなり「大人の女」として描かれているが、第2話以降では年相応の描かれ方をしている。前者は高橋の解釈によるもので、後者が神田監督の解釈による。
- 当のルルシーを演じた玉川紗己子は、当初「謎の人です」としか説明をされなかったという。
- ノズルが火を噴くタイミング
- パイルバンカーが打ち込まれる際には、発射装薬の後方爆風がノズルから勢いよく噴き出す。原理的には槍が伸びるのと同時に噴き出すのが正しいはずだが、第1話と第3話では槍が伸びた後に火を噴いている。
- ワインの銘柄
- 第3話と第10話にはサッシーダという銘柄のワインが登場する。この名前はサンライズの指田プロデューサーの名前にちなんだもの。こうしたスタッフ等の名前にちなんだネーミングは『ボトムズ』にもいくつか見られる。
[編集] 関連項目
カテゴリ: アニメに関するスタブ | アニメ作品 き | 装甲騎兵ボトムズ | OVA