村下孝蔵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
村下 孝蔵 (むらした こうぞう、1953年2月28日 - 1999年6月24日)は、淡い恋の歌を得意とした哀愁のシンガーソングライター。
目次 |
[編集] 経歴
熊本県水俣市生まれ。生家が映画館を経営していたため、映画や外国のポピュラー音楽に親しむ。鎮西高等学校時代には水泳部で平泳ぎの選手として活躍。さらにベンチャーズや加山雄三のギターテクニックに憧れ、自作のギターを制作するなどしながら、音楽にも傾倒して行く。
高校卒業後、就職した広島ヤマハでピアノ調律師の傍ら音楽活動を開始し、自主製作アルバムを発表する。この頃、広島の音楽好きには知られた存在で、地元の中国放送でラジオ番組なども担当していた。
1979年、ソニーレコード(当時、CBSソニー)が主催した、第1回SDオーディションに合格。同期合格者にはHOUND DOG、堀江淳、五十嵐浩晃がいた。
1980年シングル「月あかり」でデビューするが、ニューミュージック全盛期の当時、叙情的なフォークソングはいまいち受け入れられず、全国各地でのライブを通じた地道な活動が続く。
その後、地道なライブ活動でコアなファンを獲得した事が実り、1981年「春雨」、1982年に「ゆうこ」が話題となる。1983年に発売したヒット曲「初恋」は、当時アイドルであった三田寛子(現在は歌舞伎役者、中村橋之助の夫人)や、プロ野球選手の田尾安志などがカバーして話題となった。続いて発売した「踊り子」、「少女」、「夢のつづき」も好評であった。
これらのヒットにより、英語を使わずに日本語を用いた丁寧な情景描写による歌詞と、旧来の歌謡曲と洋楽や日本のグループサウンズのメロディーを融合させた様な、繊細かつ親しみやすい曲調を奏でる、稀有なシンガーソングライターとして認知される。
「初恋」ヒット時、テレビ番組への出演は所属レコード会社の意向で一切なくて控えられていたが、本人は至って前向きな姿勢で後年機会があれば出るようになった。とくに、1990年代半ば、憧れだった加山雄三とテレビ番組で共演してからはかなり積極的になり、さらに村下のファンであった山田邦子と意気投合し、彼女の出演している番組に度々呼ばれるようになった。
1999年6月20日、コンサートのリハーサル中に脳内出血で倒れ、4日後の24日に逝去。46歳だった。現在、遺骨は茨城県つくば市の筑波茎崎霊園に埋葬されている。 ただ彼の墓に関する話はファンの間ではタブーに属している。
曲風と本人の人柄のためか生前はやや地味な存在であった。しかし、作詞作曲能力・歌唱力・ギターテクニックはいずれも非凡であり、歌手の中でもずば抜けていた。コンサートでは「ひとりベンチャーズ」なるギターソロを披露したこともある。あまりにも早い死と、それによって失われた才能を惜しむ声は今でも多い。
[編集] 歌
[編集] 歌詞
[編集] メロディー
[編集] ギター
ヤマハ CWEカスタム ヤマハ LL55カスタム (いずれもテリー中本氏作) オペーション アダマス
[編集] ディスコグラフィー
[編集] シングル
1980年 月あかり(B面:松山行きフェリー)
1981年 春雨(B面:歌人)
1981年 帰郷(B面:未成年)
1982年 ゆうこ(B面:陽炎)
1983年 初恋(B面:丘の上から)
1983年 踊り子(B面:冬物語)
1984年 少女(B面:花れん)
1984年 夢のつづき(B面:似顔絵)
1986年 かざぐるま(B面:幸せの時間)
1986年 ねがい(B面:とまりぎ) ※明星「チャルメラ」CMソング
1987年 陽だまり(B面:白い花の咲く頃)※フジテレビ系アニメめぞん一刻主題歌
1987年 哀愁物語-哀愁にさようなら-/美し過ぎるミステイク ※両A面,中林由香とのデュエット
1988年 風のたより(B面:ネコ) ※「赤い羽根共同募金」イメージソング
1988年 初恋ミニアルバム(初恋・踊り子・ゆうこ・少女・春雨)
1989年 初恋/少女
1989年 ゆうこ・踊り子
1990年 ソネット(C/W 禁じられた遊び)
1991年 アキナ(C/W タカハシ)
1991年 この国に生まれてよかった ※ハウス食品、「特選生わさび」CMソング(C/W帰宅)
1992年 一粒の砂 ※広島アジア競技大会協賛・中国新聞社・中国放送共同企画「アジア・ピースロード」テーマ曲(C/Wひとりごと)
1992年 ロマンスカー(C/Wピンボール)
1993年 初恋・ゆうこ・アキナ
1994年 つれてって(C/Wりんごでもいっしょに)
1995年 初恋/踊り子
1996年 16才(C/Wあなた踊りませんか)
1998年 同窓会(C/W素直)
[編集] アルバム
『それぞれの風』(1979年)※自主製作盤
『汽笛が聞こえる街』(1980年)……「月あかり」を含むデビューアルバム。
『何処へ』(1981年)
『夢の跡』(1982年)
『初恋~浅き夢みし~』(1983年)……ヒット曲「初恋」「踊り子」を含む。
『歌人~ソングコレクション~』(1984年)……最初のベストアルバム。
『花ざかり』(1984年)
『かざぐるま』(1986年)
『陽だまり』(1987年)
『歌人II』(1987年)
『恋文』(1988年)
『野菊よ 僕は…』(1989年)
『清涼愛聴盤』(1990年)
『新日本紀行』(1991年) ※一度絶版後、2003年より再版。
『名もない星』(1992年) ※絶版
『愛されるために』(1994年)
『林檎と檸檬』(1995年)……ベストアルバム。
『同窓會』(1999年)
『しのびあるきのたそがれに』(1999年)……追悼アルバム。
『ラムネとビーチサンダル』(2000年)
『夢の記録』(2000年)……三枚組。弾き語り音源を含む。
『純情可憐』(2001年) ……アマチュア時代の貴重な音源を含む。
『七夕夜想曲』(2005年)……七回忌記念。シングルベスト。
『月待哀愁歌』(2005年)……ライブ音源集。DVD付
『清聴感謝祭』(2006年)……全編未商品化ライブ音源集。
『昭和春夏秋冬~村下孝蔵作品集~』(2006年)……他人に提供した曲をまとめたアルバム。
『絵日記と紙芝居~村下孝蔵トリビュートアルバム~』(2006年)
[編集] DVD/VHS
『純情』(2001年)
[編集] 詩集
『初恋~浅き夢みし~』
[編集] 他人に提供した主な提供曲
- 香西かおり 「あなたへ」※遺作
- 柳葉敏郎 「あなた踊りませんか?」
- 高田みづえ 「かげふみ」「似顔絵」
- 藤崎詩織(ゲームキャラクター、声は金月真美)「リンゴの木の下で」
- おかあさんといっしょ 「こどもがいっぱいわらってる」(歌のおねえさん・歌のお兄さんに提供)
[編集] メモリアル・コンサートの演目
2004年9月18日/19日(ソミドホール)
1 ロマンスカー
2 北斗七星
3 教訓
4 ひとり暮らし
5 とまりぎ
6 夢の跡
7 月あかり
8 春雨
9 踊り子
10 松山行きフェリー
11 同窓会
12 この国に生まれてよかった
EN1 初恋
EN2 青春の日々に
[編集] エピソード
- 初恋がヒットしたとき、広島市の中心部・並木通りに『小さな屋根の下』という喫茶店を開いていた。そのお店は今はないが、1984年のアルバム「花ざかり」に収録されている「北斗七星」に歌われた『赤い屋根』は、生前村下がよく通った喫茶店の名で、現在も広島市北部の毘沙門台にある。
[編集] 関連する人物・項目
- 加山雄三
- 沢田聖子 - 親交が深く、村下を悼んだ「親愛なる者へ」を歌う。
- 田尾安志 - 熱心なファンである事を公言。初恋をカバーした。
- 山田邦子 - 村下のファンで度々共演。
- 天満敦子 - バイオリニスト。晩年はコンサートで共演している。
- 香西かおり - 村下が残した遺作「あなたへ」を歌う。
- 中森明菜 - 「少女」は明菜をイメージ。「アキナ」は明菜の応援歌。「踊り子」をカバー。
- さだまさし - 村下はさだが主催する「夏・長崎から」の第1回ゲスト。村下が亡くなったとき、さだは彼を「戦友」と評し、その年の「夏・長崎から」で「初恋」を歌った。
- 町支寛二-数多くの作品のコーラスを手がける。
- ソニー・ミュージックアーティスツ
- 熊本県出身の有名人一覧
- シンガーソングライター