春日野八千代
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春日野八千代(かすがの やちよ、1915年11月12日 - )は兵庫県神戸市出身の宝塚歌劇団専科に所属する二枚目男役で同歌劇団名誉理事である。本名:石井吉子(いしい よしこ)。愛称ヨッちゃん。
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[編集] 略歴
1928年宝塚音楽学校に入学、翌1929年「春のをどり」で初舞台。
芸名の「春日野」は琵琶歌の歌詞の一節から、「八千代」は「君が代」からとり命名。同期には葦原邦子、冨士野高嶺(花柳禄春)ら、一期下には神代錦・園井恵子らがいる。入団当初娘役だったが身長(公称161センチは当時の日本人女性としては長身である)の問題などがあり早くに男役に転向した。
戦前、戦中、戦後にかけて素晴らしい作品を残し、端正な美貌から「白薔薇のプリンス」「永遠の二枚目」の異名を取るなど、人気男役スターとして一世を風靡する。
スター像としては女性的な柔らかで品格のある顔立ちに、毅然・凛とした立ち姿、そして優男から男臭い熱血漢まで表現しかつハズレがない卓抜した演技力に定評がある。演技以外では日舞(名取名:花柳禄八千代)、ダンスに秀でた男役でもある。
月組、ダンス専科、月組を経て、1933年星組創設時の初代二枚目男役。雪組、花組(※歌劇団史でも珍しい全組<4組体制時代>在籍経験者となる)、雪組を経て、1940年雪組副組長、1945年雪組組長、1949年歌劇団理事に就任し、天津乙女と共に「宝塚の至宝」と呼ばれる。1950年より演劇専科に所属。 相手役としては、月丘夢路(映画監督井上梅次夫人・料理研究家井上絵美実母)、糸井しだれ(1945年津市大空襲の犠牲となる)、有馬稲子、八千草薫、新珠三千代、浜木綿子(俳優香川照之実母)、加茂さくら等が挙げられるが、特に、乙羽信子とのコンビはゴールデンコンビと呼ばれる。
また、男役としても活躍した、故里明美、寿美花代、淀かほる、那智わたる等も女役として相手役を務めている。
主演作品は多数あるが、1951年初演の「虞美人」の項羽と1952年初演の「源氏物語」の光源氏が最大の当たり役として挙げられる。
1956年の「ローサ・フラメンカ」を初めとして演出も手がける。
1939年アメリカ公演、1966年第4回ハワイ公演に参加するとともに、1961年にはヨーロッパ演劇視察のため渡欧している。
外部出演も多く、長谷川一夫、二代目尾上松緑、山田五十鈴らと共演している。また、「花柳舞踊研究会」、「三世花柳寿輔襲名披露」、「名古屋おどり」など日本舞踊の舞台にも出演している。
1964年兵庫県文化賞受賞、1979年紫綬褒章受章、1984年宝塚市文化功労賞受賞、1986年勲四等宝冠章受勲、1999年宝塚市名誉市民、2006年兵庫県高齢者特別賞受賞。
現在は、祝典公演への特別出演と「宝塚舞踊会」を活動の中心としており、近年の宝塚舞踊会では、花柳芳次郎振付による新作舞踊が披露されることが多い。ここ数年は体調を崩して舞台からは遠ざかっていたが、2006年10月20日に宝塚大劇場で行なわれた「第47回宝塚舞踊会」で約2年5ヶ月振りに舞台復帰した。
著書に「白き薔薇の抄」(宝塚歌劇団)、「悔いなき一本の道」(神戸新聞社、「わが心の自叙伝 映画・演劇編」所収)がある。
[編集] 主な舞台作品
[編集] 星組時代
- 『お國歌舞伎』(1933年)
- 『花詩集』(1933年)
- 『ロミオとジュリエット』(1933年)
[編集] 花組時代
- 『三つのワルツ』(1938年・合同)
[編集] 雪組時代
- 『豊穣歌』(1941年)
- 『たけくらべ』(1943年)
- 『勧進帳/翼の決戦』(1944年・宝塚大劇場閉鎖)
- 『カルメン/春のをどり(愛の夢)』(1946年・宝塚大劇場再開)
- 『涼風/人魚姫』(1946年)
- 『マヅルカ/蝶々さん』(1946年)
- 『おもかげ/ファイン・ロマンス』(1947年)
- 『南の哀愁/世界の花』(1947年)
- 『山三と阿國/眞夏の夜の夢』(1947年)
- 『船辨慶/リラの花咲く頃』(1947年)
- 『早春譜/ヴェネチア物語』(1948年)
- 『アルルの女/銀之丞一番手柄』(1948年)
- 『彌次喜多道中記/二つの顔』(1948年)
- 『夜鶴双紙/アロハ・オエ』(1948年)
- 『ハムレット』(1949年)
- 『ウィンナー・ワルツ』(1949年)
- 『妖炎/ホフマン物語』(1950年)
- 『君を呼ぶ歌』(1950年)
[編集] 専科時代
- 『白き花の悲歌(エレジー)』(1951年・雪組)
- 『南十字星は輝く』(1951年・雪組)
- 『虞美人』(1951年・星組、花組)(1955年・星組)
- 『花の風土記』(1951年・雪組)
- 『源氏物語』(1952年・花組)(1957年・月組)
- 『トウランドット』(1952年・月組、星組)
- 『白蓮記』(1953年・星組)
- 『薔薇の大地』(1953年・星組)
- 『勧進帳/人間萬歳』(1954年・雪組)
- 『白井権八/王春讃歌』(1954年・花組)
- 『春の踊り(宝塚物語)』(1954年・星組、雪組)
- 『ラヴ・パレード』(1954年・星組)
- 『君の名は(ワルシャワの恋の物語)』(1954年・花組)
- 『雪物語/黄色いマフラー』(1955年・月組)
- 『キスメット』(1955年・花組)
- 『ローサ・フラメンカ(初めて演出も担当)』(1956年・星組)
- 『インディアン・ラブコール』(1956年・月組)
- 『夜霧の女』(1956年・星組)
- 『世之介と七人の女(演出も担当)』(1957年・星組)
- 『恋人よ我に帰れ』(1958年・月組、星組)
- 『光明皇后(演出も担当)』(1958年・星組)
- 『花の饗宴』(1958年・雪組)
- 『白い山吹(演出も担当)』(1958年・星組)
- 『恋河童/椿姫』(1959年・花組)
- 『浅間の殿様/ダル・レークの恋(演出も担当)』(1959年・月組)
- 『弓張月』(1959年・雪組)
- 『燃える氷河』(1960年・花組、星組)
- 『華麗なる千拍子』(1960年・星組)
- 『朧夜源氏』(1961年・花組)
- 『砂漠に消える』(1961年・雪組)
- 『メイド・イン・ニッポン』(1962年・星組)
- 『カチューシャ物語』(1962年・星組)
- 『姫蜘蛛/タカラジェンヌに栄光あれ』(1962年・花組星組合同)
- 『不死鳥の翼燃ゆとも(演出も担当)』(1963年・雪組、星組)
- 『舞拍子』(1964年・月組星組合同)
- 『シャングリラ』(1964年・星組)
- 『宝寿』(1964年・花組雪組合同、月組星組合同)
- 『日本の旋律』(1964年・月組)
- 『花響楽』(1965年・月組)
- 『海の花天女(演出も担当)』(1965年・月組)
- 『日本の幻想』(1966年・花組)
- 『京の川』(1966年・星組)
- 『白鷺(演出も担当)』(1967年・花組)
- 『メナムに赤い花が散る』(1968年・花組)
- 『引き潮』(1969年・第1回宝塚芸術劇場)
- 『纏おけさ』(1969年・月組)
- 『茨木童子』(1970年・月組)
- 『宝塚EXPO'70・四季の踊り絵巻』(1970年・雪組)
- 『鷗よ波濤を越えて』(1970年・月組)
- 『花は散る散る』(1971年・花組)
- 『いつの日か逢わん』(1971年・星組)
- 『宝塚名曲選』(1973年・花組)
- 『花のお嬢吉三』(1974年・花組)
- 『春鶯囀』(1975年・月組)
- 『宝舞抄』(1977年・花組)
- 『花小袖』(1980年・花組・紫綬褒章受章記念)
- 『花供養』(1984年・専科・バウホール公演)
- 『花夢幻』(1985年・雪組)
- 『宝塚をどり讃歌』(1987年・雪組・勲四等宝冠章受勲記念)
- 『白扇花集』(1992年・花組)
- 『宝寿頌』(1993年・星組)
- 『花は花なり』(1996年・花組)
- 『今すみれ花咲く』(2001年・月組)
- 『飛翔無限』(2004年・花組)
[編集] 外部出演
- 『加茂川染/春夏秋冬』(1962年・梅田コマ劇場・長谷川一夫特別公演)
- 『鬼の少将夜長話』(1965年・東京宝塚劇場・七世松本幸四郎追善特別公演)
- 『白鷺屏風/歌舞伎十八番』(1966年・梅田コマ劇場・コマ歌舞伎)
- 『朝の雪/紙屋治兵衛/初松魚』(1967年・御園座・東宝歌舞伎)
- 『徳川の夫人たち』(1968年・東京宝塚劇場、帝国劇場)
- 『忠臣蔵/赤穂浪士』(1968年・帝国劇場・帝劇歌舞伎)
- 『淀どの日記』(1969年・中日劇場)(1972年・帝国劇場・山田五十鈴三十五周年記念)
- 『源氏物語』(1972年・帝国劇場・長谷川一夫特別公演)
- 『浮かれ式部』(1972年・御園座)
- 『菊枕』(1974年・芸術座)
- 『千姫曼荼羅』(1976年・帝国劇場・山田五十鈴四十周年記念)(1977年・中日劇場)
- 『歌麿』(1977年・帝国劇場・長谷川一夫特別公演)
- 『女役者』(1979年・帝国劇場)
- 『吹けよ川風』(1979年・帝国劇場・長谷川一夫特別公演)
- 『男の花道/春夏秋冬』(1981年・東京宝塚歌劇場・東宝歌舞伎)