尿素SCR還元システム
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尿素SCR(選択的触媒、Selective Cataryc Reduction)還元システムとは、日産ディーゼル工業やダイムラークライスラーなどが実用化または開発している、ディーゼルエンジンの排出ガス浄化技術である。
なお、誤解されがちであるが、日産ディーゼルのFLENDS(Final Low Emission New Diesel)システムとは、超高圧燃料噴射システム(GE13系はユニットインジェクター、MD92系はコモンレール式燃料噴射装置)と本装置を組み合わせたもので、触媒装置単体の呼称ではない。
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[編集] 歴史
- 2003年11月3日、第38回東京モーターショーに日産ディーゼルが実機(単体)および車両に搭載した状態で展示したFLENDSシステムは、世界一厳しいと言われる平成17年排出ガス規制を1年近く前倒しして適合したことで話題を集めた。
[編集] システムの概要
原理としては、アンモニア(NH3)が窒素酸化物(NOx)と化学反応することで窒素(N2)と水(H2O)に還元されることを応用したもので、火力発電所や船舶の排気ガス処理システムにヒントを得ている。ただしアンモニアを車両に積むのは危険なので尿素水をタンクに入れて搭載し、これを排気中に噴射することにより高温下で加水分解させアンモニアガスを得る。
このアンモニアによりNOxを還元しN2(窒素ガス)とH2O(水蒸気)を得る。
[編集] 長所と短所
[編集] 長所
- このシステム自体による燃費の悪化要因が少ない
[編集] 短所
- 尿素水タンクおよび噴射システムに加え、システムの前後段に酸化触媒を装着する必要があり、重量増により積載量が減少する。
- アンモニアが排出される危険がある。
[編集] 各社の動向
- 日産ディーゼルは、自社のみならず三菱ふそうトラック・バスにも供給することで既に合意している。
- 三菱ふそうは、当初独自に開発を進めていたが、リコール問題で中止。日産ディーゼル製の供給を受けることで合意。
- いすゞ自動車は、既に第36回東京モーターショーに参考出品しているが、尿素水の供給インフラの整備が充分でないため、時期尚早と判断。その後、トヨタ自動車との業務提携が成立し、この方式を採用しないことを決めている日野自動車との兼ね合いから、開発は凍結されたものとみられる。
- メルセデス・ベンツは「ブルーテック(Blue-tech)」の名称で乗用車用に展開。日本とともにディーゼル乗用車への風当たりが強い北米でも発売予定。ただし、2006年秋に導入されるE320 CDIは不採用。
- 本田技研工業は、触媒中で尿素を精製することで尿素水溶液の補給がいらない、まったく新しいNOx触媒を開発。試作車を実験走行させている。
[編集] 関連項目
- 日産ディーゼル・FLENDSシステム
- アドブルー(尿素水)