宮古湾海戦
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宮古湾海戦（みやこわんかいせん、明治2年3月25日（グレゴリオ暦1869年5月6日））は、箱館戦争（戊辰戦争）の戦闘の1つで、盛岡藩の宮古村（現在の岩手県宮古市）で発生した。通常の海戦と違い、「敵艦に乗り込み、奪い取る」という、近代以降では世界でも数少ない戦闘事例である。当時、この作戦は"アボルダージュ"（英語ではBoardingの意味）と呼ばれ、第３国の旗を掲げて近づき、直前に自国の旗を揚げて接舷、切り込みをかけるというもので万国公法で認められていた。東郷平八郎も、新政府軍の軍艦春日にて参戦している。
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[編集] 背景
1869年（明治2年）、江戸城無血開城に対して徹底抗戦を主張した榎本武揚らは旧幕府艦隊と共に江戸を離れ蝦夷地（北海道）の箱館（北海道函館市）を中心に蝦夷共和国を設立したものの、旗艦の開陽を暴風雨で喪失し、海上戦力で新政府軍に対し劣勢に立たされていた。
そんな折、3月半ばに新政府軍の軍艦4隻（甲鉄、春日、丁卯、陽春）と軍用船4隻（戊辰丸、晨風丸、飛竜丸、豊安丸）の艦隊が宮古村に入港する情報が届いた。なかでも、旗艦の甲鉄（元ストーンウォール、後の東艦）は、江戸幕府がアメリカに発注したフランス製軍艦で、当時日本唯一の装甲軍艦であった。
総裁榎本武揚、海軍奉行荒井郁之助、回天艦長甲賀源吾、フランス軍事顧問ブリュネ、ニコール、コラシュらは、旧幕府艦隊を宮古港に停泊中の甲鉄に接舷させ、斬り込み隊を突入させて奪取する作戦を立案した。宮古港に入港する際には回天、高雄、蟠龍の三隻はそれぞれ外国旗を掲げ、突撃寸前に日章旗に旗を改める、というものであった。
作戦準備が整い、回天には総司令官として海軍奉行荒井郁之助、検分役として陸軍奉行並土方歳三と陸軍奉行添役相馬主計、同役野村利三郎らが乗船し、ニコール、コラシュ、クラトーら並びに斬り込み隊として神木隊・彰義隊合わせて60人程もそれぞれ3艦に乗り込んだ。当初、箱館出港は3月19日の予定だったが、何かしらの問題が起こったため20日に延期された。
[編集] 経過
3艦は宮古港やや南方に位置する山田港への集合を予定して、3月20日夜に箱館を出港。しかし途中暴風雨に遭い艦隊は離散、蟠龍が行方知れずとなり、24日には嵐がやや静まったものの、25日までに山田港に到着できたのは回天と高雄のみだった。25日早朝、回天は米国旗、高雄は露国旗を掲げて宮古港に接近したが、高雄が機関故障を起こして作戦から離脱、旧幕府艦隊はやむなく回天のみで作戦を敢行することになった。
この時、暴風雨による被害で、回天の特徴であった3本のマストが2本になっており、さらに米国旗を掲げていたため、新政府軍側では旧幕府軍艦の来襲に全く気が付いていなかった。甲鉄に接近した回天は、作戦通り米国旗を下げてすぐさま日章旗を掲げ接舷、一気に白兵戦で決着をつけるかに見えたものの、小回りの利かなかった回天は接舷向きではなく、艦長甲賀源吾の必死の操縦にも関わらず、甲鉄の横っ腹に突っ込む形となり、回天船首が甲鉄の甲板の3ｍ程も上に乗り上げてしまった。
それでも回天からは、先発隊が甲鉄艦甲板に斬り込んでいったが、細い船首からでは乗り移る人数が1人2人に限られ、また1分間に180発もの弾丸をばら撒くガトリング砲など強力な武器の恰好の標的となってしまう位置だったため、乗り移る前に回天甲板上でバタバタと倒れる兵が続出した。
ニコール、相馬主計なども負傷。次第に甲鉄はじめ回りにいた新政府軍艦も戦闘準備が整って、回天は敵艦に包囲されて集中砲撃を浴びるに至り、甲賀源吾は腕、胸を撃ち抜かれてなおも指揮をふるっていたが、弾丸に頭を貫かれてついに戦死し、形勢不利と見た荒井郁之助が自ら舵を握って、甲鉄から船体を放し、猛スピードで宮古湾からの撤退を開始した。甲鉄の甲板に斬り込んでいった野村利三郎ら数名は、撤退に間に合わずに戦死した。この間、約30分だったと言われる。
直ちに新政府艦隊は追撃を開始、回天は撤退途中に蟠龍と合流して26日夕方には箱館まで退却ができたものの、機関故障を起こしていた高雄は捕捉され九戸にて上陸し、船を焼いた後コラシュら乗組員は盛岡藩に投降している。
[編集] その後
翌27日には戦死者を埋葬し、負傷者は箱館病院に送られた。海戦後、青森にしばらく碇泊していた新政府艦隊は、4月9日に蝦夷地上陸を開始した新政府軍に合わせて箱館湾に迫り、箱館湾海戦において旧幕府艦隊を撃破。5月18日、戊辰戦争は終結に至る。
現在、宮古市には新政府軍の一兵卒として従軍した、若き日の東郷平八郎の残したこの海戦に関するメモが石碑となっており、観光地にもなっている。
[編集] 関連項目
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