ランチア・デルタ
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デルタ(Delta)は、イタリアの自動車会社ランチアが1981年に発表したハッチバック型の乗用車。
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[編集] 第1世代
1911年のランチア創業間もない頃にも「初代」デルタが存在したが、名称以外の関連性がないため、ここでは1979年発表の5ドアハッチバックのデルタを第一世代とする。
ランチアでは、フィアットによる吸収前1972年まで生産されていたフルヴィア(Fulvia)、フィアット吸収後の1972~1980年に製造されたベータというベーシックモデルを製造してきており、デルタもその流れを汲んだものである。 先代のベータがセダン、クーペ、ワゴンからオープン、ミッドシップまで豊富なボディバリエーションを持っていたのに対して、デルタのボディは全て5ドアハッチバックであった。1982年にデルタをベースとした4ドアセダンが発表されたが、プリズマ(Prisma)という名前が与えられ独立した車種となった。
当時のヨーロッパでは、1975年に発表されたフォルクスワーゲン・ゴルフが非常に大きな人気を博し、2ボックスブームとも言える状態であった。デルタは、フィアットから先に発表されたリトモに引き続いて、この流れに乗ってゴルフを追撃すべく投入された。デザインは内外装共に、ゴルフをデザインしたジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当し、簡素な大衆車であるゴルフに対抗して、人工皮革であるアルカンタラを多用した豪華な内装によって「小さな高級車」として人気を博した。
ボディサイズは、全長3885×全幅1620×全長1380、ホイールベース2475(単位はmm)
エンジンは全て4気筒で、OHCの1.3L、1.5L、DOHCの1.6L、1.6Lターボのガソリンエンジンと1.9Lターボのディーゼルエンジン。基本的にそれらをFF方式で駆動した。しかし、特別なモデルとして、DOHCの2.0LターボでガソリンエンジンのHF4WD、HFインテグラーレと呼ばれる4WDモデルもあった。DOHCのモデルには、フィアットの伝統的なベルト駆動ツインカムユニット、通称「ランプレディ・ユニット」が採用されている。 FFの普及モデルは写真のとおり角型2灯ヘッドライトだが、HF4WD以降の高性能モデルは丸型2灯ヘッドライトとなっている。
1980年にヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
1993年に発表された2世代目のデルタ(通称デルタII)が後継車種となる。
[編集] バリエーション
[編集] デルタ・S4
1985年当時の世界ラリー選手権であったグループBのレース用車両および、その出場権獲得用の市販モデル。エンジン、シャシ共にデルタとは全く関連性が無く、グループBの出場資格を得るためにデルタの名前と容姿を使ったものであった。
ボディサイズは、全長4005×全幅1800×全高1500、ホイールベース1440(単位はmm)
エンジンは、1759cc4気筒DOHCスーパーチャージャー+ターボのガソリンエンジンで、それをボディ中央に搭載し4輪で駆動するミッドシップ4WDであった。
[編集] デルタ・HF・インテグラーレ
1986年をもって廃止されたグループBに代わり世界ラリー選手権となったグループAのレース用車両および、その出場権獲得用の市販モデル。デルタをフルタイム4WD化したスポーツモデル。
1987年に発売されたデルタ・HF・4WDが最初のグループAラリー用モデルであったが、この時はまだインテグラーレという名前ではなかった。
1988年にデルタ・HF・インテグラーレとなり、ボディ形状もフェンダーの張り出したブリスターフェンダーと呼ばれるものとなった。さらに1989年にはデルタ・HF・インテグラーレ 16Vとなり、それまでの4気筒DOHC8バルブ2.0Lターボエンジンを16バルブ化した。
1992年にはデルタ・HF・インテグラーレ・エボルツィオーネとなった。その名の通り、各部品の改良と共にボディデザインが大幅に変更された。
1993年、ランチアはこの年から世界ラリー選手権に出場していなかったが、すでに単独モデルとしての人気を得ていたデルタ・インテグラーレ・エボルツィオーネは性能アップし、デルタ・インテグラーレ・エボルツィオーネIIとなって完全な独立モデルとして販売された。日本では1995年の最終ロッド250台を限定車として、デルタ・HFインテグラーレ・コレツィオーネのネーミングで販売された。
デルタは、1987年から1991年のワークスと1992年のジョリークラブによる世界ラリー選手権6年間の参戦中、6度の年間チャンピオンに輝いた。 日本では、デルタと言えばこの一連のスポーツモデルをさすことが多い。
[編集] 第2世代
1993年に先代デルタの後継車種として、フィアット・ティーポ同様ティーポ2/3プロジェクトのひとつとして発表された。よって、フィアット・テムプラやランチア・デドラ、アルファロメオ・155とは基本構造が同じであった。
ボディは5ドアハッチバックと3ドアハッチバック。
ボディサイズは、全長4011×全幅1703×全高1430、ホイールベース2540(単位はmm)先代同様、HFというスポーツモデルがあり異なったボディを与えられていた。フェンダーが張り出した分、全幅が1759mmとなる。
エンジンは全て4気筒で、OHCの1.6L、DOHCの1.6L、1.8L、2.0L、2.0Lターボのガソリンエンジンと1.9Lターボのディーゼルエンジン。それらをFF方式で駆動した。
内外装共にイタリアのデザイン会社I.DE.Aが担当した。
[編集] 第3世代
ランチア創立100周年を記念し、2006年9月5日のヴェネチア国際映画祭で第3世代のランチアとなる「ランチア・デルタHPE」が公開された。
サイズは全長4500mm×全幅1800mm×全高1500mm。ホイールベースは2700mmとなる。ラゲッジスペースは400ℓ。ガソリンとディーゼル双方のエンジンが設定され、出力は120~200ps程度。トランスミッションは6速MTかATが組み合わされるという。
装備はBose社製のHi-Fiオーディオシステムや大型サンルーフなどで、アルカンターラとレザーの内装トリムが組み合わされる。
2006年のパリサロンでも出展された。発売は2008年予定。フィアット社内では発売と同時にランチアの日本で正規輸入を再開することが検討されているという。
[編集] 外部リンク
“今世紀初”の新型「ランチア・デルタ」、ヴェネツィア映画祭で公開(WebCG)
ja:ランチア・デルタ