ポケット戦艦
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ポケット戦艦（ - せんかん、英：Pocket battleship）とは、ドイツ海軍がヒトラー政権成立前のヴェルサイユ条約の厳しい軍備制限下の1929年から1932年にかけて建造開始した装甲艦（そうこうかん、独：Panzerschiff）に対して英国が付けた渾名である。大きな重巡洋艦といえる程度の艦型であり、実際にドイツ海軍は1939年に装甲艦を重巡洋艦に艦種変更した（ポケット戦艦は英国のネーミングである）。
1933年から1936年の間に以下の3隻の装甲艦が就役した。
- ドイッチュラント（Deutschland）
- 1939年10月にリュッツォウ（Lützow）に改称。
- アトミラル・グラーフ・シュペー（Admiral Graf Spee）
- アトミラル・シェーア（Admiral Scheer）
ポケット戦艦の第一の特徴は重武装にあり、制限枠一杯である52口径28cm砲の3連装砲塔を2基備えている。これは大口径砲による長射程で対抗艦種である条約型巡洋艦を圧倒し、砲弾の威力の優位により少ない命中弾数で相手を葬るためである。また強力な敵と遭遇した場合には損害を被る前に退避できるように、装甲を犠牲にしてそれなりの高速化を実現した。このような設計思想は第一次世界大戦前にもあり、巡洋戦艦という種別の軍艦が建造されている。 実際問題として同じ艦隊の中に巡洋戦艦と弩級戦艦を混在させて運用することは、速度などの点から司令官にとって非常に悩まされる問題であった。
第二の特徴は機関を軍艦に通常使用される蒸気タービンではなくディーゼル機関としたことで、大洋での通商破壊戦に必要な給炭基地不要の長大な航続力を得た。第一次世界大戦の教訓から、第二次世界大戦ではポケット戦艦は公海上の通商破壊作戦に徹した。また、第一の特徴である防御力の難点から正面切って戦うことは難しく、望まない戦闘であれば大抵逃げ去ることができた。しかし、イギリス海軍の包囲網が狭まる中、グラーフ・シュペーは判断を誤り、3隻のイギリス艦隊に捕捉され、ラプラタ沖海戦で損害を被っている。その後、修理のため中立国であったウルグアイのモンテビデオ港に入港したが、結局自沈した。
[編集] 文献
- Theodor Krancke/H.J.Brennecke（著）、伊藤哲（訳）、『ポケット戦艦：アドミラル・シェアの活躍』、早川書房、1980年
