プリンセスチュチュ
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『プリンセスチュチュ』は、バレエをテーマとしたアニメ。初回放送は2002~2003年(後述)。
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[編集] 概要
伊藤郁子原案、佐藤順一総監督。全26話。うち、前半13話に「卵の章」、後半に「雛の章」というサブタイトルが、それぞれ付けられている。
構想10年以上という長い準備期間を経て、「キッズステーション」で前半13話が30分枠で放映され、後半は『動画大陸』内で残り13話を1エピソードにつき15分ずつの前・後編という形で放映した。
放送開始の2002年ごろ、テレビ神奈川でも土曜日の深夜に放送された。
日本のテレビアニメ史上ではおそらく初めて、バレエとクラシック音楽を物語全体の原動力として用いた作品。特定のクラシック曲(の一部)に主人公の姿を投影させ、それをBGMの枠を超えたライトモティーフとして物語を組み立てていく手法が、ここまで全面的に取り入れられたものは、じつに珍しい。特に「卵の章」の後半4話分のBGM選曲と実際の物語進行は、まるで視聴者がこれらのBGMの音楽的意味を知っていることが作品を鑑賞する前提であるかのような、極めて密接な関係を持って演出されており、興味深い。 描画上においても、主人公達が演じるバレエのシーンにおいて、実際のマイムがアニメーション上の物語進行を明示しているという凝った演出も見られた。また、バレエのどの役を作品上の誰が演じる(又は演じることができない)かが、とりわけ「卵の章」最終話のタイトル「白鳥の湖」に向けて物語が収斂に向かうのを、作品自体が自律的に行うための壮大な仕掛けとして、効果的に描かれていたことにも、この作品の土壌としてのバレエの存在の大きさがうかがわれる。
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
金冠町という町の金冠学園バレエ科の落ちこぼれ生徒・あひるは、憧れのみゅうと先輩といっしょにパ・ド・ドゥ(男女がペアを組んで踊ること)を踊るのが夢。人の心を持たず、いつもさみしげなみゅうとの役に立てればとねがうあひるに、謎の老人ドロッセルマイヤーが力を授け、あひるはプリンセスチュチュに変身して、みゅうとに失った心のかけらを返してあげることができるようになった。 でも、みゅうとの親友ふぁきあやガールフレンドのるうは、なぜかみゅうとが次第に心を取り戻してゆくのを拒否する。謎めいた女性エデルはあひるに何かを教えてくれるが、あひるには難しすぎてよく分からない。やがてドロッセルマイヤーの眠っていた物語「王子とからす」が目覚め、彼らは否応なくその物語の渦に巻き込まれてしまう。 次第に自分の真の姿に気づいていくあひるは、自分の境遇とともに物語の王子様だったみゅうとの幸せを思って苦悩するとともに、回りの人達の思いにも心を向けるようになる。そこに敵役プリンセスクレールが登場して、物語の歯車は一気に回り始める(卵の章)。
[編集] 登場人物
- 本作における主人公の「女の子」。金冠学園バレエ科見習いクラスの落ちこぼれ生徒。謎の老人ドロッセルマイヤーに与えられたペンダントによって、憧れのプリマドンナ、プリンセス・チュチュに変身する力を与えられた。あひる自身は当初自分のことを人間の女の子だと思っていたのだが、その真の姿は鳥のアヒルだった。作品中におけるライトモティーは『くるみ割り人形』(第1幕序曲)。
- みゅうと(声:矢薙直樹)
- 10年程前放心状態のところをふぁきあとカロンに助けられ、それ以来ふぁきあに言われるがままに生活していた。心を持たず、感情を抱くことの出来ない少年だが、プリンセス・チュチュに出会うことで、徐々に変化を始める。バレエシーンにおける透明感あふれるパは印象的。作品中におけるライトモティーフは『ジークフリート牧歌』と『くるみ割り人形』(金平糖の踊り)。
- ふぁきあ(声:櫻井孝宏)
- 心を失い危なっかしいみゅうとの面倒を見ている少年。胸に大きな痣があるが、その意味を知る者は少ない。バレエシーンでは若々しい、躍動的なパが魅力的。作品中におけるライトモティーフは『コリオラン』(序曲)と『ローエングリン』(第3幕への前奏曲)
- るう(声:水樹奈々)
- みゅうとの恋人を自称する、バレエ科特別クラス女子主席。自分の隠された役割(悪役としてのプリンセス・クレール)に絶望するも、次第にそれに支配されてゆく様は、作品の大きな見どころの一つ。ところが、そのクレールがジゼルを踊りきれない、というのが、結局彼女は悪役になりきることすらできない、という作品の巨大な仕掛けを見事に暗示していた。作品中におけるライトモティーフは、『くるみ割り人形』(ワルツ)と3つの『ジムノペディ』。
- エデル(声:平松晶子)
- オルゴールの音と共に現れる謎の女性。あひるに時々アドバイスをしてくれることも。「卵の章」フィナーレにおける役回りは、「白鳥の湖」という13話サブタイトルの持つ意味を作品中で成就させる為。作品中におけるライトモティーフは『コッペリア』(自動人形の音楽)。
- 猫先生(声:松本保典)
- 何かあると二言目には「私と結婚してもらいますよ!」と迫ってくる、文字どおり猫の先生。バレエ科を担任。独特な艶かしさを持つバレエはユニーク。作品中におけるライトモティーフは『真夏の夜の夢』(結婚行進曲)。
- ぴけ(声:松本さち)
- あひるの親友。人情家。
- りりえ(声:白鳥由里)
- あひるの親友。トラブル好き。
- 大鴉(声:菅生隆之)
- 「王子と鴉」に登場する鴉の親玉。
- うずら(声:葉月絵理乃)
- 「~ずら」が口癖の幼女。エデルが燃えた後の残り木からカロンによって作られた。
- カロン(声:麦人)
- ふぁきあの親戚・育ての親。骨董店を営む。
- あおとあ(声:浦田優)
- 音楽科の生徒。ドロッセルマイヤーについて調べている。
- ドロッセルマイヤー(声:三谷昇)
- 謎の老人。作家でお話「王子と鴉」を執筆途中に死亡したらしい。あひるにペンダントを渡し、プリンセス・チュチュに変身してもらうことで、「王子と鴉」の物語を成就させようと考える。作品中におけるライトモティーフは『くるみ割り人形』(第1幕行進曲)。
- ナレーション 岸田今日子
[編集] テレビアニメ
キッズステーション、名古屋テレビ、テレビ神奈川、テレビ埼玉、サンテレビジョン、京都放送で放送。キッズステーションでは2002年8月16日~2002年10月8日(30分枠)、2002年10月15日~2003年5月23日(15分枠)に放送。
[編集] スタッフ
- 原案・キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤郁子
- 企画:ガンジス
- 総監督:佐藤順一
- 監督:河本昇悟
- シリーズ構成:横手美智子
- プロップデザイン:多田敬一
- 美術監督:田尻健一
- 色彩設計:川上善美
- 撮影監督:荻原猛夫
- 編集:瀬山編集室
- 音楽:和田薫
- 音響監督:本山哲
- 音楽制作:スターチャイルドレコード
- 音響制作:オムニバスプロモーション
- 演助進行:奥野耕太
- アシスタントプロデューサー:多田美菜江、冨田晶子
- プロデューサー:森山敦、川﨑とも子、福井政文、出納泰治、松本慶明、川﨑代治
- アニメーションプロデューサー:春田克典、松本真
- アニメーション制作:ハルフィルムメーカー
- 制作協力:アニメル屋(7話)、遊歩堂(8・11・14~26話)、スタジオオックス(10・14・17・18・22・24話)、P・P・M(14~26話)
- 製作:TUTU(キングレコード、IMAGICAエンタテインメント、電通、マーベラスエンタテインメント、メモリーテック)
[編集] 各話スタッフ
- 脚本:横手美智子、池田眞美子、小中千昭、佐藤卓哉、中瀬理香
- 絵コンテ:佐藤順一、河本昇悟、佐山聖子、紅優、玉川達文
- 演出:佐藤順一、河本昇悟、佐山聖子、紅優、玉川達文、西本由紀夫、室谷靖、浅見松雄、関田修、林有紀、山内東生雄
- 演出助手:浅見松雄、山内東生雄
- 作画監督:小林明美、赤田信人、塩川貴史、牛島勇二、竹田逸子、飯飼一幸、武内啓、吉川真一、石井久美子、伊藤郁子
[編集] 主題歌
- OPテーマ『Morning Grace』(岡崎律子)
作詞・作曲:岡崎律子 編曲:村山達哉
- EDテーマ『私の愛は小さいけれど』(岡崎律子)
作詞・作曲:岡崎律子 編曲:村山達哉 コーラス・アレンジ:岡崎律子
[編集] 各話タイトル
- 1.AKT「あひると王子さま」~Der Nußknacker: Blumenwalzer~
- 2.AKT「心のかけら」~Schwanensee: Scène finale~
- 3.AKT「プリンセスの誓い」~Dornröschen: Panorama~
- 4.AKT「ジゼル」~Giselle~
- 5.AKT「火祭りの夜に」~Bilder einer Ausstellung: Die Katakomben~
- 6.AKT「夢見るオーロラ」~Dornröschen: Prolog~
- 7.AKT「からす姫」~An der schönen blauen Donau~
- 8.AKT「戦士の泉」~Fantasie-Ouvertüre "Romeo und Julia"~
- 9.AKT「黒い靴」~Bilder einer Ausstellung: Alten Schloß~
- 10.AKT「シンデレラ」~Aschenbrodel: Walzer-Coda~
- 11.AKT「ラ・シルフィード」~La Sylphide~
- 12.AKT「闇の宴」~Scheherazade~
- 13.AKT「白鳥の湖」~Schwanensee~
- 14.AKT「大鴉」~Blumenwalzer~
- 15.AKT「コッペリア」~Coppelia~
- 16.AKT「乙女の祈り」~Gebet einer Jungfrau~
- 総集編「猫先生愛のレッスン」
- 総集編「卵の組曲」
- 17.AKT「罪と罰」~Carmen: Aragonaise~
- 18.AKT「彷徨える騎士」~Egmont Ouvertüre~
- 19.AKT「真夏の夜の夢」~Ein Sommernachtstraum~
- 20.AKT「忘れられた物語」~Die verkaufte Braut~
- 21.AKT「紡ぐ者たち」~Lieder ohne Worte~
- 22.AKT「石の冠」~Das große Tor von Kiew~
- 23.AKT「マリオネッテ」~Ruslan und Ludmilla~
- 24.AKT「王子とカラス」~Danse Macabre~
- 25.AKT「瀕死の白鳥」~Romeo und Julia~
- 総集編「vorfinale」
- 26.AKT「フィナーレ」~Der Nußknacker~
[編集] 漫画
- 『プリンセスチュチュ』全2巻 原作:伊藤郁子・佐藤順一 漫画:東雲水生
月刊「チャンピオンRED」(秋田書店)、2002年10月号(創刊号)~2003年7月号に連載。
[編集] 外部リンク
- プリンセスチュチュ KIDS station内のサイト # リンク先のリンク「公式ホームページ」はすでに公式ではないので注意。