ピアノソナタ第29番 (ベートーヴェン)
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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンのピアノソナタ第29番変ロ長調作品106は彼の書いた4楽章ピアノソナタ(全10曲)の最後となる大曲。《ハンマークラヴィーア》と呼ばれている(ベートーヴェンはシュタイナー社への手紙の中で、作品101以降のピアノソナタに、ピアノフォルテに代わりドイツ語表記でハンマークラヴィーアと記すように指定している。作品106に限ってハンマークラヴィーアと呼ばれることは、ベートーヴェンの意思に反するだろう)。後に続く最後の3曲とは対照的に、空間的な巨大さが特徴。演奏は現在でも非常に困難なものとされ、多くのピアニストにとって“壁のような存在”と言われる。
- 作曲時期:1818年完成、翌年出版。
- 献呈:ルドルフ大公に献呈。
[編集] 曲の構成
ピアノソナタ 第29番 変ロ長調 作品106《ハンマークラヴィーア》
- 第1楽章 Allegro 変ロ長調
- ソナタ形式。再現部の後に二次展開部を持つ。
- 第2楽章 Scherzo. Assai vivace 変ロ長調
- スケルツォ。終わり近くに2拍子が差し挟まれる。
- 第3楽章 Adagio sostenuto 嬰ヘ短調
- ソナタ形式。20分に及ぶ楽章。
- 第4楽章 Largo - Allegro risoluto 変ロ長調
- 幻想曲風の序奏と、3声のフーガ、コーダからなる。
[編集] 解説
ベートーヴェンのピアノ作品中はもちろん、古今のピアノ作品中未曾有の規模を持つ傑作。ピアノ独奏曲として歴史の一角をなす、高度で膨大な内容。ピアノの持つ表現能力の可能性を極限まで追求しており、当時のピアノ及びピアニストには演奏不可能だったと言われる。しかし、ベートーヴェン自身は「50年経てば人も弾く!」と一切の妥協をせず、作品の音楽的価値(芸術性)のために考えうるすべてを駆使した。作曲に対する彼の後期様式を強く示す1曲でもある。当然管弦楽編曲も容易であり、ピアノに強烈な効果を発揮させている。後年指揮者などで編曲する者も多かったが、逆に管弦楽ソナタと鍵盤楽器ソナタとの相違は何かを問いかけてさえいる。
現実には、作曲後20数年でクララ・シューマンやフランツ・リストがレパートリー化して、各地で演奏した。
この曲を弟子のフェルディナント・リースが出版するとき、ベートーヴェンから1通の手紙が届く。受け取ったその手紙には、アダージョの最初に2つの音符を加えるようにとの指示があった。リースは回想している。「正直に言って、先生は頭がどうかしたのではないかと疑った。これほどまでに徹底的に考え抜かれ、半年も前に完成している大作に、たった2つの音符を送って来るとは。…しかし、この音符がどれほどの効果をもたらすかを知った時、私はさらに増して驚嘆した。」ベートーヴェンが細部まで徹底的にこだわり抜いたことを伝えるエピソードである。
グレン・グールドはインタヴューの中で「鏡に映すと右手と左手がそっくり一緒になるパッセージが第4楽章にあり、確実に意図的だ」という指摘を示した。
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