ゾマホン・ルフィン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゾマホン・イドゥス・ルフィン(Zomahoun Idossou Rufin、1964年6月15日-)はベナン出身のタレント、留学生。
目次 |
[編集] 来歴
1964年6月15日ベナン共和国・ダサズメ市生まれ。公務員の父の下、三人きょうだいの長男。妹と弟がいる。ゾマホン氏の父は非常に厳格で、常に道徳を口にし、幼少時のゾマホン氏にとっては非常に怖い存在であり、常に敬語を使って会話をしていたという。15歳の時にその父が病気の為に急死し、その為にゾマホン氏の父方の叔父の家のあるコトヌ市に移り、叔父の家に住まいながら中学校に通う。小学校の頃から成績は優秀で、1986年にベナン唯一の国立大学(当時)に合格したが、父親が既に他界している為に学費は勿論、文房具を買うお金にさえも困っていた。 大学在学中に漢字に興味を持ち、1987年に中国に国費留学。中国文化と中国語を専攻し、孫文や孔子の思想を学んだ。中国で知り合った日本人の友人のつてを頼り、1994年「自費留学生」という形で来日。日本語学校に通いながら、数多くのアルバイトをこなす。自費留学生の為に学費や生活費を稼ぐ為のアルバイトの量も増えていき、また、午前中の日本語学校での生活もあり、睡眠時間は通常でも一日3~4時間。酷い時は一日1時間~2時間という生活を送る。このような生活がたたり、胃潰瘍になり倒れた事もあったという。また、留学の際に保証人になってくれた故・高橋政昭氏経営のビデオカメラの下請けの把手部品の製造工場での作業中に、激しい眠気が襲い、左手の人指し指を切ってしまう。懸命な治療を受けたが指は元に戻らなかった。その為に現在も彼は左手人差し指無しで生活をしている。しかし、彼は決して高橋氏を恨んだり、愚痴ったりはせずに逆に彼を素晴らしい人間と賞賛する。それは、見知らぬアフリカの男を信用し、保証人を買って出てくれたばかりか、自分の経営している工場で働く場を提供してくれたなどの日本での生活をかなりサポートしてくれたからに他ならない。その結果、彼は自身最初の著作の中でも高橋政昭氏を「私にとっての神様です」と評したり、また、一番最初のページに「故・高橋政昭氏に捧ぐ」と書いている。また、ゾマホン氏が、「日本とベナンの間の掛け橋になりたい」という夢を掲げるようになったのも、この高橋政昭氏との出会いがあり、高橋政昭氏の願いからだったという。そのような生活の中で、1996年上智大学大学院博士前期課程(修士課程)合格。1998年に高円寺のラーメン屋でスカウトされ、TBS系列ビートたけし氏司会の「たけし×世界バトル2ここがヘンだよ日本人」という二時間スペシャルの特番に出演する。その際のゾマホン氏のコメントが好評をはくし、「変なアフリカ人」という事で、以降同テレビ局でレギュラー化された「ここがヘンだよ日本人」に出演するようになる。また、フジテレビ系人気バラエティ番組「笑っていいとも」にも出演するようになる。特に「ここがヘンだよ日本人」での独特の訛りと歯に衣着せぬ物言いがお茶の間の人気を博す。それにより来日当初から講演会に招かれる事もあったようだが、その数がより一層増し、様々な学校や会社などで講演活動を行っている。
[編集] 性格
「ここがヘンだよ日本人」でのコメントや自著等からもわかるように、非常に厳格で真面目かつストイックな性格で、特に異性関係に関しては非常に厳格な考えを持っていて、「結婚するまで肉体関係は絶対に持ってはならない」、「将来結婚するであろう相手の女性がもし、以前に他の男と肉体関係を持っていたら絶対に結婚してあげない」、アダルトビデオやアダルト雑誌等の成人向け雑誌に関しても「私のアパートにはそういう物は無い、自分が住んでいる所にそういう物を持つ事は、それは罪である」と「ここがヘンだよ日本人」にて発言している。また、同時にマスターベーション(一人セックス)についても「それはね、NOです、NOです、自分が、自分が一人でセックスやるのは、それは人間ではない、それは信用が無い」とまで同番組で言っているほどのストイックかつ真面目な性格である。仕事に関しても勤勉実直に働き、その働いたお金で贅沢をする等は一切せず、42歳(2006年12月現在)になる現在も東京・中野区の家賃3万5000円のアパートで一人暮らしをしている。また、家賃や光熱費・食費等を含めた一ヶ月全ての生活費を常に8万円以内に抑えるようしているという。現在も変わらず肉体労働等のアルバイトをしているだろうし、また、著作の印税や講演会で貰う謝礼等からそれなりのお金を貰っているのだろうが、全て小学校建設や財団運営費の為の貯金にまわしているという。 また、かなりの嫌煙派のようで、先の番組内においてもまた、自著においてもタバコの害を説いている。 また、酒に関しても普段は一滴も飲まないと同番組のナレーターがゾマホン氏について説明する時に語っている。 しかし、飲まないのではなく、おそらく経済上等の現実生活上の理由で「飲めない」だけであろうと思われる。実際に同番組でゾマホン氏が故郷であるベナン共和国に帰郷した際にも酒を勧められて飲もうとしている。しかし基本的には下戸のようで吐き出していた。日本で今、社会問題になっている「自殺」についても独自の考えがあり、ゾマホン氏自身は、「どんなに辛い事があっても自殺は絶対にしない」と断言している。 「ここがヘンだよ日本人」の番組内でのコメントや自著で、親孝行をする事の大切さを説いたり、学校の先生を尊敬する事を説いている。また、同番組において「お父さん・お母さんというのは神様である」、「先生というのは神様である」等と発言している。ゾマホン氏の二冊目の自著「ゾマホン大いに泣く・みなさま心よりありがとう」(河出書房新社刊)では、自身の父を「私にとっての救い主である、神様である」とまで書いている。また、「人間性と愛情に基ずかなければならない」という独自の概念も説いている。それ以外にも「ちゃんと勉強しなければならない」「みんな大事である」「日本文化を尊敬しなければならない」とも言っている。このように非常に道徳を重んじる性格でもある。 また、母国であるベナン共和国は、かつてフランスの植民地であった関係で、ゾマホン氏もカトリックの幼児洗礼を受けている。ゾマホン・ルフィンという名の「ルフィン」という名は、その洗礼時の洗礼名らしい。小学校もカトリック系の学校に通っていて、現在も彼はカトリック教徒だそうである。 ちなみにかなりの銭湯好きであり、来日当初から近所の白鷺湯という風呂屋さんにほぼ毎日のように通っていたという。また、「人生甘くない」が彼の口癖。
ビートたけし氏を尊敬しており、現在彼の付き人をしている。また彼の協力を得て母国ベナンに学校を作る計画を実現した。
[編集] 略歴
- 1987年 ベナン国立大学(現・国立アボメ-カラビ大学)アフリカ文学専攻卒業
- 1993年 中国北京語言文化大学修了(修士学位取得)
- 1994年 江戸川区・学旺日本語学校入学
- 1996年 江戸川区・学旺日本語学校卒業
- 1996年 上智大学大学院研究生入学
- 1997年 上智大学大学院博士前期課程(社会学)入学
- 1999年 上智大学大学院博士前期課程(社会学)修了
- 1999年 上智大学大学院博士後期課程(社会学)入学・現在も在学中。
- 2001年 国連JCI(国際青年会議所)より「世界最優秀青年賞」受賞
- 2002年 ベナン共和国・国民栄誉賞受賞
- 2004年 ベナン共和国・大統領特別顧問就任
- 2006年 ベナン共和国・大統領特別顧問再任
[編集] 教育普及・医療・福祉への取り組み
来日して以来教育の重要性を痛感していたのだが、当初は、「日本とベナンの間の掛け橋になりたい」という理由で、私財を投じて母国ベナン共和国に日本語学校を設立しようとしていた。しかし、ベナン北部のあまりの発展の遅れや初等教育が復旧していない現実に愕然とし、識字率を上げなくては日本語学校に通う学生もおぼつかないとして、小学校建設を決意。同時期に「河出書房新社」から刊行していた「ゾマホンの本」の印税の全てと、自身のアルバイト等の働きを通して得た私財を通して、2000年4月、ボルグ県コロボロルに「たけし小学校」を開校。この際子供の働き手が失われるということで親達による暴動が起きたが、ゾマホンの「このままだといつまで経ってもこの苦しい生活から抜けられない」という説得に親達は理解し、結果的には親達が学校の工事に手を貸すまでになった。2001年4月にはアタコラ県チチャクに「明治小学校」とボルグー県キカに「江戸小学校」開校。2003年9月にはコトヌー市に「たけし日本語学校」開校。 ちなみにこのたけし日本語学校では、日本語教育を行うだけではなく、文化交流や技術移転などを目的としている。さらには同校は全て無料で授業を行っているという。
これらの功績により、2001年に世界最優秀青年賞(国際青年会議所 JCI)、2002年にベナン共和国の国民栄誉賞を受賞。 2001年に世界最優秀青年賞を受賞した際に財団を設立する事を勧められて、IFE財団という名の財団を設立し、その責任者にゾマホン氏が就任した。「IFE」とは、ベナン語で「愛・分かち合い」等の意味で、その財団を通じ、教育・医療の復旧や貧困・テロの撲滅、日本の援助を実際に国民の手に届ける為の活動、人権・民主化の促進等、ベナンやアフリカ諸国を中心に 国際社会全体への福祉活動をも実践している。また、同時に当初の目的であった日本とベナンそして、アフリカ全体の交流もその財団にて実践している。 それら財団の運営費は全て、ゾマホン氏個人で支払っていると言う。また、日本でもゾマホン氏の活動を支援する為の「NPO法人IFE」が設立され、ゾマホン氏の活動を支える活動を行っている。これらの功績が認められたのか、来日当初は自費留学生だったのだが、現在は「ベナン共和国国費留学生」という形で、上智大学大学院にて学んでいる。
[編集] 著作
- ゾマホン・ルフィン「ゾマホンのほん」河出書房新社 ISBN 4-309-01307-4 (1999).
- ゾマホン・ルフィン「ゾマホン、大いに泣く」河出書房新社 ISBN 4-309-01344-9 (2000).
- 国際基督教大学社会科学研究所、上智大学社会正義研究所編「日本における正義:国内外における諸問題」御茶の水書房 ISBN 4-275-01996-2 (2003).
- ゾマホン・ルフィン、小国秀宣「ゾマホンも知らないゾマホンの国」明窓出版 ISBN 4-89634-164-3 (2005).