セカイ系
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セカイ系は、アニメ・漫画等におけるストーリー類型の一つである。世界系とも呼ぶ。社会学、マンガ表現論、サブカルチャーの分野で分析、定義が模索されている。
1990年代の時代背景の中、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のブームとともにジャンルとして形成される。そのため、ポストエヴァンゲリオン症候群やエヴァ系と呼ばれることもある。
セカイ系の定義は個人により大きく違い、またかなりあいまいな範囲を指す。現代の見方で言えばセカイ系と呼べる作品は古くからあるかもしれないが、それらはセカイ系とは呼ばない。セカイ系の呼称が広く使われるようになった2000年前後より後年の作品に限定して使う。
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[編集] 概要
セカイ系における世界とは、主人公とヒロインを中心とした主人公周辺しか存在しない。主人公とヒロインの人間関係・内面的葛藤等が社会を経ずに世界の命運を左右していく。場合によっては主人公とヒロインの関係が世界より上位にある。
セカイ系の作品では、主人公が非常に強いもしくは特殊な能力を持った10代の少年少女であることが多い。そしてその力は世界の命運を左右するほどの力である。作中ではなんらかの事情により全世界規模の危機的状況にあり世界の運命は主人公に握られている。
精神世界や感情と世界とが直結している設定を特徴とするため、登場人物のトラウマが強く全面に押し出される事が多い。個人がそのトラウマを克服出来るかどうかがそのまま世界を救えるかどうかに繋がる。
主人公の認識している範囲が世界の全てとして投影されるためセカイ系と呼ばれる。
[編集] 発生と過程
セカイ系という単語が使われ始めたのは、2002年10月下旬からで、「ぷるにえブックマーク」のぷるにえと言われている。
かつてのヒーロー物であれば、主人公は絶対的正義であり敵は絶対的悪であるのが前提であった。主人公は世界を悪の手から救う正義の味方として敵を容赦なく殺しまくった。
しかし、時代が移るにつれて勧善懲悪型のアニメから、優れているが故に日常生活で一般人と軋轢を生んだり、自分自身の存在意義について悩むヒーローが登場するようになった。ここで描かれる主題は、強いヒーローではなく、現実の中のヒーローである。
その後、「正義」や「世界を守る」とは何か、と言うことを視聴者に問いかけるような作品を経て、前述の『新世紀エヴァンゲリオン』によってこのジャンルの爆発的増加に繋がる。
「セカイ系」における主人公の悩み(弱さ)は、それまでの漫画やアニメ等に登場する、自分の存在・行動に迷いのない強い主人公への反動とされている。
さらには、子供向け娯楽・勧善懲悪の啓蒙としてのアニメが、大人の鑑賞に耐えるメディア・正義の多義性や人生を語りうるアニメとなる上での必然として論ずる者などもいる。その時代の変遷の象徴は『マジンガーZ』や『鉄腕アトム』から『機動戦士ガンダム』を経て『新世紀エヴァンゲリオン』へ至るというものとなる。
[編集] 批判
セカイ系は人により評価が激しく分かれている。中には「つまらない作品」の意味でセカイ系を使う人もいる。さらにはセカイ系と言うジャンル自体が存在しないとする意見もある。
セカイ系は文字通り世界的規模の大事を扱う。しかし壮大なスケールであるはずの世界は総人口数十人程度の箱庭でしかない場合が多い。世界は主人公を初めとした極めて少数の意志や感情だけで運命や未来が決定される。また、その決定をする人間は全て主人公と深い関係を持った人物である。それにより、セカイ系の作品の不思議な世界観より、ご都合主義の側面が大きく見えてしまうという批判もある。
本来個人と世界の間には世間や家庭・国家といった段階的な社会・共同体があり、個人がいきなり世界に干渉することは出来ない。しかしセカイ系ではそれら個人と世界を繋ぐコミュニティは非常に軽視されるか、若しくは存在しないものとして扱われる。これは社会に出ていない少年少女の考える世界観に近く、非現実的である。
[編集] 備考
一説によると、人間一人が把握し得る世界は100人程度であるという、その限りにおいてこのジャンルの世界観は人一人の世界で収まってしまう世界であり、まるで世界の果てに崖があるかのように考えていた神話に近い世界観は2000年以降の日本人には非常にとっつきやすいのかもしれないが、このジャンルでは社会ばかりか地球や自然といったものまで、自分の周囲には存在しないかのように軽薄に語られる。環境問題に関心がなく、自然が減った事で唯一神が生まれやすい(例:キリスト教、イスラム教を生み出した文化圏は、自然が少ない乾燥地帯=古代文明が盛衰した跡に生じている)状態になった事はこのジャンルの隆盛と無縁ではないだろう。
[編集] 参考文献
あくまでセカイ系をめぐる議論と影響関係にあると思われるベーシックな批評など、および議論の参考となる文献のみ。
- 『網状言論F改』東浩紀編著 青土社 2003年
- 『美少女ゲームの臨界点』東浩紀編著 波状言論 2004年
- 『リアルの変容と境界の空無化』笠井潔 『空の境界』下巻解説として所収 奈須きのこ著 2004年 講談社
- 『総特集 西尾維新』 ユリイカ9月臨時増刊号 青土社 2004年
- 『パブリック・エナミー・ナンバーワン』元長柾木 講談社MOOKファウスト第五号所収 講談社 2005年
これだけでなく、インターネット上で自身のセカイ系についての考察を公開している人も非常に多い。そのため、「セカイ系」をキーワードに検索しても多くの参考となる文書が出てくるのでそちらも余裕があれば読むことをすすめておきたい。
[編集] 広義として「セカイ系」に属すると考えられる作品群
[編集] アニメ
- 『雲のむこう、約束の場所』新海誠
- 『交響詩篇エウレカセブン』京田知己
- 『この醜くも美しい世界』佐伯昭志
- 『少女革命ウテナ』幾原邦彦
- 『新世紀エヴァンゲリオン』庵野秀明
- 『蒼穹のファフナー』羽原信義
- 『ほしのこえ』新海誠
- 『ラーゼフォン』出渕裕
[編集] 漫画
- 『この醜くも美しい世界』森見明日
- 『最終兵器彼女』高橋しん
- 『なるたる』鬼頭莫宏
- 『ぼくらの』鬼頭莫宏
- 『エイリアン9』富沢ひとし
- 『ZERO』冬目景
- 『八雲立つ』樹なつみ
- 『デーモン聖典』樹なつみ
- 『寄生獣』岩明均
- 『大日本天狗党絵詞』黒田硫黄
- 『夢使い』植芝理一
- 『ディスコミュニケーション』植芝理一
- 『虹ヶ原ホログラフ』浅野いにお
[編集] 小説
- 『イリヤの空、UFOの夏』秋山瑞人
- 『新興宗教オモイデ教』大槻ケンヂ
- 『殺×愛 -きるらぶ-』風見周
- 『戯言シリーズ』西尾維新
- 『涼宮ハルヒシリーズ』谷川流
- 『ブギーポップは笑わない』上遠野浩平
- 『レジンキャストミルク』 藤原祐
[編集] ゲーム
- 『ファイナルファンタジーシリーズ』スクウェア・エニックス
- 『キングダムハーツ』スクウェア・エニックス
- 『高機動幻想ガンパレード・マーチ』『絢爛舞踏祭』アルファ・システム
- 『去人たち』K2C
- 『月姫』TYPEMOON
- 『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』エルフ
- 『沙耶の唄』Nitro+
- 『終ノ空』ケロQ
- 『ひぐらしのなく頃に』竜騎士07
- 『Forest』ライアーソフト
- 『マブラヴ』âge
- 『Moon Whistle』神無月サスケ
- 『Seraphic Blue』天ぷら
- 『分裂ガール』Fu
- 『夜明けの口笛吹き』匿名
- 『E.』おさはる
- 『虚構に咲くユリ』A.Sasaki
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