キャンプ (プロ野球)
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プロ野球においてキャンプとは、ペナントレース期間外にホームグラウンドを置く地域以外の場所に宿営し自主トレーニングや練習を行うことである。チーム単位で行われるものと、選手個人が集まって行われるものとある。時期によって、ペナントレース開始前の2月頃から行われる春季キャンプと終了後の10月下旬頃から行われる秋季キャンプに分けられる。
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[編集] プロ野球のキャンプとは
日本のプロ野球のキャンプは1934年大リーグ選抜チームとの翌年の対戦に備えて編成された全日本チーム(現読売ジャイアンツの前身)が10月15日より千葉県習志野市の谷津球場で行った合同練習が最初とされる。このキャンプは現在のキャンプとは違い秋に行われた。 春期キャンプは、1946年に読売ジャイアンツが愛媛県松山市にあった旧制松山高校(現・愛媛大学教育学部附属中学校)で、ペナントレースに向けて練習を行ったのが最初といわれる。現在では、毎年2月1日に開始して2月下旬、ないしは3月初め頃まで行われる。アメリカメジャーリーグでは spring training と呼ばれる練習にあたる。
以前は海外キャンプを張るチームについては特例的に1月下旬からキャンプを張ることも出来たが、現在は必ず2月1日からでないと監督・コーチの指導下での練習が出来ないことになっている。
キャンプは主に初旬は基礎体力作りとしてランニングやストレッチ体操、キャッチボールなどで体をほぐし、中旬から下旬にかけていよいよ守備、投球、打撃のそれぞれでの実践カリキュラムを行う。シートバッティングや紅白対抗戦などもこの時期に行われる。そして2月下旬からのオープン戦で最終的にその成果を発表して3月下旬の開幕戦出場枠を争う形になっている。
日本のプロ野球は以前、海外や高知県でのキャンプが比較的多かったが、現在はほぼ全チームが南九州・沖縄県に集中してキャンプを張る傾向が増えている。キャンプ地選びでは冬の気象条件は特に重要であり、多少天気は悪くても温暖な沖縄県か、沖縄ほど温暖でないが晴天日の多い宮崎県に集中しがちである。2004年度の場合もダイエーと西武がそれぞれ高知県で開催したキャンプを宮崎県に移している。また阪神の1軍キャンプもこれまで行ってきた高知県安芸市での開催を大幅に縮小して沖縄県宜野座村でのキャンプ期間を延長している。また、毎年公式戦が終了した11月にも、主に若手選手を中心に各球団が来シーズンへ備えた基礎トレーニングを行うための「秋季キャンプ」を行う。他球団を自由契約となった選手の入団テストを行うこともある。シーズンで活躍したベテラン選手は秋季キャンプの時期を休養に充てる事も多い。
ちなみにアメリカの場合は日本とは異なり2月中旬までの自主トレーニングの段階で体作りを完全に仕上げた上で、2月下旬前後に早速実践的な練習を始める。ただキャンプ地への集合は日本のような一斉ではなく投手陣と野手陣に分けて行われる。
この他、球団独自のキャンプ以外にも、選手同士が集まりキャンプを行うことがある。その殆どは球団が行うキャンプ前の自主トレを兼ねたものであり、球団を超えた選手同士の技術交流の場ともなっている。主に出身地、球団の拠点近くの施設を使い複数の球団の選手が集まって合同でキャンプを行う。
またキャンプ期間中には練習だけでなく、キャンプ地の自治体に在住する市民との交流会や少年野球教室などの開催を展開したり、休日になると選手たちがリフレッシュのために市内観光など様々な行動を取り、日ごろはなかなか出来ない貴重なふれあいの場ともされている。
人気球団のキャンプ地は、関係者、メディア、ファンの宿泊や飲食、関連施設の修築などにより数十億円に上る経済効果をもたらすと言われている。近年では野球人気低迷によりその規模は小さくなっているものの、地方の自治体にとってキャンプの経済効果は未だに魅力的なものと捉えられている。
[編集] 参考資料
2月の高知、宮崎、那覇の平均気温()内は降水量
- 高知:40℃(98mm)
- 宮崎:8.1℃(93mm)
- 那覇:16.4℃(118mm)
[編集] 問題点
上記のようにプロ野球キャンプのもたらす経済効果は魅力的なものである為に誘致する自治体は多く、各種施設の整備を約束して自治体間で誘致・引き抜き合戦が繰り広げられている。しかしプロ野球キャンプ地に求められる施設の規模は南国の地方都市の公共施設としてはオーバースペックとなる場合が多く、また他のキャンプ誘致地との競争に勝つため豪華な施設の建設を条件提示する(または球団側が自治体を天秤にかけ好条件を引き出す)場合が多く見受けられ、税金の使い道として「野球優遇」「余所者への税金投入」「税金の無駄遣い」との批判もある。
[編集] 日本の12球団の1軍キャンプ地一覧(2006年春季キャンプ)
[編集] 高知県
[編集] 宮崎県
- 福岡ソフトバンクホークス(宮崎市・アイビースタジアム)
- 西武ライオンズ(南郷町・南郷スタジアム)
- 読売ジャイアンツ(宮崎市・サンマリンスタジアム宮崎、ひむかスタジアム)
- 広島東洋カープ(第2次:日南市・日南市天福球場、東光寺球場)
[編集] 鹿児島県
- 千葉ロッテマリーンズ(第2次:鹿児島市・鹿児島県立鴨池野球場)
[編集] 沖縄県
- 北海道日本ハムファイターズ(名護市・名護球場)
- オリックス・バファローズ(宮古島市・宮古島市民平良球場)
- 阪神タイガース(第1次:宜野座村・宜野座村野球場)
- 東京ヤクルトスワローズ(浦添市・浦添市民球場)
- 中日ドラゴンズ(北谷町・北谷公園野球場)
- 広島東洋カープ(第1次:沖縄市・沖縄市野球場)
- 横浜ベイスターズ(宜野湾市・宜野湾市立野球場)
- 東北楽天ゴールデンイーグルス(久米島町・久米島野球場)
[編集] 海外
- 千葉ロッテマリーンズ(第1次:オーストラリア・ジーロング)
[編集] 過去に行われた主なキャンプ使用会場(カッコ内のチーム名は当時)
[編集] 国内
- 旧制松山高校(巨人)
- 鴨川市営球場(日本ハム)
- 伊東スタジアム(巨人、横浜大洋)
- 静岡県草薙総合運動場硬式野球場(横浜大洋)
- 兵庫県立明石公園第一野球場(巨人、大洋)
- 呉市営二河野球場(広島、南海)
- 高知市野球場(阪急、福岡ダイエー、オリックス)
- 高知市営東部総合運動場硬式野球場(福岡ダイエー)
- 高知県立春野運動公園野球場(西武)
- 宿毛市営球場(近鉄)
- 島原市営球場(西鉄→太平洋クラブ→クラウンライター)
- 串間市営球場(中日)
- 読谷村平和の森野球場(福岡ダイエー)
- 西都原運動公園野球場(ヤクルト、ただしファームは現在も使用)
- 日向市お倉ヶ浜総合公園野球場(近鉄、東北楽天)
- うるま市営具志川球場(中日)
- うるま市営石川球場(中日)
- 糸満市西崎野球場(阪急、オリックス)
- ともやま運動公園(近鉄、オリックス、中日、ダイエー)
- 松山坊っちゃんスタジアム(ヤクルト)
- 久米島町営仲里総合運動公園野球場(東北楽天、ファームは使用)