Wikipedia:ガイドブック 著作権に注意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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[編集] 著作権とは?
ウィキペディアの記事がすべて「誰でも」が「自由に」利用できるものであるということは著作権と切り離しては考えられません。そして、この著作権はネット上では常に様々な問題の源になっている複雑な問題なのです。ですから、まず著作権というものをしっかり確認しておきましょう。
著作権とは一言で言ってしまえば、「自分で作った創作物は自分だけが好きなようにできる権利」です。例えばあなたが小学生だとして、遠足に行ったときの感想文を書いたとしましょう。次の日の授業でクラスの誰かが作品を読まされたとき、なんとそれはあなたの作品の丸写しだったらどうでしょう!? 「それはボクの文章だ!勝手に自分のモノにするな!」と怒りを感じることでしょう。このときあなたは著作権を侵害されたことになります。
ここでわかるように、著作権は役所に申請しないと成立しないなんてことはありません。感想文だったら書いた時点でもうあなたのものです(それをどうやって証明するかはまた別の問題です)。よくウェブサイトの下の方に「Copyright」だとか「(c)」だとか表示してあることがありますが、あんな宣言さえしなくても著作権は成立します(ではあの表示は何なのかという点については、興味があったら調べてみてください)。
ところがネット上ではこの著作権がいとも簡単に侵害されてしまいます。文字データをコピーするなんてコンピュータ上では一瞬の操作ですから。そして、膨大なウェブサイトがある中では摘発が追いつくはずもなく、野放しにされている侵害行為が山のようにあります。しかし、だからといってそれを決して真似してはいけません。確かに百科事典の項目に付け加えたくなるような詳しい解説サイトはいろいろあるのですが、それを丸写ししたばっかりに、ある日莫大な賠償請求が届いてウィキペディアは続行不可能に…だなんて悪い冗談にもなりませんね。
「丸写ししなければいいんでしょ」と言われればその通りですが、突き詰めて考えると難しい問題がいろいろあります。どこからどこまでが「著作物」なのか? どこからどこまでが「侵害行為」なのか? かなりケースバイケースで判断されている部分があるので、独りよがりな判断は禁物です。先ほどの例えに戻りますが、丸写ししたクラスメートが文章の文末だけ微妙に変えていたら著作権はクリアでしょうか? あなたはやはり怒るでしょう。ですから、その程度の違いではやっぱり侵害になり得ます。
[編集] GFDLというライセンスとは?
ウィキペディアで記事を投稿するときは必ず、GFDLの条件で公開することにに同意することへの同意を求める文章が出てきます。 ですから、ウィキペディアで著作権を語るには、GNU Free Documentation License(略称GFDL)というライセンスを理解しなければなりません。これは自分の書いた文章が他人によって自由に編集、配布されることを許可するという利用許諾なのです。
このGFDLは何も、ウィキペディア専用の使用許諾ではありません。ソフトウェア専門家の方なら、GPLというソフトウェアのライセンスなどでおなじみの米国のフリーソフトウェア財団(FSF)が、GPLを文書向けに変えてつくった汎用的なライセンスです。 これこそ、ウィキペディアの自由さを保障しているルールなのです。このライセンスは英語で記述されたものだけが有効で、しかもかなり厳密なのですが、かいつまんで要点を示しましょう。
- GFDLの文書は、著作権者に無断で改変・再配布・二次利用が可能です。
- ただし、そうしてできた二次著作物もGFDLの条件を持たないといけません。
- 流用したGFDL文献の著作権表示はそのまま引き継がないといけません。
大事なのは以上の三点です。再利用自由なGFDLを流用すると、そうしてできたものも再利用自由にしないといけないのですね。いわば「自由が感染する」とでも表現できましょうか。
なんでこんな特殊なルールを使うのでしょう? 考えてもみてください。既存の記事を編集して書き換えてしまうというのはいわば著作物の無断改変です。これが無条件で許されていなければ、ウィキペディアは著作権侵害の嵐になってしまいますね。多くの人の共同編集による百科事典を実現するための方策としてGFDLが導入されたのです。 では、GFDLを使っている以上は全然問題ないのでしょうか? 実はいろいろあるのですが、ここから先は難しいので興味があれば調べてみてください。問題のひとつである引用問題についてはこの章で後述します。
さて、ウィキペディアで記事を書くに当たって無断転載をおこなうとどんなことが起こるでしょう? もちろん、この時点で著作権侵害になってしまっているのは当然ですが、それだけではありません。このGFDLは、文章をどんな用途に使うのも認めているのです。GFDLのもとであればウィキペディアの文章を商売に利用したりするのも自由ですし、改変するのも自由です。無断転載した他人の著作物にまで「自由に再利用していいよ」と宣言してしまっているようなものなのです。大問題ですね。
こうした事情があるので、ウィキペディアは普通以上に著作権問題には敏感です。上記のような問題を起こしてしまえば、下手をすれば膨大な被害が発生します。責任追及の行方によっては、ウィキペディア自体をつぶしかねない影響があるのです。
- 詳しくはこちらの文書を
[編集] 投稿してよいもの
GFDL上、次のものは投稿してもまず問題ありません。
- あなたが自分で考えて作った文章や画像
- 著作権の切れた文章・画像(作者の死後50年以上経ったものなど。ただし、第二次世界大戦の連合国側の国民が作者の場合は年数が延びることがあるので注意が必要)
- GFDLのもとで利用が認められている文章・画像(この場合、履歴を残すなどの必要があります。分からなければノートなどで相談してみて下さい)
- ウィキペディアにおいてGFDLのもとで公開することを作者が許可した文章・画像
- 法律の条文・裁判所の判決
[編集] 投稿してはいけないもの
次のものは著作権を侵害してしまう可能性がありますので、絶対に投稿しないでください。
- 本やパンフレットの文章・画像を写したものや、それを修正したもの
- ウェブページの文章・画像を写したものや、それを修正したもの
- 著作権の切れていない芸術作品を撮影した写真や模写(ただし、建築物をあなた自身が撮影した場合は差し支えありません。屋外に公開されている彫刻なども同じです。)
- 様々な作品のキャラクターのセリフ(一人称や呼称、変身時のかけ声は問題ありません)
- 歌の歌詞
- その他、あなた以外が書いた文章・画像やそれを修正したもの
- インターネット上で機械翻訳をしてくれるサービスもありますが、これらの多くは翻訳結果の二次利用を禁じているようです。原則として機械翻訳の結果を投稿しないでください。
[編集] 注意すべきこと
- 文章や画像の作者が「商用利用しない限り自由に使ってよい」とか「改変しない限り自由に使ってよい」と言っている場合もあります。しかし、その場合でも作者から別途の許可を得なければウィキペディアで使うことはできません。GFDLで公開すると商用利用や改変も許可することになってしまうからです。
- 詳しくはこちらの文書を
[編集] 引用の問題
まず断っておかないといけないのは、引用と流用は違うということです。これは、ネット以外の出版の分野でもたまに争いになる点なのではっきりさせておかないといけません。引用というのは、端的に言えば自分の著作(例えば詩の評論文)を展開するために他人の著作物(この例なら、詩)を参照するなどのことで、日本の国内法ではまったく正当な行為です。相手の許諾を得る必要もありません。ただし、引用が引用であるためにはいくつか条件があります。
- 本文が主、引用部分は従という関係でないといけません。
- 引用する量は必要最低限でないといけません。
- 引用する内容は基本的に改変してはいけないし、註を付けた場合などもその旨を明記しなければいけません。
- 引用であることを明示し、出典を明らかにしなければいけません。
では、ウィキペディアで記事を書くに当たって、引用ならば無断転載と違って問題はないのかというと、是非の判断はまだ付いていない現状では控えることを推奨します。詳しくはWikipedia:引用のガイドラインをご参照下さい。
- 詳しくはこちらの文書を
[編集] 著作権問題への対処
[編集] どこの国の著作権法に従うか
ウィキペディア日本語版で従うべき法律は、日本のものでしょうか? アメリカのものでしょうか? 利用者の大半は日本在住の日本人であるし、著作権者が被害を受けることがあったとしてもその相手は日本人であることがほとんどと思われる以上、著作権問題が起こったときに日本の著作権法を避けて通ることはできないと思われます。
しかし、サーバは米国にあり、運営の母体も米国のウィキメディア財団です。とすると、米国内での活動だともとれるわけで、米国の著作権法も無視するわけにはいきません。
どちらが優先されるのでしょうか? 現在の結論から言うと、ケースバイケースであるとしか言いようがありません。ただ、万が一誰かが訴訟を起こすなどの事態になった場合は、当然その人は自分にとって有利な法律を持つ方の国で起こすことでしょう。
このような著作権の問題に直面しているのは、ウィキペディアだけではありません。インターネット社会では常に問題となっていることです。現在日本語版でとっている方針は、双方の法律どちらにも抵触しない活動をすることとしています。
まだ計画段階ですが、日本にもNPO法人を立てて日本にサーバも移転しようと言う構想もあります。 こうすることで、日本の著作権法以外はあまり気にする必要がなくなります。
[編集] 訴えられるとしたら、誰か
ウィキペディアの記事は大抵、複数の参加者の手が入っています。とすると、その記事の執筆者が誰とは決定しにくくなります。また、管理者と呼ばれる人はいますが管理者も利用者の一種でしかありません。サーバ自体を管理している責任者というわけではありません。
訴える相手は、執筆に参加した人か、管理者陣か、それとも米国ウィキメディア財団でしょうか? これも、現時点では訴える人次第と言うことになってしまいます。逆の立場から言うとこれは、実際に権利侵害を受けて権利回復のために訴訟を起こしたいと思った人にとっても困ってしまう点かも知れません。訴えるべき相手がはっきりしないと言うことになりますから。
この問題については、現時点で結論と言えるほどの統一見解は定まっていません。やはり日本法人設立が切り札になるのではないかと考えられていますが、設立するとむしろ訴える相手がはっきりするので、訴訟を誘発しかねないのでは? との考え方もできます。
ともかく、今の状態では訴訟の起こし方の時点から迷ってしまうような混乱した事態を避けなければなりません。現在も今後もですが、ウィキペディアという素晴らしいプロジェクトを守るために、日米の著作権双方に抵触しない活動を心がけなければいけません。
[編集] 著作権上問題のある記事を見つけたら
記事を見て、もしあなたがその文書に見覚えがあると思ったら、まずは特に気になったフレーズを使って検索エンジンなどで検索してみましょう。それで引っかかる物があれば、その記事は著作権侵害の疑いがあるということになります。
そんな記事を見つけたら、とりあえずノートページ(詳しくは第7章)に検索して引っかかったアドレスを貼って、本当にその記事を書いた人が許可を受けた上で転載しているのか(場合によっては書いた人が当該ページの作者ということもありますが)問い合わせてみて下さい。それと同時に、問題があるとなればその記事を消さなければならないということにもなるでしょうから、削除依頼を出しておきましょう。