カンゼ蔵族自治州

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カンゼ蔵族自治州は、中華人民共和国が四川省内に設置した3つの自治州（ランキョンクル）の一つ。公用語による正式名称は、チベット名カンゼ・プーリー・ランキョンクル:dkar mdzas bod rigs rang skyong khul、中国名ケンツー・ザンズゥ・ツーティチョウ:甘孜蔵族自治州, gān zī zàng zŭ zì zhì zhōu）。日本語では「dkar mdzas(甘孜)」に対してはチベット語にもとづく「カンゼ」というカナ転写のほか、漢字の表記を音写した「カンツー」などの表記例が見られる。漢字名の音読みは「かん-し」。「プーリー」は「プー族(蔵族)」、「ランキョン」とは「自治」の意で、クルは「州」に相当する地方行政単位。チベット人の伝統的な地理区分ではカム地方（khams phyogs）の東部に相当する。

自治州とは地区（サクル)級の民族区域自治単位の一種で、本自治州は四川省の西部を占める。

チベット名の「カンゼ(dkar mdzas)」とは、「白く美しい」の意で、中国名の「甘孜」はその音写である。

州都はタルツェド（tar rtse mdo, 康定）。

中国語では、西蔵自治区のチャムド地区やこの州などのカム地方を「康」と略称する。この州の州都の中国名「康定」は、「カムの地を平定する」の意。

カム地方の人々はチベット語で「カムパ（khams pa）」と称し、中国語でもこれにちなみ、この州を康巴（カンパ）地区あるいは康区ともいう。東は四川省のガパ・プーリー・チャンリー・ランキョン・クル (阿壩蔵族羌族自治州)、雅安地区、南は凉山彝族自治州、雲南省のデチェン・プーリー・ランキョン・クル (迪慶蔵族自治州) と接し、西はディチュ河(金沙江)沿いに[[西蔵自治区]のチャムド地区、北は青海省の、ユフー・プーリー・ランキョン・クル (yus hru'u bod rigs rangs skyong khul, 玉樹蔵族自治州)、ゴロク・プーリー・ランキョン・クル (mgo log bod rigs rangs skyong khul, 果洛蔵族自治州)と接する。

[編集] 行政区画

カンゼ州は以下の18ゾン(rdzong,県）から成る。

タンゴ(brag 'go,炉霍)、セルタル(gser thar, 色達)、カンゼ(dkar mdzes,甘孜)、ニャロン(nyag rong, 新龍)、セルシュル(ser shul, 石渠)、デルゲ(sde dge, 徳格)、パンユル（dpal yul, 白玉)、チャクサム(lcags zam, 濾定)、タルツェムド（dar rtse mdo, 康定)、ロンタク(rong brag, 丹巴)、ギェスル(brgyed zur, 九竜)、ニャクチュ(nyag chu, 雅江)、タウ(rta'u, 道孚)、リタン(li thang rdzong, 理塘)、バタン('ba' thang, 巴塘)、チャクテン(phyag phreng, 郷城)、ダプパ('dab pa, 稲城)、デロン(sde rong, 得栄）。

[編集] 民族

蔵族　タルツェムド以西の山地
漢族　チャクサム(濾定)に集まり、タルツェムド、ロンタク、ギェスルに雑居する
彝族　ギェスル-ゾン及びチャクサム-ゾン磨西鎮
回族　各地に散居するが、タルツェムドに比較的多い。
チャン族　ロンダクゾン

[編集] 沿革

1725年 - 雍正のチベット分割の際、この地のチベット人諸侯たちの所領は四川省に配分され、四川総督を介して清朝皇帝より所領の安堵を受ける（「カンゼ地方」という地域的枠組みの起源）。
1905年～1910年 - 四川総督趙爾豊は四川兵を率い、この地よりラサに至るまでの領域を占領、この地の諸侯や「西蔵」のガンデンポタンを取り潰し、「西蔵」「西康」の二つの省を設置しようと構想。
1912年～1933年 - 辛亥革命により、建設途上にあった趙の事業は瓦解、ガンデンポタンはチベット国の独立と国土回復を目指して東進、この地は中国とチベットの争奪の舞台となる。
1936年 - 長征途上の中国共産党、西康各地のチベット人たちに「チベット人政府（波巴政府）」を樹立させ、5月1日、これらの代表をカンゼにあつめて「チベット人政権全国大会」を開催、「チベット人人民共和国中央政府」を組織させる。
1939年 - 中国国民政府、名目上はカム全域を領域として西康省を発足させる。
1950年12月15日 - 中国人民政府、西康省の名目上の領域のうち、西康省が実効支配を確立していたディチュ河以東の地に西康省蔵族自治区を設置。
1955年 - 西康省および蔵族自治区を廃止し、「自治州」に格下げして四川省に併合、カンゼ蔵族自治州となる。