オーロラ
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オーロラ(aurora)とは極域近辺に見られる大気の発光現象。名称はローマ神話の暁の女神アウロラ (Aurora) に由来する。極光(northern lights)とも称される。明るさはレイリーで表され、通常は数から数十キロレイリー、明るいもので百キロレイリー以上になる。
また北欧神話においてオーロラは、夜空を駆けるワルキューレたちの甲冑の輝きだとされる。
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[編集] オーロラの見られる場所
オーロラは南極と北極において対称的に発生する。また完全な極点近傍ではあまり発生せず、緯度が大体65度から80度のドーナツ状の領域に高頻度で発生する。この領域をオーロラオーバル(オーロラベルト)と呼ぶ。オーロラが極域において発生するのは、その源であるプラズマ粒子が磁化しており、磁気流体力学的に地球磁場に凍結しているため、磁力線の集まる極域に集中して流入するからである。これはスウェーデンの物理学者アルヴェーンによる凍結定理として知られている。
カナダのイエローナイフやアラスカのフェアバンクスがオーロラがよく見られる場所として多くの観光客や写真家が訪れる。南極の昭和基地でもオーロラがよく見られ、観測が行われている。
またオーロラは地球に限らず、これまで木星や土星、天王星、海王星でも観測されていて、大気と固有磁場をもつ惑星の普遍的な現象であると言われている。
[編集] オーロラの分類
オーロラはその形態によって、カーテン状にはっきりと光るディスクリートオーロラ、ぼんやりと光るディフューズ(拡散)オーロラ、またオーロラオーバルの内部に太陽と地球を結んだ方向へと発達する極冠域オーロラに分けられる。
太陽に端を発する太陽風と呼ばれるプラズマ粒子の流れが地球磁場と相互作用し、複雑な浸入過程を経て地球磁気圏内の夜側に広がるプラズマシートと呼ばれる領域にたまる。ディスクリートオーロラはプラズマシート中の電子がサブストームのような地球磁気圏内の爆発的な過程から極域に流入し、オーロラ上空に存在する磁気圏夜側の電場構造により加速され、地球高層大気の電離層にまで一気に降り込んで大気中の酸素原子や窒素分子と衝突して地球大気を光らせる現象である。ディスクリートオーロラを引き起こすオーロラ電子加速電場の成因には様々な説が提唱されているが、その完全な解明には未だ至ってはいない。
ディフューズオーロラはプラズマシートの電子や陽子が地球磁気圏内の波動によりピッチ角散乱を受け、振り込んでくるものである。ディフューズオーロラは、時に1秒から10秒程度の周期で光度を変えることがあり、脈動(Pulsating)オーロラと呼ばれることもある。
また極冠域オーロラは、太陽風中の惑星間空間磁場の急激な変化によりプラズマシートの形状が変形して現れる。このようにプラズマ粒子の電磁流体力学的な振る舞いにより、極域オーロラの活動や活動域は地球磁気圏内の構造や物理過程と直結している。
[編集] オーロラの色
オーロラは肉眼では白くぼんやりとしかみえないことが多いが、それは発光自身が暗いためで、いくつかの色をもっている。本が読めるほどの明るいオーロラだと、はっきりとその色を識別できる。肉眼で見られるオーロラの色はほとんどが電子の降り込みが原因で、発光が起こっている高度によって違う。上方200 km以上では赤色(630 nm)、200 kmから100 kmの低高度では緑色(557.7 nm)、そして稀に100 km以下の最下部にピンク色や紫色を見ることができる。赤と緑は酸素原子によるもので、ピンク色(連続光)は窒素分子、紫(427.8 nm)は窒素分子イオン(N2+)による。通常見られるのは緑色のオーロラである。これは大気の主組成の高度変化と関連しており、100 km以上では窒素分子に比べ酸素原子が卓越していることを示す。また赤と緑の境は酸素原子の密度変化が影響している。降り込む電子のエネルギーが高くなると、平均的なオーロラの発光高度は低くなる。太陽活動現象に伴う磁気嵐により、たまに日本のような低緯度地方でも赤いオーロラが観測されることがある。これは磁気嵐によって磁力線が低緯度側にゆれることや、赤いオーロラが高高度であるために地平線に沈みにくいことと関係がある。
プロトン(陽子)オーロラの場合、励起され発光するのはプロトン自身である。
オーロラ領域から観測されるのは可視光だけではなく、紫外線や、AKRと呼ばれるkm帯の電波、さらには振込み電子の制動輻射によるX線など様々な波長の電磁波が存在する。