エリス・レジーナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

エリス・レジーナ (Elis Regina Carvalho da Costa、ポルトガル語での発音はエリス・ヘジーナ、1945年 3月17日 – 1982年 1月19日 )は、ブラジルの歌手。1960年代から1970年代にかけて、ブラジルで最も人気のある女性シンガーであった。

エリス・レジーナはポルトアレグレで生まれ、11歳の時に、Rádio Farroupilhaの子供向けラジオ番組で、歌手としてのキャリアをスタートさせた。1959年にはラヂオ・ガウシャ(Rádio Gaúcha)と契約して、翌年には、リオデジャネイロ市へ赴き、彼女の最初のLPである、「Viva a Brotolândia」を録音する。

1965年には、彼女が初めて受けた歌謡コンテストでエドゥ・ロボとヴィニシウス・ヂ・モライスの「アハスタォン(Arrastão) 」を歌い、優勝する。ジャイール・ロドリゲス(Jair Rodrigues)と共に、2枚目のLPである「Dois na Bossa」は、ブラジル国内のレコード売り上げ記録を更新した。

1960年代の後期から1970年代の初頭にかけて、ジルベルト・ジルなどのミュージシャンたちと共にレコーディングを行ったりして、トロピカリズモ運動の普及に貢献した。1974年には、アントニオ・カルロス・ジョビンとのコラボレーション作品であるアルバム「エリス・アンド・トム(Elis & Tom)」を発表した。このアルバムを、最も優れたボサノバアルバムの一つ、そしてこのアルバムに収録されたジョビン作の「三月の水(Águas de Março)」を最も優れたボサノバ・トラックの一つであると考える人も多い。彼女はまた、ミルトン・ナシメントや、ジョアン・ボスコ、シコ・ブアルキ、ジョルジ・ベンやカエターノ・ヴェローゾとも共演作品をレコーディングした。彼女のヴォーカルは、心躍らせる歌声と、優れた抑揚を持ち合わせており、特にアップテンポなナンバーに卓越していると言える。彼女には「Furacão（ハリケーン）」や、「pimentinha（唐辛子）」といったニックネームがついていた。

エリスは、彼女と同世代のブラジルのミュージシャンたちを迫害し追放していた、当時の独裁政権を時々批判することがあった。1969年のインタビューでは、「ブラジルはゴリラに支配されている。」という見解を述べたこともあった。彼女は人気があったゆえに、牢獄に入れられることはなかったが、それでも圧力を受け、やむをえず、スタジアムのショーで、ブラジル国歌を歌わされることになり、左翼的思想の人々から反感を買うことになる。

エリスは、コカイン中毒によって、1982年に36歳の若さで亡くなった。その短いキャリアの中で、数々のトップセラーを記録した。彼女はサンパウロ市のモルンビ墓地に葬られた。

エリス・レジーナの娘（二人目の夫であるセザール・カマルゴ・マリアーノとの娘）であるマリア・リタは、2004年に一枚目のアルバムをリリースした。これは彼女の故郷ブラジルで、プラチナム・ディスクとなった。マリア・リタ（ポルトガル語での発音はマリア・ヒタ）は、そのアルバム「マリア・リタ」で2004年に２つのラテンの音楽賞を受賞した。