エウクレイデス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エウクレイデス(Ευκλείδης (Eukleides), 紀元前365年? - 紀元前275年?、英語名はユークリッド Euclid)は古代ギリシアの数学者、天文学者とされる。いわゆる『原論』(ユークリッド原論)の著者である。ただし、実在を疑う説もある。その説によると、『原論』は複数人の共著であり、エウクレイデスは共同筆名である。
一説によると、アテナイで、プラトンに数学を師事したともいわれ、のちプラトンの死後、彼が創始した哲学学校アカデメイアで数学の教師の1人だった時期があると見られている。確実なのは、彼が古代の卓越した数学者で、アレクサンドリアで数学を教えていたこと、またそこで数学の一派をなしたことである。ユークリッド幾何学の祖で、原論では、平面・立体幾何学、整数論、実数論などの当時の数学が公理的方法によって組み立てられているが、これはギリシャ数学の一つの成果として受け止められている。
ローマのバチカン宮殿にあるラファエロの有名な壁画「アテナイの学堂」にも、プラトンとアリストテレスが降りてくる階段の足元で、コンパスを使って図形を描いている姿で描かれている。
プロクロスの『ユークリッド原論第1巻注釈』によると、“プトレマイオス1世が彼に「幾何学を学ぶのに『原論』よりも近道はないか?」と聞いたところ、彼は「幾何学に王道なし」と答えた”とされている。
16世紀後半になると、エウクレイデスの著作はイエズス会を通じて中国の明にも伝えられた。イエズス会士のマテオ・リッチは、徐光啓との共同作業を通じて著作を漢訳し、1607年に『幾何原本』を刊行した。
[編集] 参考文献
- 『ユークリッド原論――縮刷版――』 中村幸四郎・寺阪英孝・伊東俊太郎・池田美恵訳、共立出版、1996年。ISBN 4320015134