ウイニングポスト
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『ウイニングポスト』(Winning Post)は、株式会社コーエーから発売されている競馬を題材としたシミュレーションゲーム。「Winning Post」とは競馬の「ゴール板」を指す英語名称。現在、シリーズ7作目まで発売されている。
アスキーから発売されているダービースタリオンと並んで競馬シミュレーションファンの人気を博している。ダービースタリオンとの差異は、調教師や馬主同士の人間関係に重点をおいている点、また競走馬の調教に直接関与しないことを基本とする点、時の流れの概念により、種牡馬やホースマンがプレイ中に随時引退・デビューする点などにある。しかし両作品とも新作リリースを繰り返すにつれ、大きな差異を見出すことができなくなっているとの指摘もある。
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[編集] ゲーム内容
[編集] 目標
優秀な競走馬を所有して馬主・生産者としての名声を得ることが最大の目標とされる。そのために優秀な競走馬の生産や購買に務めることになる。ただし、ゲーム内において必ず達成しなければならない目標は存在せず、プレイヤーは自由なスタイルのプレイを楽しむことができる。全般を通して馬主としての経営シミュレーションと、競走馬やホースマンを育てる育成シミュレーションの要素がバランスよく統合されており、その点が人気の秘訣のひとつだとされる。
なおゲームクリアの概念は一応存在するものの、実質的にはゲーム内イベントのひとつに過ぎず、シリーズ2作目を除き、プレーヤーが望む限り際限なくプレイすることが可能である。
[編集] ゲームの舞台
初期の作品では日本の中央競馬のみを舞台としていた(中央以外では凱旋門賞のみ出走可能)が、2作目以降は地方競馬や日本国外の競馬に舞台が広がり、4作目以降は出走可能な地方競馬および海外競馬のレースが大幅に増加し、さらに海外の競馬主催者から表彰を受けることも可能となった。
なお時間面の舞台設定については、ゲーム発売時から数年後の時点からゲームがスタートするのが通例であったが、最新作(7作目)においては1984年からスタートする。そのため、実在競走馬の所有や実在競走馬との対戦が可能である。
[編集] 競走馬の生産
シリーズ初期の作品においては優秀なサラブレッド同士を交配させる、いわゆるベストトゥベストの配合によって優秀な競走馬を生産するという概念が支配的であったが、やがてゲーム内に設定された特定の法則(配合理論)に依拠しなければ優秀な競走馬の生産が困難なシステムに移行した。配合理論として有名なのはインブリード、ニックスなどである。インブリードは血のつながりが濃いいわば親戚同士を配合させて才能のある馬を生み出しやすい反面、健康不安が生じやすい。ニックスは馬の系統と系統の相性がよく、能力のある馬が生まれやすいということである。
[編集] スーパーホース
スーパーホースは、ゲーム内に登場する、卓抜した競走能力をもつ架空の競走馬のことで、ユーザはこのスーパーホースの獲得を目指すことになる。スーパーホースの概念は初代から存在しており、プレイヤーが所有する競走馬のライバルとして登場するが、自分で所有することも可能。スーパーホースはゲーム開始から数年の間、登場することが多い(シリーズ2作目ではプレイ期間中常に登場する。詳細はシリーズ作品一覧の項を参照されたい。7作目ではゲーム内でプレイ開始から一定の年数が経過した後数年間登場する)。特定の競走馬名でシリーズ作品に複数回登場するスーパーホースも存在する。
[編集] 主な登場人物・競走馬
[編集] 人物
騎手の名前は、初期作品では実在の人物に似せた架空の選手名となっていたが、シリーズを重ねるたびに実名化が進んでいる。但し、JRA所属以外の騎手は未だひとりも実名化を施されていない。また、ゲーム内の時間経過によって騎手の引退・新入があり、架空の新人騎手が加入するようになる。更に時間が経つと、実名騎手が新人となって再び参入するようになる。
馬主・調教師名は、ほとんどが実在の人物に似せた架空の名前となっている。馬主の場合は冠名も実在のものに似せてあり、現在の競馬に造詣が深いユーザーであれば誰が元ネタであるかわかるようになっている。
これらの名前を変更可能にする機能(エディット機能)を備えたバージョンもあり、架空の人物名を実名に変えるという遊び方もできる。
実在の人物をモデルとしない、ゲームオリジナルの登場人物も数多く存在する。登場作品が複数シリーズに跨る人物もいるが、シリーズによっては秘書であったり馬主であったりと、そのたびに役割が替わることが多い。
初期からの登場している人物名には「安田」「有馬」など、GIレースに因んだ名前が多い。また、井坂修三郎は実在の競馬評論家井崎脩五郎をモデルにしていると言われている。
以下は登場回数の多い人物の一例。
- 有馬桜子
- 井坂修三郎
- 宝塚菊夫
- 安田五月
- 安田千六
- ビル・メッツ
- 結城江奈
- 高松凱旋
- 鳳雅輝
[編集] 競走馬
開発時の主だった種牡馬、牝馬が登場する。 WinningPost7では、海外も含めて各年のオープン馬やその父母、有名レース出走馬が実名で登場する。 スーパーホースとしては、以下のような架空の馬が登場する。親の特徴を継いでいたり、零細血統の救世主だったりする。
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- ※父母や牡牝は標準的な設定。POGモードやシリーズによって異なるので注意
- サードステージ(牡)
- 父トウカイテイオー
- シリーズを代表するSH。シンボリルドルフ→トウカイテイオー→サードステージで、ダービー3代制覇を目指す。シリーズ2作目では祖父シンボリルドルフを天皇賞(秋)で破ったギャロップダイナの息子であるアンビリーバブルと同期であり、彼らとその息子達のライバル対決が物語の大きな柱となっている。
- ロシアンルーレット(牡)
- 父ソヴィエトスター
- クラシック前半まではかなりの活躍をみせるが、その後はやや低迷する早熟馬。
- ユーエスエスケープ(牡)
- 父アイネスフウジン
- 名前のとおり、父譲りの逃げ馬。しかし主な活躍の場は長距離路線。
- スーパーシュート(牡)
- 父サッカーボーイ
- マイル~中距離の追い込み馬。名前や脚質はもちろん父から。栗毛。
- ダークレジェンド(牡)
- 父オグリキャップ
- 父と同じく芦毛。脚質は差しが基本
- アウトオブアメリカ(牡)
- カマイタチ(牡)
- 父メジロパーマーなど
- 晩成の長距離型
- メイジガルダン(牡)
- クロスリング(牡)
- 父タマモクロス
- 晩成の中距離馬。芦毛。
- サンダーマウンテン(牡、牝)
- 短距離の追い込み馬。トロットサンダーあたりがモデルと思われる。
- ファーストサフィー(牝)
その他、タコチャンゾウサン、インデュライン、アイアンキング、アルシャインなど。 アルシャイン(サンデーサイレンス×ベガ)のように現実に同配合の競走馬が登場したため出てこなくなったものも多い。
[編集] 欠点
シリーズ最新作の7では、数箇所の欠点を指摘されている。代表的なものに
- 1984年から秋華賞、ヴィクトリアマイル、アイビスサマーダッシュなど当時は存在しなかったレースが開催されている。
- 1984年から新潟競馬場が左回り、直線コースが存在する。
などがある。
[編集] シリーズ作品一覧
[編集] パソコン、据え置き型ゲーム機
- ウイニングポスト・ウイニングポストEX
ウイニングポストシリーズの初代作。1993年1月にPC9801シリーズ対応のソフトが発売されたのを皮切りにSFC、メガCDなど複数の家庭用テレビゲーム機およびMicrosoft Windows、Macintosh対応のソフトが発売された。なお、3DO REAL、Macintosh版では実写映像が使用されており、1995年に発売されたマイナーチェンジ版のウイニングポストEX(PS、SS)にもその流れが受け継がれた。
ゲーム内容は、競走馬を生産するための牧場を所有し、最大5頭の繁殖牝馬を繋養することが可能。条件戦、およびオープン特別のレースは厩舎の所属するエリア(関東・関西)において行われるもののみに出走可能。海外レースは凱旋門賞のみで、一定以上の成績を収めた競走馬のみが出走可能。配合理論は単純で、基本的に強い馬同士を掛け合わせれば強い馬が生まれる。勝てば勝つほど能力が上がるというシステムだったため、能力が平凡な馬でも勝ち続ければSHに勝つことも可能であった。ただしEX版では新たに成長度の概念が導入されており、個体差はあるものの一定の時期を過ぎるとレースでの勝ち負けとは関係なく競走馬の競走能力が衰る。
- ウイニングポスト2シリーズ
ウイニングポスト2(SFC、PS、SS)、ウイニングポスト2 Plus(PC9801シリーズ、Microsoft Windows、Macintosh)、ウイニングポスト2 プログラム'96(SFC、PS、SS)、ウイニングポスト2 ファイナル'97(PS、SS)の4作品からなるシリーズ。
シリーズの中で唯一、プレイ可能年数が30年と限られている。毎年シナリオスーパーホース(SSH)と呼ばれるスーパーホースが牡馬牝馬3頭ずつ計6頭登場し、所有馬のライバルとして立ちはだかる。SSHの名前は公募で決められ、またゲーム中でデビューする新人騎手の氏名は公募応募者の氏名からつけられた。それらの騎手名の中は以降のシリーズでも引き続き使用されているものが多い。SSHの競走馬名にはそれぞれ由来があり、ゲーム中でそれを聞くことが可能。シリーズの中では異色作だが、SSHの存在や濃密な人間関係が魅力で、今でも高い評価を受けている。初めて地方競馬のレースへの出走が可能となり、出走できる海外レースも増えた。生産面では、ニックスやインブリードなどの概念は存在するものの複雑な配合理論は存在せず、優秀な馬同士を掛け合わせればよい点は前作と大きく変わらない。
なお、ファイナル'97では一部の騎手が実名で登場し、この試みは以後のシリーズ作品でも踏襲された。また同作ではゲーム開始時に4人の新人騎手から一人を専属騎手として選び育てるという要素が追加され、特殊アイテムを所持することによって競走馬の能力を補正することも可能となった。さらに同作では30年間複数のプレイヤーがペーパーオーナーゲーム(POG)を行うPOGモードが存在した。
- ウイニングポスト3シリーズ
1997年にMicrosoft Windows版、Macintosh版が発売され、翌1998年にPS版、SS版が発売された。この、まずPC版が発売されそれが家庭用ゲーム機に移植されるという流れは以後のシリーズ作品でも踏襲された。このシリーズにおけるプレイ目標は、任意の種牡馬1頭の系統を確立させることにある。なお、PS、SSではマイナーチェンジ版のウイニングポスト3プログラム'98も発売されている。
このシリーズよりニックスの概念が本格的に導入され、零細血統・流行血統の概念が新たに設けられるなど配合理論が大幅に充実した。競走馬生産において両親の能力が占める重要度は減少し、産駒の能力をアップさせるための配合理論をより多く成立させることが重要となった。また、出走可能な地方競馬のレースが大幅に増加した。なお、前作までは一定条件を満たさねば自分の牧場を持てなかったが、この作品以降、ゲーム開始時から既にプレイヤーは牧場を所有するようになった。
- ウイニングポスト4シリーズ
出走可能な海外の重賞レースが大幅に増加し、海外幼駒のセリに参加できるようになった。配合においては海外に繋養されている種牡馬と自ら所有する繁殖牝馬との交配が可能となり、配合理論においては血脈活性化配合の概念が初登場。さらにサヨナラ配合や稲妻配合など、特殊な条件を満たすことで発動する配合理論が初めて登場した。産駒の活躍など一定の条件を満たした種牡馬は新たな系統を成立させることが可能で、このシステムは以後のシリーズ作品でも踏襲された。
家庭用ゲーム機ではPS版が発売され、マイナーチェンジ版の「プログラム2000」PSとDCで、「マキシマム」および「マキシマム2001」がPS2で発売された。また、PS版のプログラム2000はポケットステーションに対応しており、同機を用いてミニゲーム(ウイニングジャンパー)をプレイすることができた。
- ウイニングポスト5シリーズ
配合面では「因子」が初登場。また、配合理論が重視された前2作の傾向が修正され、産駒の能力は両親の能力に大きく影響されるが、配合理論によって能力を上昇させることができるというシステムが採用された。このシリーズより自分の牧場が拡張していく様子を視覚で楽しめるようになった。
- ウイニングポスト6シリーズ
海外(欧州およびアメリカ)に牧場を開設し、それらの牧場と日本の牧場との間で繁殖牝馬を移動させることが可能となった。
- ウイニングポスト7シリーズ
1984年にゲームが開始し、以降20年あまりの間は史実馬との対決を行う。史実馬を所有することも可能。 生産面では一定の条件を満たすとことで特定の種牡馬の(子)系統を親系統に昇格させることが可能となった。
[編集] ジーワンジョッキーシリーズとの対応
4マキシマム以降のシリーズ作品はジーワンジョッキーシリーズとの互換性がある。具体的には前者のシリーズで生産した競走馬を後者のシリーズに、後者のシリーズで育成した騎手を前者のシリーズに登場させることが可能である。
[編集] 携帯型ゲーム機
- ウイニングポストforゲームボーイアドバンス(ゲームボーイアドバンス)
2001年発売。登場人物、グラフィックは4シリーズのものを使用。2シリーズ同様SSHが登場するがプレイ年数に制限はない。低年齢層向けのソフトで難易度は低く設定されている。
- ウイニングポスト6 2006(PSP)
2006年8月発売。6シリーズの移植版。
[編集] ウイニングポスト通信
1999年8月創刊の雑誌。ウイニングポストシリーズをはじめとするコーエー発売の競馬ゲームの攻略記事や、騎手へのインタビューなど競馬関連記事を掲載。以後2001年3月まで不定期に計9号が発行された。
[編集] 関連項目
- 競馬
- 育成シミュレーションゲーム 生物等を育成する過程をシミュレーションするコンピュータゲーム
- ダービースタリオン アスキー発売の競馬シミュレーション
- タケカワユキヒデ 作曲家