薬害
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薬害(やくがい)とは、医薬品の使用による健康被害が社会問題となるまでに拡大したものを指す。 副作用のなかで危険なものが見過ごされていて死傷者が多発した場合のほか、重大な薬物相互作用(飲み合わせ)、ウイルスなど感染源の混入などによるものがこれまで知られている。
日本では薬害発生を防ぐ目的で薬事法が実施されている。これは医薬品の他、医療機器全般を規制対象としたものである。 ただし、一部の健康食品など薬事法の規制対象外の商品が薬害を引き起こしている事例も多く、問題となっている。
医薬品については、開発段階での臨床治験に基づいて危険性を報告し使用上の注意とするが、この段階で発見されなかった危険性が薬害の原因となりうるほか、死亡例があったことがあとになってから発表されることがあるなど構造的な問題も含んでいる。 健康食品については、臨床治験制度さえないためその危険性はまったく把握されていないという状況にある。
[編集] 代表的な薬害事件
- サリドマイド
- 睡眠薬、つわりの治療薬。強い催奇性のため世界中で多数の奇形児を生み出し薬害史上有数の悲劇となった。
- キノホルム
- 整腸剤。服用者に脊髄炎・末梢神経障害のため下肢対麻痺に陥る例(スモン)が多発した。
- クロロキン
- 抗マラリア薬。長期服用により視野が狭くなるクロロキン網膜症になる。マラリア以外にリウマチや腎炎に対する効能が追加された為に被害を拡大した。
- ソリブジン
- ヘルペスウイルス属に有効な抗ウイルス薬。フルオロウラシル系抗癌剤の代謝を抑制し、骨髄抑制などの重篤な副作用を増強した。
- 薬害エイズ
- 血友病の治療に用いる血液製剤がウイルスで汚染されている恐れがあるという指摘が無視され、多くのHIV感染者を出した。
- 薬害CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)
- 悪性プリオンに汚染された硬膜が処理の不十分なままに脳外科手術に使用され感染者を出した。
- 小柴胡湯
- 肝臓の保護作用に使用されるが、インターフェロンとの併用で間質性肺炎が多発。死亡例を出した。
- スティーブンス・ジョンソン症候群
- 全身麻酔薬や抗生物質、解熱鎮痛剤、利尿剤、降圧剤、抗てんかん薬などを服用後、皮膚が焼け爛れ、失明するなどの激烈な症状が発生する。年間人口100万人あたり1人から6人が発症する。市販薬(大衆薬)が原因と疑われた例も5%ほどある。発症のメカニズムが不明のため対策が立てにくい。
- ワクチン禍
- 自治体により実施されたワクチンの予防接種(予防接種法(昭和31年改正前)の規定または国の行政指導に基づく)により、副作用が発症し、それにより障害または死亡するに至った事件。予防接種の種類は、インフルエンザワクチン、百日咳・ジフテリア二種混合ワクチン、百日咳・ジフテリア・破傷風三種混合ワクチン、種痘、日本脳炎ワクチン、ポリオ生ワクチン、百日咳ワクチン、腸チフス・パラチフスワクチン、等。
[編集] 関連項目
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