破傷風
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破傷風(はしょうふう、Tetanus)は、破傷風菌を病原体とする感染症のひとつ。
土壌中に棲息する嫌気性の破傷風菌(Clostridium tetani)が、傷口から体内に侵入することで感染を起こす。破傷風菌は破傷風毒素として、神経毒であるテタノスパスミンと溶血毒であるテタノリジンを産生する。テタノスパスミンは、脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し、重症の場合は全身の筋肉麻痺や強直性痙攣をひき起こす。一般的には、舌がもつれ会話の支障をきたすことから始まり、歩行障害、全身の痙攣と徐々に重篤な症状が現れる。感染から発症までの潜伏期間は3日~3週間。破傷風菌は、日本中の土壌中に存在している可能性がある。多くは自分で気づかない程度の小さな切り傷から感染している。
現在、予防用に不活化ワクチンが存在する。日本では小児定期接種の三種混合ワクチン(DPT)、二種混合ワクチン(DT)に含まれている。また検疫所では海外渡航者向けの有償予防接種を行っている。 治療として、破傷風菌に対する抗生物質の投与が行われれているが、破傷風毒素に対する中和抗体も実用段階に入っている。
本疾病はヒト以外にも感染する。有名なところでは、1951年に競走馬のトキノミノルが無傷の10連勝で東京優駿(日本ダービー)を制したわずか17日後に急死したケースがある。当時はヒト用の不活化ワクチンさえ国内には存在しない時代であり、現在は使用されているウマ用のワクチンも存在していなかった。