液体酸素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
沸点は、摂氏-183℃、凝固点は-219℃である。製鉄や医療現場の酸素源、ロケットの燃料として利用され、LOX(Liquid OXygen)、LO2のように略称される。ただし取扱には注意が必要。
液体酸素の密度は水よりやや重い1,140kg/立方メートルであり、淡い青色を呈する液体である。また液体酸素には磁気的性質が存在し、強い磁石(強い磁場)に引き寄せられる。断熱膨張(ジュール=トムソン効果)により液化した空気から分留される。液体窒素の沸点(77K)は酸素(90K)より低いため、液体空気から酸素を容易に濃縮できる。液体酸素は強い酸化作用を持ち、接触した有機物を速やかに酸化する。このため液体水素、ケロシン、等と組み合わせてロケットエンジンの推進剤として用いられている。
液体酸素の主な用途は以下の通り。
- 医療現場での酸素源
- 製鉄現場での酸素源
- ロケットの酸化剤
- 燃焼に必要な酸素を生のままで使用する事で効率よくロケットを運用できる。液体酸素を用いた初期のロケットには以下のものがある。
- V2/A4
- R-7
- 旧ソ連が開発し、配備した世界最初の大陸間弾道弾(ICBM)であるR-7(SS-6 Sapwood)は、燃料としてケロシンと液体酸素を用いたRD-108エンジンとRD-107ストラップオンブースターを備えていた。R-7は人工衛星打ち上げロケットボストークに転用され、歴史に残る輝かしい業績を上げた。その後改良を加えつつ現在もソユーズのエンジンとして運用されている。
- レッドストーン
- SSM-A-14レッドストーンは、フォン・ブラウンがアメリカで最初に作り上げたロケットで、米軍に最初に配備された弾道ミサイルとなった。A4の流れを汲むA-7エンジンは燃料として水・エタノール混合物と液体酸素を用いた。
- アトラス
- アメリカで最初に配備されたICBMであるMGM-16アトラス は、燃料としてケロシンと液体酸素を用いるXLR-105-5エンジンに二本のLR-101-NA7ブースターエンジンが取り付けられていた。