日産・180SX
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180SX(ワンエイティエスエックス)とは、日産自動車が製造していたクーペ型の乗用車である。S13型シルビアの姉妹車。
日本では「SX」の部分は発音しない事が多く、通称は「ワンエイティ」である。
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[編集] 概要
180SXは、もともとはS13型シルビアの海外輸出型である北米向けの240SX、または欧州向けの200SXであり、スポーツ・スペシャリティであるZX、SX、NXのクーペラインナップの中核を成すモデルであった。これを日本仕様として逆輸入したのが、180SXである。
車両形状としては、ヘッドランプにリトラクタブルヘッドライトを採用、スタイルはハッチバックを持つファーストバックとなっている。リトラクタブルヘッドライトの採用は、北米の法規上、S13型シルビアのヘッドランプの高さでは認証が取れないため、S12型シルビア同様リトラクタブルヘッドライトの採用となった。
同型車であるS13型シルビアは日本国内専用のモデルであり、ヘッドランプを固定とし、R32 スカイライン同様の日本人好みのCピラー形状を持つノッチバック・クーペのみとするなど、180SXとの差別化が図られていた。日本国内へはS13型シルビアより1年遅れで投入されており、トヨタ・セリカに比べ、販売数が伸びなかったガゼール後のテコ入れとして、営業側からハッチバック・クーペ投入の要請を受け、販売に至った。
なお、240SXおよび200SXには、180SXと同様のハッチバック・クーペ以外にS13型シルビアと同様ノッチバック・クーペのボディ形状も存在している。
エンジンやトランスミッション、サスペンションなどの車としての基本構造は、全てS13型シルビアと共通である。その他、車体周りでは、ステアリングホイールのデザインを除くインテリアと、ドアパネル、フロント ウインドシールドなども共通となっている。
そのスタイリッシュな外観は販売当時には各国で絶賛され、現在でもそのスタイリングは、見劣りする事はない。シルビアがS14型にフルモデルチェンジした後も、180SXはRPS14などとならず、一世代古いS13型のまま販売され続けた。それにも関わらず、S14型シルビアの低迷もあって、高い人気を維持していた。しかし、クーペ市場の崩壊(それまで市場を支えていた、地方での軽とミニバンへの移行が原因)による販売台数の低下は避けられず、生産工場も九州から日産車体へ移管され、最後はZ32コンバーティブルと同様、ラインに乗せられず、ほぼ手作りであった。
180SXが販売されていた期間はおよそ10年間だが、その間に数度のマイナーチェンジは受けたものの、前述の通りフルモデルチェンジをすることはなく、基本的なスタイル・性能はほとんど変化しなかった。これは、その10年間中に日産自身が「火の車」となってしまい、人材と開発費の不足が避けられなくなってしまったのが1つの要因と言われている。
軽量コンパクトな5ナンバーボディで後輪駆動方式(FR)をとる近年貴重な車でもあり、車重などのバランスも良く、若者向けのスポーツカーとして生産が終了した現在もなお、ポピュラーな存在となっている。
[編集] 歴史
[編集] 初期型(RS13型、1989年-1991年)
日本では1989年にガゼールの後継車種として販売が開始されたが、すでに米国では2400ccのKA24E型SOHCエンジンを搭載し、「240SX」(トゥー・フォーティー・エスエックス)として販売されていた。また欧州では、日本仕様と同じ1800ccのCA18DET型DOHCターボエンジン(175ps)を搭載し、「200SX」(トゥー・ハンドレット・エスエックス)として販売されていた。
初期型の特徴としては、日産の翼形グリルをイメージしたダミーのグリルがフロントバンパーにあること、前席シートがヘッドレスト一体型なことである。グレードは「TYPE I」と「TYPE II」で、「TYPE I」はスピーカーや電動ドアガラスが付かないなど競技用のベース車用途を対象にしていた。なお、HICAS-IIと呼ばれる四輪操舵システムをメーカーオプションで用意していた。タイヤサイズは、前後とも195/60R15となっている。
1990年には台数限定の特別仕様車「TYPE II レザーセレクション」を発売。シートが全て革張りで、本革ステアリング、シフトノブ、エアロパーツ、フッ素コーティング塗装、スカイラインやローレルなどで使われているアルミホイールが付いた。
[編集] 中期型(RPS13型、1991年-1996年)
1991年にはマイナー・チェンジにより、エンジンを従来のCA18DET型からSR20DET型2000ccDOHCターボエンジン(205ps)に変更。なお、S13型シルビアも同時期にエンジンがCA18DET型からSR20DETへ変更されている。
このときフロントバンパーのデザインが大きく代わり、ダミーのグリルが廃止されボンネットとバンパーの段差が無くなった。見かけが違うため、初期の1800ccエンジン搭載車を「RS13型」または初期型、2000ccエンジン搭載車を「RPS13型」または中期型と区別することも多い。
タイヤサイズは205/60R15にワイド化されており、同時にアルミホイールのデザインも変更されている。また、四輪操舵システムはSUPER HICASに進化している。その他安全装備の強化として、後席シートベルトの3点化、サイドドアビームの追加、燃料系へのロールオーバーバルブの追加、ヒーター付ドアミラーの設定(寒冷地仕様車)が実施されている。フロントシートは、一般的なヘッドレスト分割式に変更されている。
1992年に、標準装備が充実した新グレード「TYPE III」が追加される。新型のデジタル表示式オートエアコンは、TYPE IIIのみに標準装備となっていた。
1993年にシルビアがS14型にフルモデルチェンジを行ったが、180SXはそのまま販売が継続された。なお、欧州版200SXはS14型に切り替わっている。
1994年にはグレード名が変更され、「TYPE III」は「TYPE X」に、「TYPE II」は「TYPE R」となり、「TYPE I」は廃止された。エンジンのロッカーカバーの塗色は赤色から黒色に変更となった。また、エアコンの冷媒がR134aに変更されている。同年4月以降は生産は高田工業に委託された。
1995年には運転席SRSエアバッグが標準装備となったほか、アルミホイールのデザインが変更されている。また、ドアミラーがボディ同色に塗装されている。オーディオは一新され、「TYPE X」用のオーディオはCD付きとなった。
この中期型は、ほぼ5年間基本的な仕様を変更していないため、もっともよく見かけるタイプとなった。
[編集] 後期型(RPS13型、1996年-1998年)
1996年にビッグマイナーチェンジを行い、後期型となる。フロントバンパー、スカイライン風の丸型リアコンビネーションランプ、大型リアウイング、リアブレーキの容量アップ、ABSの標準装備化、アルミホイールのデザイン変更、リモコンドアロックの採用(TYPE Xのみ)、一部内装の変更などの仕様変更がされる。また、SR20DE型2000cc自然吸気(NA)エンジンを搭載したグレード(TYPE S)も設定された。
また、1997年には「TYPE S」を元に装備充実を図ったグレード(TYPE G)も追加され、ボディカラーにイエローが新設された(スーパーレッドは廃止)。
純粋な後期型は他の型に比べ数が少ない傾向にあり、また中期型以前に後期型のパーツを装着して後期型に見せかけた車両も多く存在することから、ある種希少な型となっている。
[編集] 車名の由来
「180」はCA18型エンジンの排気量である180センチリットル(1.8リットル・1800cc)を表し、「SX」は輸出用のスポーティークーペに対するネーミングである。なお、1991年のマイナーチェンジ時にSR20型エンジンに変更され、排気量は2000ccとなったが、車名は「200SX」とはならずに「180SX」のまま販売を続けられた。
同様の理由から、北米の240SXはKA24型エンジンの排気量から来ており、また他車種ではあるが、Z32型フェアレディZは、国内モデルのテールエンドに「300ZX」の表記が見られた。
なお、欧州仕様車の200SXにはCA18型エンジンが搭載されているが、「200SX」の車名で販売されている。
[編集] CM
CMソングはヴァニラ・ファッジの「キープ・ミー・ハンギング・オン」を起用していた。
[編集] 取扱販売店
プリンス店系列、チェリー店系列(現在のレッドステージ)で販売されていた。
[編集] シルエイティについて
詳しくは、日産・シルエイティを参照のこと。