リトラクタブル・ヘッドライト
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リトラクタブル・ヘッドライト (retractable headlights) は、車体内部に格納できる方式のヘッドライトである(retractable―収納可能)。主として自動車に用いられる。
通常のヘッドライトは自動車の前部に固定して据え付けられている。これに対し、リトラクタブル・ヘッドライトは、消灯時はボンネット内部に埋没しており、点灯時のみ外部に展開される構造となっている。格納時は空気抵抗の減少に繋がるため、一種のエアロパーツと言う事もできる。
リトラクタブル・ヘッドランプ、可倒式前照灯とも、また自動車愛好家の間では、リトラクタブル、リトラとも略される。
格納式(可動式)ヘッドライトの一種にポップアップ式ヘッドランプがある。
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[編集] 考案された背景
自動車の車体前部の高さを下げることは、空気抵抗の減少につながるが、前頭部に装備するヘッドライトの最低地上高には安全上の理由から規制があり、あまり低い位置には置けない。またヘッドライトの存在はスタイリングの自由度を制約し、カーデザイナーは古くからヘッドライトの取り扱いに苦慮してきた歴史もある。これらの課題を両立させるため、「必要な時だけ(法規制を満たす高い位置に)露出するヘッドライト」として着想されたものである。
[編集] 形態
ヘッドライトユニットの前縁を持ち上げるタイプが多いが、一部にはユニット自体を反転させるタイプ(オペル・1900GT、4代目シボレー・コルベット)や、ヘッドライトを上向きに配置してユニット前方を支点にして立ち上げるタイプ(ランボルギーニ・ミウラ、ポルシェ928、3代目トヨタ・セリカ)などがある。
また、ヘッドランプの半分または四分の一だけを覆うカバーのみを開閉するタイプ(ランボルギーニ・ハラマ、初代いすゞ・ピアッツァ、ホンダ・バラードスポーツCR-X)や、格納時にも前照が可能なセミ・リトラクタブル・ヘッドライトと呼ばれるタイプもある。
さらに、ヘッドライトを覆うカバーを移動させるタイプ(ジャガー・XJ220など)もあるが、これらをもリトラクタブル・ヘッドライトと呼ぶのが適切かどうかは疑問符が付く。
エンジンルームの通気性を良くし、過熱を防ぐために、意図的に半閉の収納状態になるように改造することもある。
開閉の動力は、初期にはエンジンのバキュームを利用したものやワイヤーによる手動式もあったが、のちには電動式が一般的となった。
[編集] 歴史
非常に古い採用例では、アメリカのコード社が1937年から少量生産した前輪駆動の高級車コード810・812がある。これはゴードン・ビューリングのデザインによるもので、独立フェンダー頂部にヘッドライトを収納できたが、空力よりもスタイリングの見地から導入された手法であった。
本格的に盛んとなったのは1960年代以降で、1963年のロータス・エランなどが初期の例である。日本では1967年のトヨタ・2000GTが最初の採用例であった。
日本では1970年代後期以降、スーパーカーブームをきっかけとして一般に広く認知され、マツダ・サバンナRX-7をはじめとするスポーツカーに採用されたため、当時はスポーツカーを象徴する代表的なパーツと見られるようになり、自動車愛好家の羨望の的となった時期もあった。また、男児向けの自転車にも採用され、多くは手動であった。1980年代に入るとホンダ・アコードなどをはじめとするセダン形やハッチバック形乗用車にまで採用され、一時的なブームともいえる状態となった。スーパーカーブーム時代の少年たちが成人したのちに「憧れ」を実現しようとしたことが影響しているとも指摘されている。
しかしながら今日では、次のような理由から、採用する車種が全世界的に著しく減少している。
- 開閉機構が複雑で部品点数が増加し、コスト面と信頼性で不利。
- 開閉機構を装備することによる重量増は、軽量化が要求されるスポーツカーでは好ましくない。特にフロントオーバーハング部の重量増は車両の回頭性が悪化するため、スポーツ走行には向かない。
- 突出したライトは、対人事故の際、対象に重度の傷害を与える恐れがある。
- 展開時、空気抵抗が増大する。
- 一部の国や地域ではヘッドライトの走行時終日点灯を義務づけるようになっている(アメリカ・ハワイ州のレンタカーなど)。そのような場合は走行中にライトを格納していることがないため、装備する意味がほとんどない。
- 北米におけるライト最低地上高規制の緩和。
- プロジェクターライト、HIDライトなどの実用化によりライトの小型化が実現し、デザインを阻害することがあまり無くなった。
- 展開部分が展開時に前方視界の妨げになる。
- 事故時にライトが作動しなくなる(展開しなくなる)恐れがある。
- 寒冷地では凍結により作動しなくなる(展開しなくなる)恐れがある。
そして、2005年2月11日、シボレー・コルベットのフルモデルチェンジを最後にリトラクタブル・ヘッドライトは消滅した。
[編集] 車名
[編集] 自動車以外での使用例
- スズキの3代目GSX750S(俗に言う「3型カタナ」)は数少ない二輪車への採用例。