自然吸気
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自然吸気(しぜんきゅうき)とは、エンジンにおいてターボチャージャーやスーパーチャージャーなどの過給器を使わず大気圧でシリンダー内に吸気するシステムのこと。NA(えぬえー:Natural Aspiration、またはNormal Aspirationの略)[1]と呼ばれることもある。なお、このようなエンジンを自然吸気エンジンと言う。
一般に自然吸気エンジンは過給器付エンジンに比べ構造がシンプルかつ軽量である。また、空気の流入量が少ない為に燃費が良く、低排出ガス化の面でも優れる。その他、エンジンの発熱量も比較的低いといった利点がある。特に低燃費や低排出ガスなどの面により、現在においては主流のエンジンとなっている。
スポーツカー用として車両に搭載された場合、運転者によるスロットル操作に対する反応が過給器付きのエンジンに対して俊敏かつ素直である事や、エンジン音が一般に過給器付きよりも甲高く聞こえる[2]事から、カーマニアの中には自然吸気エンジンを非常に好む者も多い[3]。
反面、同じ排気量の過給器付きエンジンよりも空気の流入量の少なさから全体的に非力であり、出力アップのための方法は安価で済むものがあまり無く、またその方法も限られる事が多い。手軽にはパワーアップを見込めないエンジンと言え、パワー志向の者にはあまり好かれない傾向にある。このため、同一モデルの車に過給器付きエンジンがある場合は、そのエンジンに載せ換えたり、アフターパーツとして過給器を追加[4]する事がある。
しかし、自然吸気エンジンの愛好家は、このような過給器の追加による出力アップの方法を邪道と見なす事があり、 メカチューンによって出力向上を図る手法を取る事が多い。 より簡単には、エアインテークをフロントバンパーやフロントグリルなどの開口部に出し、走行中に空気をエアインテークに押し込むようにすれば数%程度の出力アップは可能であるが、当然、燃費悪化を招く。
また、真夏の炎天下など気温が高いときには空気の密度が薄くなる=吸気体積あたりの酸素量が少なくなるため出力は数%程度低下し、逆に厳冬期など気温が低いときには空気の密度が濃くなる=吸気体積あたりの酸素量が多くなるため出力は数%程度増加する、という気温に依存して出力が変動する特徴がある(同様に高地で空気が薄い場所でも出力は低下することになる)。
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[編集] 自然吸気による実用的高出力エンジン
- 可変バルブタイミング機構(リフト機構)により出力(特に馬力)を上げる事が出来る。自動車メーカーでは積極的に採用している。代表的な物にホンダのVTEC(i-VTEC)やトヨタのVVT-i(VVTL-i)、日産のNeoVVL・三菱のMIVEC(派生モデルMIVEC-MD)などがある。
- 単純にエンジン排気量を上げるのも高出力に繋がる。既存エンジンの排気量アップに関しては、コンプレッションリング(オイルリング)の「張り」を強くする物に変える事で結果的に排気量アップになる。代表的なものとして日産のSR20エンジン(排気量2000cc)を2200cc、RB25エンジン(排気量2500cc)を2700ccにすることが出来る。
- シリンダーの直径を広げる・コンロッド変更によりストローク長を変え排気量を上げる。
[編集] 自然吸気エンジンによる高出力のデメリット
ほとんどが既存エンジンベースで高出力エンジンを作るという傾向がある為、一般車ベースで設計時点から高耐久性に長ける物を作らなければならない。その為製造コスト・殊に研究費が莫大にかかる。
[編集] 脚注
- ↑ 記述の際には「N/A」あるいは「N.A.」と書かれる事もある。
- ↑ 排気系統のレイアウトも関係する。
- ↑ 自然吸気で同一排気量にて出力向上を図る場合、一般的な方法としてエンジン回転数を高回転まで上げる手段をとることも、甲高いエンジン音の一因となっている。
- ↑ このような後付けによるものを、ターボチャージャーの場合は「ボルトオンターボ」または「ボルトオンターボチャージャー」、スーパーチャージャーの場合は「ボルトオンスーパーチャージャー」と言う。