慣習法
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慣習法(かんしゅうほう)とは、一定の範囲の人々の間で反復して行われるようになった行動様式である慣習のうち、法としての効力を有するものをいう。不文法の一つである。判例法を慣習法に含める考え方もある。
慣習がいつ(国内法としての)慣習法になるかについては、人々の「かくあらざるべからずとの意識」(opinio necessitatis) の支えによるとする立場と、国家が法として容認するときとする立場とがある。
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[編集] 日本法における慣習法
[編集] 一般原則
日本では、法例2条が慣習法の法的地位に関する一般原則を定めている。これによると、公序良俗に反しない慣習については、法令の規定により認められたもの及び法令に規定のない事項につき、法律と同一の効力(法源たる慣習法としての効力)が認められることになる。したがって、法令と慣習法との間に矛盾がある場合は、一般原則としては法令の規定が優先することになる。
[編集] 民法における慣習法
上記の法例2条とは別に、民法92条にも慣習の効力に関する定めがある。これによると、法律行為の当事者が任意法規(当事者がそれと異なる特約をした場合は、その特約の方が優先し、適用が排除される法規)と異なる慣習によると定めた場合は、慣習の方が優先して適用されることになる。本条に規定する「慣習」は慣習法ではなく、法規範性のない事実たる慣習と解するのが伝統的な考え方である。
以上の解釈によると、法例の規定では、慣習法は任意法規に劣る効力しか認めていないにもかかわらず、民法の規定では、事実たる慣習は任意法規に優先する効力が認められるという矛盾が生じる。そのため、法例の規定と民法の規定との関係について議論があり、法例にいう慣習と民法にいう慣習を区別するのは妥当ではないとする見解も強い。
それを前提に、両者の関係については、以下のような見解が主張されている。
- 法例2条は制定法一般に対する慣習の地位に関する規定であるのに対し、民法92条は私的自治が認められる分野に関する慣習の地位に関する規定であり、民法の規定は法例の規定の特則であるとする見解(「特別法は一般法に優先する」という法原則が働く)
- 法例2条にいう「法令ノ規定ニ依リテ認メタルモノ」の一つが民法92条であり、法律行為の解釈については、当事者が反対しない限り慣習が優先するとする見解
[編集] 商法における慣習法
商法の分野では、商法1条が商事に関する慣習法(商慣習法)の地位につき定めている。これによると、商法の規定が最優先するが、商法に規定がない場合は商慣習法が適用され、商慣習法がないときは民法が適用されることになる。つまり、商法に規定がない事項については、民法に該当する規定がある場合でも商慣習法が優先して適用される建前である。
このように、商慣習法は、民法との関係では優先する効力があり、商法との関係では劣後する。もっとも、商法の分野においては、経済事情の変遷のために商事の生活関係が著しい変化を余儀なくされることが多い。そのため、商法中の強行法規と解される規定であってもそれが事実上死文化し、商法の規定に優先する商慣習法の成立が認められた事例も判例上存在する。
このような事情もあり、商法1条の規定にかかわらず、商法中の任意法規に対する商慣習法の優先的効力を認める見解、さらには、明確かつ合理的な商慣習法が存在しそれが実際上適切である場合は、商法中の強行法規に対して商慣習法が優先するとする考え方もある。
[編集] 行政法における慣習法
行政法の分野においては「法律による行政の原理」が妥当するため、慣習法が成立する余地は著しく小さい。しかし、既に存在する行政法規に反しない慣習については、慣習法が成立する余地がないわけではなく、特に公物利用権に関しては地域的な慣習が慣習法として認められる例があるとされる。
[編集] 国際法における慣習法
国際法においては、慣習国際法は条約と並ぶ重要な法源の一つであり、実際、長い間不文法として法規範性を有していた。なお、国際司法裁判所規程38条1項bによると、国際法の法源として「法として認められた一般慣行の証拠としての国際慣習」(international custom, as evidence of a general practice accepted as law) を準則として適用するとされている。
慣習国際法が成立する要件としては、同様の実行が反復継続されることにより一般性を有するに至ること(一般慣行, consuetudo)と、国家その他の国際法の主体が当該実行を国際法上適合するものと認識し確信して行うこと(法的確信, opinio juris sive necessitatis)の二つが必要であると考えるのが一般的である。
もっとも、前者の要件については、いかなる範囲の国家によって、どの程度実行されていれば要件を満たすのかにつき問題となることが多く、後者の要件についても、関係機関の内面的な過程を探求することはほとんど不可能であるため、外面的な一般慣行から推論せざるを得ないことが多い。