呪物崇拝
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呪物崇拝 (じゅぶつすうはい、英語:Fetishism,フランス語:Fétichisme) とは、フェティッシュ(呪物または物神)に対する崇拝を意味し、呪術的宗教の一つの形態である。
崇拝の対象となるフェティッシュとは、超自然的な力を備えていると信じられる自然物(石とか植物の種子)で、とりわけ、人間が造った物品で、普通の製作品を凌駕する、圧倒的に大きな超自然的な力を備えるもののことである。フランス語のフェティシュ(fétiche)から来ているが、この語はポルトガル語の「フェイティソ(呪符・護符 feitiço )」から転用された語で、更に遡ると、「製作する」という意味のラテン語の動詞 facere から派生した形容詞 facticius、すなわち「人工の(もの)」が元々の語源にある。
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[編集] 歴史
このフェティッシュという概念は、1757年に、西アフリカの宗教と古代エジプトの宗教における魔術的位相を比較研究していた折に、シャルル・ド・ブロスによって造られたものである。ド・ブロスと18世紀の彼の同僚の学者たちは、この概念を、進化論を宗教に適用する目的で使った。宗教の進化に関する理論において、ド・ブロスは、呪物崇拝(フェティシズム)がもっとも初期の(もっとも原始的な)宗教の段階に当たり、これに続いて多神教と唯一神教の段階があるのであり、宗教における抽象化思考の進展を示していることを主張した。
19世紀においては、ハーバート・スペンサーなどの哲学者たちは、呪物崇拝が「原初宗教」であったとするド・ブロスの理論を否定した。同じ世紀において、E・B・タイラーやJ・F・マクレナンなどの人類学者や比較宗教学者たちが、呪物崇拝を説明するため、アニミズムやトーテミズムの理論を発展させた。
タイラーとマクレナンは、呪物崇拝の概念を通じて宗教歴史学者たちは、人間と神のあいだの関係から人間と物品のあいだの関係へと、関心を切り替えることが可能になったと考えた。彼らはまた、この概念によって、彼ら自身が歴史と社会学における中心問題として「誤謬」だと見なしていた、自然の出来事に関する因果的説明のモデルが確立されたとも考えた。
[編集] 儀式
理論的には、呪物崇拝はあらゆる宗教にあって存在するが、宗教の研究でのこの概念の用例は、伝統的な西アフリカの宗教的信仰や、そこから派生したヴードゥー教の研究から導出された。
血液はしばしば、もっとも魔力の強い呪物あるいは呪物の原料と見なされた。アフリカの幾つかの地域では、白人の髪の毛がまた魔力が強いと考えられていた。
[編集] 「フェティシズム」の他の用例
- 19世紀には、カール・マルクスが、資本主義における重要な要素としての物神崇拝を説明するため、この用語を流用した。
- 更に後に、ジークムント・フロイトが、生命のない物品や人間の特定の身体部位などを愛情の対象とする、ある種の性的倒錯の形態を説明するため、この概念を流用した。これは「性的フェティシズム」と呼ばれるが、今日の日常的な日本語では、フェティシズムというとき、性的フェティシズムを指すことが一般である。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- カトリック百科事典:呪物崇拝 [英文]
- en:Fetishism 14:39, 3 August 2006 の版より翻訳
- contributors: Slrubenstein, The Anome, Kierano, DanielCD, Ringbang et al.