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世界観

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世界観せかいかん)とは、世界についての統一的な見方・考え方のこと。人生観より広い範囲を包含する。日本の日常会話においては、仮想現実的な世界設定を意味することもある。

元来の意味における用法は近代哲学であるドイツ観念論においてイマヌエル・カントが『判断力批判』(1790年)の中で使用した用語「Weltanschauung」の訳語(独:Weltanschauung、英:worldview、仏:Weltanschauung、露:Мировоззрение)。したがって本項は最初に近代哲学における世界観を念頭におきつつ解説する。日常言語における世界観については後半部分で改めて述べる。

目次

[編集] 哲学的世界観の定義

哲学的な定義による世界観は、物事を「知ること」がそれ自体を「知ること」ではなく、物事の現象を通して側面的に「知ること」であるという考え方に基づいている。この現象を通して「知ること」とは人間の側に知識として物事そのものである物自体を提供せず、現象をとおして側面的に理解された「像」としての世界観を提供するにとどまるとされる。

世界観は次のような問いに答える。

  • 現実とは何か?
  • 世界の本性とは何か?
  • 人間とは何か?われわれはどんな人間像を持っているか?
  • 死後どうなるか?
  • 何かを知ることがなぜ可能なのか?
  • われわれは何を知っていて、何が正しく、何が真実で、何が誤っているのか?
  • 人間の歴史は何を意味するのか?
  • 神はいるか?
  • 人間は自由意志を持っているのか?

さらに世界観は、その現実をみることから導きだされる倫理的な価値観、そして認識論を含む。世界観の批判はもう一つの世界観によって行われる。したがって近代以降、哲学的な物事の理解には必然的に世界観が伴うとされ、現代においても哲学論争が主に世界観の対立という形でおこなわれている。

[編集] 哲学的世界観の成立過程

世界観は人間と絶対的他者である自然、社会を媒介するものである。自然、社会に対するあらゆる価値判断の根本概念であると考えられ、その意味において原子的存在である個人の意識と不可分の関係にある。以下このような世界観が哲学的に成立していく過程を記述する。

個人を世界に投げ出されたアトム的存在とみるならば、世界は個人にとって絶対的他者である。個人とおなじくアトム的存在である別の個人との関係性でさえ、世界と同じ絶対の他者的関係性をもつ。この意味でわれわれは常に他者との関係性という限りにおいて世界を評価することになる。世界が絶対的他者であるならば、われわれにとって世界との完全な同一化は不可能である。これは世界の理解に一定の限界を認めることであり、不可知論を伴う。世界観とはこのような不可知論的立場で最終的には解決されえない個人と世界との自他性を解決するために措定された、人間の意識レベルにおいての世界の何らかの投影像である。世界観がしばしば擬人化を含んでいることもこのためである。

世界観は個人にとって他者である世界の属性を持っているが、客観的存在としての世界とは異質であり、その意味において個人内に存在している。絶対的他者である世界の側から見れば、個人に従属している観念である。客観的存在である世界は普遍的に存在すると考えられるのに、世界観をめぐって論争や対立がおこるのはこのためである。

[編集] 近代哲学における世界観の成立

次に近代哲学史における歴史的な経緯について述べる。

18世紀に全盛を迎えた啓蒙主義は理性によって、万人が公平に認める世界の根本的な原理を考えることが可能であるとした。この考え方は、なにか絶対的な真理(たとえば宗教)によりかからずにわれわれ自身が自立して思考することができるということを保証した。啓蒙主義は自然科学的な成果に基づいたものであり、社会科学や哲学の分野でもこのような根本原理を理性によって明らかにすることは有意義であるとされた。このような理性万能主義の立場にたてば、理性そのものは普遍で不変であり万人に共通であるから誤りようがなく、われわれが何かについて異なる見解を持っているとすれば、それは認識の違いによるものであるという結論にゆきつく。啓蒙主義の主流がイギリス経験論であり、根本的に認識論の立場が重要視されたのも以上の理由による。

しかし、イギリス経験論はこの認識論を深めていった結果、観察者である個人が絶対的他者である世界をありのままに認識することが不可能であるということを認めざるを得なくなった。無限的存在である世界に対して個人はつねに有限的であるから、理性がたとえ無限の可能性を持っていたとしても、個人が有限である以上理性はある段階で時間的空間的に世界とは切り離されてしまうのである。常識的に言えば、われわれは江戸時代に生きることはできないし、いま日本にいるわれわれが同時にアメリカに存在することはできない。この限りにおいて個人と世界の間には永遠なる断絶が存在するのである。

啓蒙主義以前であればこのような問題は世界に対して絶対的な真理を主張する宗教によりかかることによって解決可能であったかもしれない。だが啓蒙主義はすでに宗教を科学の世界から追放してしまったのである。近代哲学がこの宗教に代わる代弁者としてもってきたのが世界観であったといえる。このような世界観は近代哲学に理性以上にラディカルな姿勢をもちこむ一方、世界観の対立という厄介な問題をもたらした。近代哲学は問題の所在を世界観に大きく依存してしまったために、世界観の対立がしばしば哲学の本質問題とされている。この意味で啓蒙主義における理性のような普遍的な価値を、近代以降の哲学は永遠に失ってしまった。

近代哲学のこのような傾向は当然副作用を伴った。倫理的・道徳的なあるいは人道的な立場による批判が世界観の相対性を理由に斥けられる一方、個人においては世界観への信頼から一部の現実認識や個人体験が思想的に強められしばしば絶対化された。これが極端な原理主義ファシズムなどのイデオロギーにたやすく転化するのである。しかし世界観はその存在目的として他者である世界との同一性を目指すものであるから、最終的には闘争的に他の世界観を淘汰してしまうか、妥協や合意によって異なる世界観との共存あるいは異なる世界観の取り込みを図るしかない。現在の主流な哲学思想は世界観の淘汰は不可能であり、共存すべきという多元主義(根本原理が等価値に複数存在しているという意味での多元論的世界観ではない)をおおむね認める傾向にある。

[編集] 哲学的世界観の諸相

ここでは代表的な世界観を適宜分類しながら概観し、その特質を明らかにする。

[編集] 原理次元における分類

歴史的には多元論的世界観が一元的世界観に先行すると考えられており、一般的に古代的なアニミズム多神教は多元論的世界観を持つとされている。

  • 一元論は、次項で述べる二元論の立場からより徹底したもので、二つの対立的な原理のうちの一方に他方を従属させる考え方である。歴史的にはデカルトの物心二元論を受けて、精神を否定して唯物論になるか、あるいは物質を否定して唯心論になるか、あるいは両者を媒介する現象的側面を重視してある種のダイナミズムをとる。
  • 二元論は、世界内に二つの対立的な原理を想定し、その間の闘争や予定調和を説くことによって世界の存在理由を設定する。宗教的にはゾロアスター教の二元論、哲学的にはデカルトの物心二元論が有名である。
  • 多元論は世界内に多くの原理を想定し、主に既定調和的・予定調和的な世界観を提供するものである。現代においては多文化共存主義など主流な社会理論・政治理論の一部はこの形態を取っている。

[編集] 原理の性格による分類

[編集] 唯物論

唯物論とは世界の根本的な原理は何らかの物質的性格を持つとする考え方。

  • 弁証法的唯物論 - それまでの唯物論が機械論的であったのとは対照的に弁証法的、そしてヘーゲルらの弁証法が観念論的であったのに対して唯物論的であるのがその特徴。1840年代マルクスが提唱、エンゲルスレーニンらが発展。物質的存在を世界の根本原理とし、その優位性を説く考え方。実際には社会的現実を下部構造とし、文化的精神的なものを上部構造と考えて、基本的に下部構造が上部構造を規定すると主張した。
  • 機械論的唯物論 - 形而上学的思考方法をとる非弁証法的な唯物論。弁証法的唯物論に相対する。ラ・メトリーの『人間機械論』が有名。コンディアック、ドルバックなどもこれに含まれる。

[編集] 観念論(唯心論)

世界の根本的な原理は何らかの精神的性格を持つとする考え方。 唯心論はしばしば観念論と同義とされるが、観念論は狭義においては独我論をさすこともある。

  • 狭義の観念論(⇔実念論) - 外界を一切否定し、純粋な観念そのものを根本原理とする考え方。独我論。バークリー、シュテルナーなどがこの立場に分類される。
  • 素朴実在論 - 外界は意識から独立に存在しており、なおかつ感覚知覚を通して意識的に近くされる現象は即ち外界であり、それは実在(現実)の忠実な模写、反映であると見做す立場。
  • 現象論(phenomenalism) - 物自体の認識を断念し、感覚知覚を通して体験された現象のみで満足するか、あるいは現象の背後(にあるであろう)物自体の存在を否定し、意識に与えられた事象(即ちここでは現象)のみに実在と認める立場。無論一元的。唯現象論。
  • 先見論(transcendentalism) - カントや、新カント派の批判主義哲学をこう呼ぶ。あらゆる感覚に先立つ根本原理を精神の側に存在すると主張する立場。また超感覚的認識を主張するエマーソンやヘーゲルもこれに含まれる。超越論。先験主義。

[編集] ダイナミズム的一元論

  • モナド論(monadology) - 物質原理と精神原理を統合した一つの原理としてモナドを主張する。ライプニッツが主張した。
  • 原子論(atomism) - 哲学的原子論は何らかのアトム的粒子を想定し、その離合集散によってあらゆる世界的事象が表現されるとした。デモクリトスなどが有名。
  • その他のダイナミズム(dynamism) - そのほかにも、世界の根本原理は可能力やある種の運動法則にあるとし、これが物質、運動、存在など全てを統括する唯一の原理であるという考え方は古来珍しいものではない。アリストテレスがとくに有名。

[編集] 方法論による分類

以上の原理の性格的側面による分類以外に、原理の研究態度による分類が可能である。

  • 経験論(帰納法) - 世界の根本原理は事象の分析的な研究によって経験的に把握することが出来るという考え方。おもに実験主義、科学主義の立場を取る。ベーコン、ロック、バークリーなどのイギリス経験論が代表的。
  • 合理論(演繹法) - 単純明快な基礎原理を設定し、そこから理論構築的に根本原理を把握することが出来るという考え方。数学的な理論主義、道徳主義な立場をとる。デカルト、ライプニッツ、ウォルフが有名。

[編集] 東洋思想における世界観

広大な東洋世界では、唯一神教に宗教・思想的に統一されていた西洋社会とは異なり、東洋思想においては一定の歴史的段階を持って変質していく世界観が提示されていることが多く、そのため原理自体が歴史的に流動的であるとされ、原理的に世界像を描き出すことはそれほど主要な哲学的問題とはされず、しばしば実用面が重視された。とはいえ東洋思想も独自の世界観をもっているため、それを記述する。

  • イスラーム哲学における世界観 - イスラーム哲学においてはクルアーン(いわゆるコーラン)に「真理は神の下し賜うところ」と明記されているため、それ自体を疑うものはまず存在しなかった。しかしギリシャ的な自由意志の問題がイスラームにはいってくると、アッラーフの真理表現をめぐって論争がおこなわれた。自由意志を保証する理性がアッラーフの本質であるとし、これを尊重するムアタズィラ派がアッバース朝時代最盛期を迎えるが、悟性による素朴な実感にアッラーフの真理を見出すガザーリーが出現するに及んで、哲学的な世界観論争には一応の決着をみた。彼以後のイスラーム哲学は神秘主義的傾向を強めていく。
  • 古代中国哲学における世界観 - 中国においては戦国時代諸子百家と呼ばれる多様な思想家を輩出し、さまざまな考え方を主張した。中国思想における論理学派として有名な名家は名辞の真理性を主張した。彼らによれば「白い馬」とは「白」と「馬」であり、「白」という観念と「馬」という観念こそ真理であるとする観念論を唱えた。このような名家の主張に対して、法家では実際的で物質的な「実」と「名」を一致させることが真理であると主張し、儒家は教化主義的立場から「実」に真理を求めた。また陰陽家は「陰」と「陽」の調和と対立による世界観を主張した。の時代皇帝支配が徹底され儒学が国教的な位置をしめるようになると儒教の実際主義がますます支配的となった。天変地異は実際の皇帝の施策と影響しあうということが信じられ、自然現象がしばしば政治的に論議された。しかし同時に儒教のこのような実際主義は陰陽思想法家的立場を実際面から尊重するものでもあり、名家のような名辞主義は早くに没落したが、儒教の知識人主義的な書誌尊重の風潮とともにこれらの思想も維持や儒教への吸収がされた。これは儒教思想が基本的には多神教の立場を取っていたことにもよる。また儒教はその復古主義的性格からだいたいにおいて歴史主義的な世界観を持っていた。
  • 理気二元論 - 北宋南宋代中国に流行した二元論的世界観。実際にはのほうに優位性を認めており、厳密な二元論ではない。そのため中国では一般的に理学(宋明理学)と呼びならわされている。南宋の朱熹(朱子)が有名。仏教道教の影響のもとに陰陽二元論から発達するかたちで成立した。陰陽二元論においては理(実在)はそのの陰陽の影響に基づくものであるから、基本的に気で哲学的問題は完結していた。しかし理気二元論は世界の絶対法則である理(実在)の筋道であるが気の陰陽を規定するという立場を主張した。しかしこの道とは理そのものに発しているものであるから、気を現象的に捉えるならば、理に本質を設定することになる。朱熹はこの立場を徹底し、を物質的実在そのものよりも上位の一種の法則的存在として設定したたため、理は実在そのものよりもむしろ観念的存在となり、観念論的傾向が強められた。
  • 理心二元論 - 代中国の王陽明が中心となって提唱した二元論的世界観。理を尊重する立場は朱子学と変わらないが、理に到達するためには主観的知覚である「心」を重視し、朱子学が知識優位で原理主義的であるのを批判して実践主義を唱えた。心と理との一致とはすわなち「知行合一」、行動と知識の一体性となって主張された。中国では前述の理学に対して心学と呼ばれるが、のちに独我論的立場を強め急進化し、政治的に弾圧された。

[編集] 神学的世界観

  • 一神教(monotheism) - イスラム教やユダヤ教のように、一つの神を認めてこれを信仰する宗教。一般によくある見解は、これを唯一の「神的存在」のみを認めるものとするものである。これは明らかな誤解である。その証拠に旧約聖書に於ける創造の神エロヒムは複数形であるし、イスラム教においても天使は信仰の対象となっている。一神教とは唯一の神(故に上では「一つの神」という表現を用いた)しか認めない宗教ではなく、飽くまで神の表象において一という概念が最も重要な意味を持つ(あるいは極めて密接に結びついている)場合を指す。
  • 多神教(polytheism) - 一神教とは違い複数の神々を同時に崇拝する宗教をさす。原始的諸宗教や古代の宗教の多くはこれに属する。自然現象を人格化したものや、人間生活の様々な局面を投影した独自の性格と形姿をもつ神々に対する信仰。
  • 汎神論(pantheism) - 神と世界を同一視する立場。一神教と多神教が物質原理と精神原理の二元的であるのに対して、これは極めて一元的である。いずれにせよ多神教よりもさらに多くの神を認める立場として理解してはならない。古代においてはウパニシャッドやソクラテス以前のギリシャ思想、近代に入るとスピノザ、ゲーテ、シェリングなどの思考にはこの立ち場が見られる。
  • 汎心論(panpsychism) - 全ての存在に心を認める立場。物質原理と精神的実体を統合したライプニッツのモナド論なども必然的にこれに含まれる。ホワイトヘッドの世界神化説もその一つの例として認めることが出来る。物活論。

[編集] その他の対立する世界観

運命論(fatalism)⇔決定論(determinism)

懐疑論(skepticism)⇔不可知論(agnosticism)

[編集] 日常的な用法としての世界観

俗に、歌舞伎や日本のコンピュータゲームアニメ漫画の業界などにおいてフィクション作品の世界設定または作品コンセプトの基層部分を「世界観」と呼ぶことがある。体系化された空想的表象の総和ということも出来よう。 現実世界に直接的な影響を及ぼそうというものではないため、哲学的には世界観という範疇には収められない。哲学的な世界観とは、上に述べた哲学的根本衝動を持つ者が現実を把握しようと努めるときに得るものであり、世界に対して規定的に働きかけるものだからである。とはいえ、現実世界とイコールではないにしても作品世界は現実世界の一面を表象していると考えられ、作品世界を通して間接的に現実世界を評価することは有意義である。

日常言語的な世界観には以下のような特徴的な性格をあげることが出来る。

  • 登場人物の設定、動作にある種の法則性を規定する
  • 作品内の用語(仮想言語も含む)やその用法を規定する
  • 作品内における舞台背景や時代背景、歴史にある種の法則性を規定する
  • ストーリー性に法則性を規定する(具体例としては水戸黄門では黄門様が事件解決に必ず印籠を使うことなど)
  • 上記以外の作品の世界設定全般を規定する

この意味における世界観は作品単体の世界設定にとどまらず、続編作品や派生作品などの二次作品の世界設定に継承され、またそれを保証するものである。同時に作者が設定した世界設定をこえて、その作品の読者や派生した作品すべてと世界設定を共有することができる。このような世界観を通して作品に関わるすべての人がその構築、発展に参加していくことができる。

[編集] 参考文献

  • ディルタイ著、山本英一訳『世界観の研究』岩波文庫、1935年
  • ハイデガー著、桑木務訳『存在と時間(上・中・下)』岩波文庫、1961年
  • 長尾龍一著『争う神々』信山社叢書、1998年、ISBN 4000108670
  • 長尾龍一著『古代中国思想ノート』信山社叢書、1999年、ISBN 4797251077
  • 東京大学中国哲学研究室編『中国思想史』東京大学出版会、1952年
  • 溝口雄三ら編『中国思想文化辞典』東京大学出版会、2001年
  • 井筒俊彦著『イスラーム思想史』中公文庫、1991年
  • 大塚英志著『キャラクター小説の作り方』講談社現代新書、2003年

[編集] 関連項目


執筆の途中です この「世界観」は、哲学に関連した書きかけ項目です。この記事を加筆・訂正して下さる協力者を求めています。(ウィキポータル 哲学
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