ミュージックシーケンサー
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ミュージックシーケンサー(Music Sequencer)とは、演奏データを再生することで自動演奏を行うことを目的とした装置、およびソフトウエアをいう。
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[編集] ハードウェアシーケンサーとソフトウェアシーケンサー
シーケンサーは歴史的にリレーやアナログ電子回路により周期的な機器制御信号を得る装置に付けられた名称である。ミュージックシーケンサもこの機構のものが先に登場し、認知されてきた。しかし、近年では主にDTMにおけるシーケンスソフト(ソフトウェアシーケンサー)を指してシーケンサー呼ぶことも多いため、従来からある専用機器はそれと区別してハードウェアシーケンサー(ハードシーケンサー)と呼ぶ場合もある。但し、今日のハードシーケンサーの内部機構はディジタル化され、ROM焼きされたソフトを動作させる単機能コンピュータとなっており、むしろ「ソフトウェアシーケンサー専用機」ともいえるものである。
[編集] シーケンサーとリズムボックス
また、電子的な自動演奏という分野ではシーケンサーと一緒に使われることが多いドラムマシン(リズムマシーン)、リズムボックスという装置も存在する。 こちらは内蔵されたリズム音源を使用して一定のパターンを繰り返して演奏することが主な目的であり、パーカッション専用の音源内蔵型ハードウェアシーケンサーと定義することも出来るが、用途が限定され、歴史的にも独自に発展してきたため、現場でこれをシーケンサーと呼ぶことはない。
[編集] シーケンサーの機能
現代のシーケンサーの主な機能は、デジタル楽器の演奏データを「記録」「再生」することにある。演奏データの記録様式が規格化された今日では、再生専用機も存在する。 データ記録方法には演奏者がシンセサイザーなどのデジタル楽器を弾きながらその演奏データを記録していくリアルタイムレコーディングと、制御情報(音符)をひとつひとつ手打ちで入力していくステップレコーディングがあり、特にステップレコーディングは一般的に打ち込みと呼ばれる。これらの記録したデータは、シーケンサーからシンセサイザーや音源モジュールにデータメッセージを送信することによって演奏が「再生」される。また、記録データは演奏速度の変更や移調、失敗した演奏の修正といったことも容易に行うことができ、ここがサウンドレコーダーで演奏を実際に録音した場合と大きく異なる点であり、シーケンサーの利点ともいえる。
MIDIシーケンサーにおいて、演奏データは基本的に以下のように管理される。
- ノート番号
- 0~127の値で表す音階。MIDIの規格では中央のド(C3)は60(16進数では3C)である。
- ステップタイム
- 鍵盤が最初に押されたタイミングを示す値。
- ゲートタイム
- 鍵盤が最初に押されてから離されるまでの時間(発音時間)を表す値。
- ベロシティ
- 鍵盤を弾いた時の強さを表す値。
- クロック(分解能)
- ステップタイムおよびゲートタイムの基準となる、四分音符を何等分できるかを表す値。3連符を考慮し、3と4の公倍数が使用される。初期のシーケンサーで24、近年のシーケンサーでは480や960などがある。
- テンポ
- 演奏の再生速度を決定する。4分音符を1拍とし、1分間にいくつ刻むかで表す。1秒で2拍のタイミングであればテンポは120ということになる。BPM(ビーピーエム、Beats Per Minute)も同じ意味として使われることがある。
- その他のデータ
- コントロールチェンジ、ピッチベンド、ポルタメントやアフタータッチなど、より細やかな表現が可能な制御データが存在する。
[編集] 自動演奏の歴史とシーケンサー
音楽の自動演奏は14世紀に教会などでカリヨンが使われて以来、演奏情報を符号として記録して再生しようという発想は古くから存在した(エジソンによる蓄音機の発明以前は人間が弾いた楽器の音そのものを録音するという発想自体が存在しない)。 オルゴールの発明は18世紀末であるが、本物の楽器の自動演奏装置と呼べるものに1890年代に作られた自動ピアノが挙げられる。これはピアニストの演奏による鍵盤の動きを、鍵盤機構に穿孔装置をくみこむことで長いロール紙(ピアノロール)に記録し、逆にロール紙の孔によって鍵盤を動かすことの出来る仕掛けで、鍵盤の細やかなタッチまで再現することができた。このように楽器の動作を記録再生する機構を、電子楽器を制御する電子情報として取り扱うのが、今日のデジタルミュージックシーケンサーといえる。
実際にピアノロールは演奏用データへの変換も不可能ではなく、ラフマニノフが演奏したピアノロールを特殊な光学スキャナーにかけMIDIデータに変換し、ベーゼンドルファー製自動ピアノで演奏~録音~CD化された例も有る。
[編集] ミュージックシンセサイザーの登場とアナログシーケンサー
1960年代にアメリカのロバート・モーグによってミュージックシンセサイザーが電圧制御を基本とするモジュールとしてシステム化され、そのモジュールの一つとしてアナログシーケンサーが登場した。以降、モジュラー型シンセサイザーのオプションとして各社から発売された。
アナログシーケンサーはステップ状の電圧発生器である。パネル面に並んだボリューム(1列当たり8~16個)によってVCOに与えるCV(音程制御用の電圧)をあらかじめ設定し、任意のステップ数を一定のリズムで走査することでボリュームで設定したCVと発音タイミングのゲート信号を出力させた。これにより反復されるアルペッジョのパターンであったりリズムパターンであったりといったフレーズを反復自動演奏させる事が可能となった。
大体のアナログシーケンサーはプリセット列として2~3列を備えており、演奏中に切り替えることで異なるパターンを演奏できた。またステップ数を演奏中に切り替えることでフレーズにバリエーションを持たせることもできる。移調はVCOに対して鍵盤からのCVを加算するなどの方法でおこなう。
アナログシーケンサーの出力は規格化された制御電圧であるため、音程の制御以外にもたとえばVCFによる音色変化であるとか、VCOでは発生できない超低周波の波形発生などにも応用された。超低周波の発生は冨田勲が利用していたとインタビュー記事などで記載されている。
一部の可搬型シンセサイザーにもアナログシーケンサーが組み込まれるようになったが、コストの面から一般的にはならなかった。
[編集] デジタルシーケンサーの登場
半導体技術の進歩により、演奏情報を符号化して半導体メモリーに記録、再生する装置が考案された。これがデジタルシーケンサーである。演奏情報を符号化することにより数値入力が可能になった。
デジタルシーケンサーには大きく分けて2種類の入力方法があった。一つはシンセサイザーの鍵盤からCV/GATE信号をもらってシーケンサー内部でAD変換してメモリーに記録し、再生時には読み出してDA変換してCV/GATE信号を出力する物。ローランドのCSQシリーズなどがこれにあたる。もう1種類はMC-8/4のようにシーケンサー本体に搭載されたテンキーによる数値入力である。これは数値情報を直接メモリーに記録し、再生時にDA変換された。
デジタルシーケンサーの最初の製品は1974年にオーバーハイム社の設立者であるトムオーバーハイムによって世に送り出されたDS-2である。アナログシンセサイザーとCV/GATEにより接続し、72イベントの記憶容量を持つ現在からすると極小規模な(それでもアナログシーケンサーよりは若干多い)モデルであった。このシーケンサーがクレジットされた作品は1974年発売のJerry Goodman & Jan HammerによるLike Childrenがあげられる。
そして1977年にローランド社のマイクロコンポーザーMC-8が本格的なコンピュータ制御によるシーケンサーとして登場した。ゲートタイムやとステップタイムという概念が生まれたのもこのMC-8からといわれる。当時大卒の初任給が10万程度の時代にMC-8は販売価格120万円という極めて高価な代物であったが、この誕生によって音楽界は爆発的にデジタル化が進むこととなった。
MC-8の仕様は以下の点で画期的であった。
- 標準搭載のメモリー容量で5400音というアナログシーケンサーでは実現不可能な大記憶容量を実現した。
- 8系統のCV/GATE出力を持ち、独立したパートの演奏が可能になった。
- 外部にデータレコーダを接続することでデータを記録、保存できるようになったこと。これにより演奏情報のライブラリ化が可能になった。
- テープレコーダーに同期信号を記録することで、テープレコーダーとの同期演奏が可能になった。ただし曲中からの同期はMIDIの登場を待つ必要があった。
- 正確なテンポコントロール。CMなどのように15秒、30秒といった長さが決まっている作品の制作効率が劇的に向上した。
日本ではYMOのサポートメンバー松武秀樹がシンセサイザー moog Ⅲ-cと共に使用したことでも知られ、デリケートな装置であるためライブ中に熱暴走することもしばしばだった、というエピソードも残っている。
同時期にポリフォニックシンセサイザーの発音制御にCPUが用いられるようになった事を受け、外部に対してデジタル信号の形での演奏情報のやりとりが模索されるようになる。Roland社はDCB規格を制定し、MIDI規格が登場するまでの短期間の間これを利用した。
[編集] MIDIの登場
1982年にMIDIが規格化されることによって、自動演奏は大幅な変革を遂げることとなった。
- 演奏情報の拡張
- ベロシティやピッチベンドの情報が定義され、より楽器のニュアンスが表現しやすくなった。
- 演奏情報に加えて音源の制御情報の定義。
- 音源の音色情報を演奏データと同じ次元で管理することが可能になった。
- チャンネルの概念
- MIDI端子の1出力あたり16チャンネルの独立したパートを割り当てて伝送可能になった。これにより異なるパートの演奏情報が一本のMIDIケーブルで音源に対して伝送可能となった。
- 自動演奏に関する情報の定義(ソングポジションポインター、クロック情報など)
- DINSyncでは曲中からの途中再生は不可能であったが、ソングポジションポインターを利用することで曲の途中からの再生がシーケンサー同士あるいはシーケンサー対リズムマシン、シーケンサー対マルチトラックレコーダー間で可能になった。初期においてはRoland社のSBX-80がSMPTEタイムコード(LTC)をテンポ情報を含むソングポジションポインターの変換機として用いられたが、後にMidiTimePeaceなどのMIDIインターフェース側でタイムコード入出力を持つようになり、スタジオにおける作業効率が格段に進化した。後にMidi規格の一部としてMIDIタイムコード(MTC)が制定される。
そして半導体技術の進化により処理速度の向上と高性能なカスタムICが相応の価格で制作できるようになると、ついに1台の音源で複数のパートを演奏可能なマルチティンバー音源が登場する。これによってデスクトップ上で各パートを再現できるようになり、自動演奏が現代音楽の一分野から音楽制作の日常的なツールへと変貌を遂げることになる。
[編集] ハードシーケンサーの盛衰とMIDIシーケンスソフトの台頭
1982年にMIDIが正式に規格化されると各社からさまざまなMIDI音源が登場し、MIDIシーケンサーによって異なるメーカーの複数の音源を同期して自動演奏することが可能になった。ハードウェアのシーケンサーではヤマハのQXシリーズやローランドのMC-500シリーズなどのMIDIシーケンサーが登場した。
本格的なMIDIシーケンスソフトは1980年代半ばに誕生した。Macintosh用のPerformer(後のDigital Performer)、Vision(後のStudioVision。現在は姿を消している)の2大シーケンサー(後にCubase、Logicが加わり4大シーケンサーと呼ばれる)、PC-9800シリーズ用のRCP-PC98(レコンポーザ)などが、プロユースで使われ始める。大画面とグラフィカルなユーザーインターフェースによる視認性のよさ、高い分解能と豊富な編集機能、機能的な制約が少なく膨大なデータ量を扱えることがソフトの利点である。
ただ当時はパソコンを使うという行為そのものの敷居が高く、その中でも扱い易いといわれたMacintoshは高価(音楽用システムは100万円超)だったため、個人市場においては価格や操作性、可搬性の面からハードシーケンサーが普及を見せた。また1980年代末からは音源、鍵盤、シーケンサー、エフェクターを一台に統合したミュージックワークステーション(オールインワン型シンセサイザー)が次々と発売されるようになり、それ一台で音楽制作を完結することも可能になった。
その一方で一般層(一般向けのパソコンは当時価格が30~40万円であったため、個人所有10%程度だった)にはまだMIDIという言葉自体があまり浸透しておらず、パソコンユーザーの間で「パソコンで音楽を楽しむ」といえば、もっぱら好きなゲーム音楽を耳コピーして内蔵されたFM音源とプログラミング言語(主にBASIC言語のMML)を駆使して演奏する、というのがスタンダードだった。
そんな中、一般にコンピューター音楽を広める火付け役となったのが1988年にローランド社から発売された「ミュージくん」である。これはMIDI音源ユニットのMT-32とPC98用音楽作成ソフトのセット品で、価格も98,000円とリーズナブルなものであった。当時すでにMSX向けのシーケンスソフトを発売していたヤマハもこれに追従することとなる。また1990年前後のバンドブームが個人向けの楽器市場を拡大し、これらの製品は音楽制作の入門用システムとして市場で一定の地位を占めるようになった。さらに異なる音源間での音色配列などを定めたGM規格が1991年に制定されたのをきっかけに安価なGM音源が数多く登場し、いわゆるデスクトップミュージック(DTM)の隆盛につながった。
1990年代以降、低価格のMacintoshの登場、Windows95登場以降のパソコンの普及でパソコンを使うという行為そのものの敷居が下がり、ソフトウェアシーケンサーは急速に普及し始めた。ソフトシーケンサーには先述した視認性のよさなどの利点があり、従来のハードシーケンサーにあった「機械の操作」の感覚を薄めたことも大きい。またDTMの普及によってコンピューター音楽のユーザーの裾野が広がっていたことも、ソフトシーケンサーの普及に大きな役割を果たした。
[編集] 音源内蔵シーケンサーの登場
1988年にヤマハから発売されたTQ5が元祖だと言えよう。EOS B200/YS200/YS100の音源部+シーケンサー部をユニット化したもので、ディスプレイで時間がわかるユニークな時計機能も搭載していた。この時期はまだFM音源が主流であり、TQ5もFM音源を搭載していた。TQ5の位置づけはあくまで音源モジュールであり、シーケンサーは音源モジュールの機能の一部という扱いであった。また、KORGから発売されたPCM音源のミュージックワークステーションM1の音源モジュール、M1Rもシーケンサーを内蔵していた。これらは音源とシーケンサーが一体化されたものではあるが、後のYAMAHA QYシリーズとは音源、シーケンサーの主従が逆になっている。KORGはM1Rに続き、01R/WやX3Rとシーケンサー内蔵の音源モジュールを発売するが、内蔵シーケンサーの需要が少なかったためから、その後のTRINITYの音源モジュール版TR-Rack以降は内蔵シーケンサーを省略していった。
1990年にヤマハから発売された、QY10で初めて音源内蔵シーケンサーという形が提唱された。音源、シーケンサーだけでなく、消しゴムサイズの鍵盤キーが用意され、その鍵盤を演奏することで内蔵音源を発音させることが可能である。ちょうどその頃から一般的になっていたミュージックワークステーションをVHSビデオテープサイズに凝縮したものと考えられる。QY10の開発コンセプトが、スキーバスの中に持ち込んで手軽に作曲が楽しめるものであり、バスの中だけでなく、電車の中、ベッドの中など場所を問わず利用可能なため、大ヒットとなった。この後ヤマハはQY20、QY22と改良版をリリースしていくこととなる。
QYシリーズのリリース後も、デスクトップタイプのシーケンサーはQY以前のQXシリーズ、QX3がラインアップされていた。この後継機種として発売されたのがQY300であった。フロッピーディスクドライブ、ジョグ/シャトルダイアルやテンキーを装備し、ハンディタイプのQYシリーズとデスクトップのQXシリーズを併せ持った機種であり、この後改良版としてQY700がリリースされることとなる。
このヤマハのQYシリーズに対抗して、ローランドが90年代半ばにPMA-5という電子手帳サイズの音源内蔵シーケンサーを発売した。SC-55mkII相当のGS音源を搭載し、SCシリーズ愛好者に迎えられたが、タッチペンを使った入力というのが、QYシリーズの鍵盤キーに比べて、扱いづらかったようで、この機種の後継機種は発売されず、生産終了となってしまった。
このPMA-5はTO-HOST端子を持ち、SCシリーズのような音源モジュールとしての利用も可能であり、PCのシーケンサーソフトとデータのやりとり可能ということが魅力的な製品であった。当時のヤマハの音源内蔵シーケンサーQY22はGMのみ対応で TO-HOST端子がついていない機種のため、XG対応でTO-HOST端子搭載の新機種発売が求められていた。それが1997年発売のQY70であった。QY70はDTM愛好者だけでなく、以前のQYシリーズ愛好者であるギタリストやベーシストにも愛用され、2004年にディスコンになるまでロングセラーとなった。これにスマートメディアスロットを搭載するなどモデルチェンジを行ったのが現在のQY100である。
[編集] パーソナルコンピューターでの再生環境の標準化
1990年代に入りAppleはクイックタイムを発表。バージョンアップの過程でGM互換のソフトウェアMIDI音源を組み込み、ムービープレーヤーでMIDIデータを再生できるようにした。元からMacintoshではオーディオ入出力を標準で備えていたこともあり、音源チップを搭載した拡張カードを用いなくても楽音の再生が可能であったため、CPUの能力がクイックタイムの仕様を満たしていればどの機種でも簡易ながらMIDIデータの再生が可能となった。
このソフトウェア音源をコンピューター内部でシーケンサーからルーティングして制作用の音源とすることにより、ノートパソコンに外付け機器無しでも楽曲のMIDIデータ作成が可能となったため、ミュージシャンがノートパソコンを持ち歩いて移動中の列車やツアーの宿泊先で作編曲のツールとして場所を問わずに作業が可能になった。
対してPC互換機では当時は音声入出力は標準では用意されておらず、サウンドブラスターなどの拡張カードを用いる必要があった。サウンドブラスターにはヤマハのFM音源チップが搭載されており、もっぱらゲームの効果音/BGM用として用いられていたが、Appleの動向に遅れること数年、DirectXの制定と本体にAC97コーデックを標準搭載する仕様を義務づけることでPC互換機でも本体のみでMIDIデータの再生が標準で可能となった。
1990年代中頃からのインターネットブームではPC/Macintoshの双方でMIDIデータの再生が標準で可能になったことを受け、htmlファイルにタグを埋め込むことでWWWブラウザーがMIDIデータを再生することが可能となった。これによりホームページ埋め込み用の楽曲素材なども配布されるようになった。
[編集] 生活の中に溶け込むミュージックシーケンサー
MIDI規格の制定により演奏情報が規格化されたことにより、生活の中に様々な形で自動演奏が取り入れられることとなった。
マルチティンバー音源の登場とNTTの端末自由化によりユーザー側でモデムの設置が可能になったことをうけて、楽曲データを電話回線を通じてその都度サーバーからダウンロードすることにより提供する通信カラオケが実用化された。通信カラオケ機器の内部にはMIDIデータを再生するシーケンサーと音源が搭載されており、カラオケの伴奏はテープ、レーザーディスクなどの記録媒体での再生から自動演奏へと移行した。
更に音源LSIが小型化、省電力化されることで携帯電話にもMIDIデータを再生できる機能が搭載されるようになり、いわゆる着メロが実用化された。これにより消費者は着メロサイトからダウンロードした曲データを着信時のベルのかわりに用いることが可能になった。
以上の例はいずれも再生専用シーケンサーであるが、一般の消費者はこれらを自動演奏とは意識せずに利用している。これらの市場の広がりにより、MIDIデータの制作が職業として成り立つこととなった。
[編集] 代表的なシーケンスソフト(アルファベット順)
- オーディオデータ(フレーズを録音したものなど)を組み合わせて音楽を作るループベースのシーケンスソフト。オーディオデータはテンポを変えてもピッチが変わらない(その逆も可能)AcidizeWavを使用する。
- Cakewalk
- 米Cakewalk製ソフト。PC用サウンドカードやローランドのミュージ郎シリーズ等にCakewalk Expressがバンドルされていた。オーディオ編集機能を強化させ、後にSONARとなった。
- Cubase
- 独Steinberg社(ヤマハ傘下)ソフト。古くはループによるノンストップ編集、オーディオ時代ではVSTなど、現在のシーケンスソフトの基本を作った歴史をもつ。
- 米MOTU(Marks Of The Unicorn)社のソフト。多彩な自社製ハードウェアにより得られる快適な環境と安定性が長所。
- FL Studio
- ステップシーケンサーを中心としたDAWソフト。クラブ/ダンスミュージック制作に最適。
- ループベースのシーケンスソフト。Apple製、Mac OS X用。
- Live
- Logic
- 独emagic社(Apple傘下)のソフト。MIDIやオーディオの信号の流れを複雑にルーティングできる等、多彩な機能が特徴。最近では分散処理技術を導入しオーディオ以外の分野からも注目を集める。
- 加藤一郎氏の開発したフリーソフト。特有の文法に従って、Windowsのメモ帳等のあらゆるテキストエディタで記述し作成されたファイルから、MIDIファイルを生成できる。詳しくはリンク先を参照。
- Nuendo
- Steinberg社のソフトウェア。ポストプロダクション、サラウンド編集に対応。下位版のCubaseSXにもNuendoと同じオーディオエンジンが採用されている。
- Digidesign社のDAWシステム。専用のハードウェアを必要とし高価だった為、長らくプロフェッショナル向けであったが、近年コンシューマ向けのProTools LEが登場している。
- スウェーデンのPropellerhead社のソフト。音源部分の見た目が実際の同種の機器に酷似している(ラックを模した画面で、機器同士をつないでいるケーブルがラックの裏側を表示するときに揺れたり、一部の機器をラックに固定しているネジを緩めることができたり、簡単なメモを書いたテープを機器に貼ることができたりする)のが大きな特徴。操作方法も、実際の同種の機器に親しんだ者なら基本的な操作の見当がつく程度に似せてある。
- Propellerhead社のソフト。ローランドのTB-303(2台分)とTR-808とTR-909を縦に並べて、それらの横に簡単なパターン切り替え機能とミキサーをつけたインターフェイスを持ち、音質や操作方法をシミュレートしている。現在は、開発・サポートを終了しているが、無償ダウンロード公開されている。
- レコンポーザ
- カモンミュージック社の日本製ソフト。マウスを使わなかったPC-98の時代から存在するソフトで、ST/GT方式という独自の数値表現を持ち、パソコンのキーボードによるデータ入力方法が洗練されている。
- インターネット社の日本製ソフト。座標上の点にオブジェクトを置いて旋律を作る他ソフトとは対照的に、五線譜を中心とした作業に向いている。
- XGworksの流れを引き継ぐが、譜面入力やコントロールチェンジの入力ではXGworksに劣ると言われる。XG音源だけでなく、MOTIFシリーズ等他のシンセサイザーにも対応可能。PC上での録音やその録音したデータの編集がXGworkよりも高機能である。
- SONAR
- CakeWalkの流れを引き継ぐ米製ソフト。Windows用。国内ではローランドが代理店となり日本語化やサポートを行っているため、ミュージ郎の後継シリーズに引き続き廉価版がバンドルされている。
- Vision
- 米Opcode社製ソフト。オーディオを統合したStudio Vision等がある。Opcode社が米Gibson社に買収されてからは、開発がストップしており、現在フリーウェア化している。
- XGworks
- ヤマハ社の日本製ソフト。特にMUシリーズ等のXG対応音源向けの機能が充実している。