音符
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音符(おんぷ)とは、五線記譜法に基づく西洋音楽の楽譜において、ひとつの音を書き表すのに使われる符号である。
音符は五線譜などの中で、相対的な音の長さ(音価)と時間的な位置、および高さ(音高)を表す。また、音価によってその形が異なる。それぞれの音符は、符頭(たま)、符幹(ぼう)、符尾(はた)の3部分から成るが、符尾を欠くもの、符幹と符尾を欠くものがある(符幹と符尾をまとめて符尾と呼ぶこともある)。時間的な位置と音高は、五線譜の中で符頭の位置によって示される。
音符の対になるものに休符がある。休符は音の出ないことを表す。音符や休符は原則として続けて演奏される。
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[編集] 基本的な音符と休符の種類
- 全音符・全休符(ぜんおんぷ・ぜんきゅうふ)
- 基本となる音価を持つ。ただし、全休符は通常、拍子にかかわらず(1小節の音価の合計にかかわらず)、1小節休むことを表す。全休符は線の下に接して書かれる。下のように第3間に書かれるのが原則である。
- 倍全音符・倍全休符
- 全音符の2倍の音価を持つ。倍全休符は通常、2小節休むことを表す。倍全音符には下に挙げたものの他、いくつかの形がある。
- 2分音符・2分休符(にぶおんぷ/にぶんおんぷ・にぶきゅうふ/にぶんきゅうふ)
- 全音符の2分の1の音価を持つ。2分休符は必ず線の上に接して書かれる。下のように第3間に書かれるのが原則である。
- 4分音符・4分休符(しぶおんぷ/しぶんおんぷ・しぶきゅうふ/しぶんきゅうふ)
- 全音符の4分の1の音価を持つ。
- 8分音符・8分休符(はちぶおんぷ/はちぶんおんぷ・はちぶきゅうふ/はちぶんきゅうふ)
- 全音符の8分の1の音価を持つ。8分音符より細かい音符では符尾が付くが、同じ音符が続くときなどに符尾をつなげて書くことができる。これを連桁(れんこう)という。連桁によって符尾が煩雑にならないばかりでなく、音符のまとまりがわかりやすくなる。
- 16分音符・16分休符
- 全音符の16分の1の音価を持つ。
- 32分音符・32分休符
- 全音符の32分の1の音価を持つ。
- 64分音符・64分休符
- 全音符の64分の1の音価を持つ。
- 128分音符・128分休符
- 全音符の128分の1の音価を持つ。
[編集] 小節休みの休符
パート譜などで数小節休むときに、全休符がまとめられる。前述の通り、1小節休みには全休符、2小節休みには倍全休符を使うが、それ以上8小節休みまで、それぞれ独特の形を持っている(通常、休符の上に小節数を付記する)。また、それとは別に、付記する数字の数だけの小節を休む休符があり、これは小節数によって形が変わらない。下の図で9小節の休みとなっているものがそれである。なお、これらの休符に、定まった日本語の呼び名はない。楽譜ソフトによっては、連続休符、長休符、大休符などと呼んでいる。
[編集] 付点音符、付点休符
符頭の右に点を付すことによって、元の音符の1.5倍の長さを表す。点は真右に付けるが、現代の楽譜では符頭が線にあるとき、すぐ上の間にずらして読みやすくする。1段に複数のパートを書く場合には、下のパートですぐ下の間にずらすこともある。
ある音符の半分の音価の音符の付点音符(すなわちある音符の0.75倍の音符)と元の音符の4分の1の音価の音符を並べると全体で元の音符長さとなり (0.75+0.25=1)、このような組み合わせで使われることが多い。この場合、おおむね19世紀初期の作品までは、必ずしも0.75:0.25、すなわち3:1の割合に分かれず、2:1、5:1、7:1といった割合で演奏すべきものがある。また、6拍子、9拍子、12拍子で1拍の長さを表すためにも使われる。
古い楽譜では、点そのものに元の音符の0.5倍の長さの音価があるかのように、点を元の音符の長さだけ離して書いたものがある。この場合、音符を上または下にずらすことはしない。
[編集] 複付点音符
符頭の右に点を2つ付すことによって元の音符の1.75倍 (1+1/2+1/4) の長さを表す。3つ付すことによって、1.875倍 (1+1/2+1/4+1/8) の長さを表すこともある。休符の複付点は滅多に使われない。
[編集] 連符(連音符)
上記システムでは、基本的な音符を、2等分、4等分、8等分、16等分....2n(nは整数)等分することはできるが、3等分、5~7等分、9~15等分....することはできない。そのような音価を表記するために、連符が用いられる。
- 基本的な音符を3等分するためには、3連符を用いる。基本的な音符の2分の1の音価の音符を3つ並べ、3の数字を付す。
- 基本的な音符を5~7等分するためには、5~7連符を用いる。基本的な音符の4分の1の音価の音符を5~7個並べ、5~7の数字を付す。
- 基本的な音符を9~15等分するためには、9~15連符を用いる。基本的な音符の8分の1の音価の音符を9~15個並べ、9~15の数字を付す。ただし、9連符は3連符の3連符として書かれる場合、基本的な音符の4分の1の音価の音符で書かれることになる。
- 以後、同様である。原則として、実際の音価より長い音符の中で一番近いものを使う。
- まれに6拍子、9拍子、12拍子で、1拍の長さを表す付点音符の3分の1の音価の音符を2つ並べて1拍を2等分する2連符が用いられることがある。例えば、付点4分音符を2等分するのに、4分音符2個ではなく、8分音符2個を使うという具合である。主にフランスで用いられた記法であるとする楽典のテキストもある。
下の図で、最初の連符はその合計の音価が2分音符、2つ目以降は全て4分音符である。
[編集] その他の長さの音符
その他の長さを正確に書き表すためには、音符の場合にはタイを用いて音価を結合する。休符の場合には、単に並べるだけである。