ナースホルン
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ナースホルン | |
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性能諸元 | |
全長 | 8.44 m |
車体長 | 7.26 m |
全幅 | 2.95 m |
全高 | 2.65 m |
重量 | 24 t |
懸架方式 | リーフスプリング式 |
速度 | 42 km/h |
行動距離 | 235 km(整地) |
主砲 | 8.8cm PaK 43 L71 |
副武装 | 7.92mm MG-34 or MG-42×1 |
装甲 | 20 mm 〜 30 mm |
エンジン | Maybach HL 120 TRM Ausf. A 300 馬力 /(3,000回転時) |
乗員 | 4〜5 名 |
ナースホルン(独:Nashorn)とその初期型「ホルニッセ」(独:Hornisse)は、第二次世界大戦期にドイツで開発された対戦車自走砲。ホルニッセはスズメバチ、ナースホルンはサイの意味。制式番号はSd.Kfz.164。
目次 |
[編集] 歴史と概要
ナースホルンは、敵戦車の装甲が強化されてきたことに対し、1942年に臨時解決策として開発されたもので、強力な8.8cm砲を搭載していた。装甲は薄く、車高は高かったが、撃破力に優れていたために終戦まで使われ続け、成功したと言える対戦車自走砲である。
1941年、ドイツは対ソ連戦バルバロッサ作戦でT-34やKV-1のような新しい防御力に優れた戦車に接し、これらの重装甲戦車を撃破できる対戦車自走砲の必要性を実感した。
1942年2月、ベルリンのアルケット社(独:Altmärkische Kettenwerke GmbH)は、III号戦車とIV号戦車の部品を組み合わせた III/IV 号車台をベースとした対戦車自走砲を設計した。この設計では8.8cm 対戦車砲 8.8cm Panzerabwehrkanone (Pak) 43 L/71 を搭載していた。ホルニッセ・ナースホルンに搭載されたこの砲は、終戦まで効果的であり続けた。使用された弾薬のうち、タングステン・カーバイドを弾芯とした徹甲榴弾 Pzgr. 40/43 では、1,000m先から30度の侵入角でも190mmの貫徹力を示した。この比類のない性能を示した砲弾は、敵の射程範囲外から攻撃を行うこと(アウトレンジ攻撃)を可能にした。
しかし、この長くて大型の砲を搭載するために、車台を延ばさなければならなかった。また戦車用の車台とは異なり、エンジンは後部から中央部へ移された。それでも、重量制限の点から、装甲を削らざるを得なかった。天板はなく、戦闘コンパートメントの装甲板は、乗員をほとんど無防備に近い状態にした。
このモデルは1942年10月、ヒトラーに承認を得るため提示され、1943年の初期から量産に移行した。制式名称は 8.8cm Pak43 (L/71) auf Fahrgestell Panzerkampfwagen III/IV (Sf) または8.8cm Pak43 (L/71) auf Geschützwagen III/IV (制式番号:Sd Kfz 164) だが、もっぱら対戦車自走砲ホルニッセ (Panzerjäger Hornisse) と呼ばれた。
[編集] ナースホルン
1943年の前半の間に、ホルニッセの新型が量産に移された。これは、より新しい砲 8.8cm Pak 43/1 L/71 を搭載していた。また、操縦手席の前部装甲板を変更した。ホルニッセはそれほど大量には生産されていなかったが、新型と見分けを付けるにはあまりにも違いが少なすぎ、砲を見ない限りは判別ができなかった。この頃からナースホルンと改称された。改称の理由は、一説に因ればヒトラーが虫の名前をつける事を嫌ったという事だが、信憑性を裏付ける資料は見つかっていない。
ホルニッセとナースホルンは、合計で494門が生産されたが、それらのうちほとんどは1943年に生産されたものであった。以降はIV号駆逐戦車やヤークトパンターなどの駆逐戦車が登場したため、オープントップの対戦車自走砲としては最後の型式となった。しかし、生産は低ペースながら1945年まで続けられた。
[編集] 配備状況
ホルニッセとナースホルンは重戦車駆逐大隊(Schwere-Panzerjäger Abteilung)のうち6個大隊に配備された。具体的には、第560、第655、第552、第93、第519、第88の各大隊である。それぞれの大隊には30-45門が配備された。
ホルニッセとナースホルンは、クルスクの戦いが初戦となり、有効な兵器であることが判明した。敵戦車が有効な射撃をできない距離から射撃を開始できる利点は、装甲が薄い、天板がないといった不利な点を補い、ロシアに多い開けた平地に非常に適していた。これ以降のほとんどの PaK 43 か KwK 43 で武装した戦車同様、ナースホルンはどんな連合軍戦車の装甲も貫徹することができた。
ナースホルンを装備した各大隊は、終戦まで全ての前線で運用された。
[編集] 性能諸元(詳細)
- 製造者:ドイチェ・アイゼンヴェルケ社 Deutsche-Eisenwerke AG 、テプリツェ(現チェコ) Teplitz-Schönau
- 乗員:4-5名
- 戦闘全備重量: 24t
- 外形寸法
- 全長(砲含む):8.44m
- 全長(砲なし):7.26m
- 全幅:2.95m、東部戦線用履帯 Ostketten 装備時:3.176m
- 全高:2.65m
- 地上クリアランス:0.4m
- 速度:42km/h(整地)
- 航続距離:235km(整地)
- 履帯:
- 形式:シングルピン
- 幅:400mm
- 地面接地長:3.80m
- 履帯連結数:104枚
- 接地圧:0.85kg/cm^2
- 牽架装置:リーフスプリング(板ばね)式
- ショックアブソーバー:なし
- 踏破能力:
- 垂直障害:0.6m
- 溝・塹壕:2.3m
- 渡河水深:0.8m
- エンジン:マイバッハ HL 120 TRM Ausf. A
- 形式:垂直12気筒 60度
- 出力:300馬力(3,000回転時)
- 排気量:11,867リットル
- 圧縮比:6.2-6.5:1
- 燃料:ガソリン
- 燃費:1キロあたり2リットル(整地)
- 燃料積載量:470リットル(タンク2個)
- 変速機: ZF社(Zahnradfabrik Friedrichshafen AG) SSG 77 Aphon
- 形式:マニュアル・シンクロメッシュ
- ギア比:6/1
- ステアリング:ダイムラー・ベンツ/ウィルソン クラッチ/ブレーキ社
- クラッチ: F&S La 120 HDA 乾式、3枚ディスク
- 武装:
- 主砲照準器: Sfl. Z. F. 1a (Selbstfahrlafetten-Zielfernrohr)
- 拡大率:5倍
- 視野角:8度
- 間接照準器: Aushilfsrichtmittel 38
- 拡大率:3倍
- 視野角:10度
- 無線機: FuG Spr. f
[編集] 外部へのリンク
(すべて英語)
第二次世界大戦のドイツの装甲戦闘車両 | |||
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戦車 | |||
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