サイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サイ科 | ||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
シロサイ Ceratotherium simum |
||||||||||||
分類 | ||||||||||||
|
サイ(犀、英名:Rhinoceros もしくはRhino)は、ウマ目(奇蹄目)サイ科 Rhinocerotidae に属する哺乳動物の総称。アフリカおよび東南アジアに生息する大型の草食動物である。大きな角と、動物の中で最も硬いといわれる皮膚を持つ。
現生のサイは5 種で、そのいずれもが絶滅の危機に瀕している。生息数減少の主な原因は人間による乱獲であり、現在でも角を目当てにした密猟が絶えない。
目次 |
[編集] 特徴
ゾウに次ぐ大型の陸棲哺乳類であり、最大の種であるシロサイ Ceratotherium simum は体長4 m、体重3.6 t に達する。その巨体に似合わず最高時速50kmで走ると言われる。サイの皮膚は非常に分厚く硬質で、体全体を鎧のように覆っている。その皮膚はあらゆる動物の中でも最硬といわれ、肉食獣の爪や牙を容易には通さない。加えて成獣は大きな体躯を持つことにより、肉食獣に襲われて捕食されることは滅多にない。
頭部には1 本または2 本の硬い角を持つ。これはほとんどの動物に共通して言えることだが、角の用途は敵に対する攻撃や防御ではない。サイ同士が角をぶつけ合って、個体の優劣を決めるためのものである。成分を見ると角は骨ではなく、むしろ人間の髪の毛や爪に近い。表面から中心部までの全体が、体毛や蹄と同じく、皮膚の死んだ表皮細胞がケラチンで満たされてできた角質で構成されている。
目は小さく視力は弱いが、鋭い嗅覚と聴覚をもつ。
[編集] 生態
夜行性であり、草や葉を主食とする。基本的に単独で生活するが、草原で生息するシロサイ Ceratotherium simum は小さな群れをつくることがある。雄は通常、縄張りを持ち、尿でマーキングすることで縄張りを主張する。火を見ると消す習性があるものがいるために「森の消防士」とも呼ばれる。
[編集] 絶滅の危惧
角は工芸品や漢方薬の材料として珍重され(もっとも角に薬としての効用は実はほとんどない)乱獲が進んでいる。サイ科の5 種すべてが絶滅の危機にあり、ジャワサイ、クロサイ、スマトラサイの3 種が絶滅危惧 IA 類に指定されている。とりわけ、ジャワサイ Rhinoceros sondaicus は地球上で最も数が少ない大型獣として知られており、1967年から1968年に行われた調査では生息数が25 頭まで減少したとされた。あらかじめ角を切り落としておくことで密猟されないようにする保護対策が行われている。
[編集] 分類
サイ科 Rhinocerotidae に含まれる現生種は4 属5 種。
Rhinoceros 属
- インドサイ Rhinoceros unicornis
- ジャワサイ Rhinoceros sondaicus
Diceros 属
- クロサイ Diceros bicornis
- 前後2本の角をもち、前方の角は長さ1.4 mにもなる。サハラ砂漠以南のアフリカに生息。
Ceratotherium 属
- シロサイ Ceratotherium simum
- 最も大型のサイ。前後2本の角をもつ。アフリカの草原地帯に生息する。保護活動が功を奏し、最も生息数が多いサイとして知られており、南アフリカの亜種ミナミシロサイ C. simum simum は1万頭近く生息している。しかし、北東アフリカの亜種キタシロサイ C. simum cottoni は数十頭程度しか生息していないと見られ、絶滅寸前である。
- 日本名の由来は体色ではない。アフリカに生息するシロサイとクロサイは外見上、口の大きさで区別できる。シロサイの口はクロサイよりも幅が広いことから「ワイド」"Wide"の単語が英語表記に用いられており、これを「ホワイト」"White"と誤解したことに由来している。
Dicerorhinus 属
- スマトラサイ Dicerorhinus sumatrensis
- 体長2.5~3.2 mの最も小型のサイ。前後2本の角をもつ。東南アジアの森林に生息している。森林伐採や密猟により、絶滅の危機に瀕している。