R-3350 (航空用エンジン)
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R-3350 デュプレックスサイクロンエンジン (Duplex Cyclone) はアメリカのカーチス・ライトにより生産された、大馬力の空冷星形レシプロエンジンである。
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[編集] 概要
18気筒2列星型のR-3350の総排気量は55 L (55,000 cc)で、出力はモデルによって異なるが2,200から3,700 HPだった。開発は第二次世界大戦よりも前から開始されていたが、大戦時B-29に搭載され運用されるまでには長い開発期間が必要であった。戦後は民間旅客機のエンジンとして、ターボ・コンパウンド仕様のエンジンが広く用いられた。
[編集] 開発経緯
1927年にライト社 (Wright Aeronautical) は有名なサイクロンを開発し、1930年代の航空機に多く用いられていた。1929年、ライトはカーチスと合併しカーチス・ライトとなったが、1,000馬力クラスのエンジンの開発は続けられた。1935年に完成したR-1820 Cyclone 9は1930年代、および第2次大戦で広く使われたエンジンの1つである。
同時期に、航空用エンジンメーカーのプラットアンドウィットニー (Pratt & Whitney, P&W) は有名なワスプ・エンジンのシリーズの開発を始めた。2列星型のワスプ・エンジンは、サイクロンよりコンパクトで、高性能であった。1935年、カーチス・ライトはP&Wに追いつくため、サイクロンをベースにした新エンジンの開発を開始した。14気筒2列星型のR-2600と18気筒のR-3350が開発された。
1937年5月、最初のR-3350の試運転が行われたが、このエンジンはやや気分屋だと判明した（運転状態が安定しなかった）。複雑な気質に加えて、R-2600エンジンがはるかに大きな注目を集めたことで、開発スピードは上がらなかった。1941年になってようやく、アリソン製のV-3420エンジンにかえてXB-19に採用され、R-3350は初めて空中にあがった。
[編集] 実戦での運用
1940年、アメリカ軍は、2,000 lb（約900 kg）の爆弾を積んでアメリカ本土からドイツを攻撃しようという長距離爆撃機の開発を計画した。これには大馬力のエンジンの開発を必要としたので、R-3350の開発が重要なものになった。1943年までにB-29の機体は完成し、エンジンはまだ若干不安定で、しかもオーバーヒートの気味があったが、太平洋方面の任務に投入された。しばしば離陸後火災をおこすものがあった。
[編集] 戦後の民間型
R-3350の初期型はキャブレター仕様で、燃料の混合に問題があったが、戦後燃料噴射方式に変更され、信頼性が向上した。また、燃費の向上のために、ターボコンパウンド方式が開発された。3台のターボチャージャーにより吸気圧を高めるとともに、クランクシャフトに直接回転を伝えることにより排気の熱の20%を回収した。
改良を加えられたR-3350は、ロッキード・コンステレーションやダグラス・DC-7等の大型旅客機などに採用されるようになった。しかし、ことにターボコンパウンド仕様はその複雑な構造が災いしてトラブルが頻発し、より簡便で高性能なターボプロップ方式の普及に伴って、第一線から退くに至った。
