MZ-2200
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MZ-2200(えむぜっと にせんにひゃく)は、SHARPが1983年に発売した8ビットパーソナルコンピュータである。
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[編集] 概要
コンピュータとして使うには、まずBASICなどのプログラミング言語(言語)や、ソフトウェアをカセットテープなどから読み込むことが必要であった。この設計思想をクリーンコンピュータ設計という。この為、使用することができる言語は一つに限定されず、いろいろな言語を扱うことができ、サードパーティからもユニークな言語が発売された。この機種のベースとなったMZ-2000の基本的性能を踏襲(完全上位互換)しながら、パソコン本体とディスプレイを分離し、補助記憶装置と共に、自由に組み合わせることができるようになった。拡張ユニットを標準添付し、ユーザーが本体に装着することで、周辺機器に接続する各種インターフェイスカードを取り付けることができた。詳細な設計回路のマニュアルが添付されたほか、MZ-80シリーズで好評だった、BASICのテキストも添付された。本体標準価格128,000円。
[編集] ハードウェア仕様
- ROM:
- 2KB BOOT ROM(イニシャルプログラムローダ)
- 2KB C-G ROM(キャラクタジェネレータ)
- RAM:
- メイン 64KB 標準
- キャラクタ用 V-RAM 2KB
- グラフィック用 V-RAM 48KB
- 表示能力
- キャラクタ
- 8×8ドットマトリクス、1000文字(40桁×25行)/ 2000文字(80桁×25行)、2モードソフト切換
- グラフィック
- グリーンディスプレイ使用時 - 3画面(各640×200ドット)、ページ1・2・3およびキャラクタとの混在可能。
- カラーディスプレイ使用時 - 8色1画面(640×200ドット)、ドット単位に8色指定可能、キャラクタとの混在可能。
- キャラクタ
- キーボード
- ASCII準拠メインキーボード
- インターフェイス
- カセットインターフェイス(MZ-1T02専用)
- CRTインターフェイス
- サウンド出力 250mW最大
- 拡張ユニット 4スロット
- 外形寸法 幅440mm × 奥行490mm(拡張ユニット装着時562mm) × 高さ118mm
- 重量 約7kg(拡張ユニット装着時 約8.5kg)
[編集] 標準添付品
[編集] システムソフトウエア
- BASICインタープリタ(MZ-1Z001)
- カラーBASICインタープリタ(MZ-1Z002)
[編集] マニュアル
- BASIC MONITOR MANUAL
- OWNER'S MANUAL
- BASICテキスト
- BASICをわかりやすく解説したテキスト。MZ-80シリーズで添付され、初心者にもわかりやすく好評だったため、MZ-2200でも添付された。
[編集] その他
- 拡張ユニット
- 4スロット装備。ユーザーにおいてMZ-2200本体の後側に差し込むように取り付けることで使用できる。ディスプレイとテープレコーダのみの使用であれば拡張ユニットは使用しないので、本体に取り付ける必要はない。
[編集] 周辺機器
[編集] シャープ純正
[編集] ディスプレイ
今日コンピューターのディスプレイといえば、液晶ディスプレイを思い浮かべることがほとんどであるが、その当時、ディスプレイといえばブラウン管型のディスプレイのことであった。カラー表示命令ができたMZ-2200は、赤・緑・青(光の三原色)それぞれ1ビットによるデジタル信号処理をおこない、カラーディスプレイ使用時8色を表現することができた。ディスプレイによっては、テレビチューナーを内蔵するものや、コンピューター画面とテレビ画面をスーパーインポーズ表示することができるディスプレイもあった。
- 12型グリーンディスプレイ(MZ-1D12)
- 2000文字表示のグリーンディスプレイ。標準価格32,000円。
- 14型カラーディスプレイ(MZ-1D15)
- 2000文字、8色表示のカラーディスプレイ。標準価格72,000円。
[編集] 補助記憶装置
当時のパーソナルコンピューター(マイコン)で普及した記録メディアは、オーディオ用のカセットテープであった。また、データ記録用に高い周波数も安定して再生できるような高性能な短時間(片面で5分~15分程度)カセットテープも市販された。プログラムやデータが大きければ、保存時間・読込時間は長くなるため、それに応じた録音時間のカセットテープを用意する必要がある。1本のカセットテープに複数のプログラムやデータを保存することもできる。カセットテープは両面に録音することができることから、プログラム保存時間の倍程度のカセットテープに、同じプログラムやデータを両面に記録保存し、テープの伸びや磁気変質などによる読込みエラーを防ぐ工夫をした市販ソフトも多かった。
記録メディアとしてフロッピーディスクもあったが、ドライブはまだ高価で、メディアも1枚1,000円(5.25インチ2D)を超えたことから、MZ-2200が発売された頃は、さほど普及していなかった。
- データレコーダ(MZ-1T02)
- ミニフロッピーディスクドライブ(MZ-1F07)
- 両面倍密度(2D)の2ドライブフロッピードライブ。記憶容量は2ドライブ使用時560KB。インターフェイス、接続ケーブル同梱。標準価格158,000円。
- クイックディスクドライブ(MZ-1F11)
- クイックディスク(QD、標準価格450円)は3.5インチフロッピーディスクより小さなサイズ(78mm×78mm、厚さ3mm)に、片面64Kバイトを保存、カセットテープのように裏返し、両面で128Kバイトを保存できた、ローディングタイム約8秒という高速なドライブで、「フロッピーの高速性とカセットの経済性を備えた新しい記憶装置」であった。QDを標準搭載したMZ-1500が発売された1984年6月に、MZシリーズ用QDドライブとして外付けドライブも発売、MZ-700やMZ-2000にも接続できた。QD-BASICが添付されたクイックディスクインターフェイス(MZ-1E18(MZ-2200専用)、標準価格9,800円)が別途必要。標準価格24,800円。
[編集] プリンタ
- 80桁シリアルプリンタ(MZ-1P07)
- キャラクターのほか、グラフィックも印字することができた。印字速度は普通文字で120文字/秒。拡大文字・縮小文字・強調文字・アンダーラインも印字できた。複写能力はオリジナル+3枚。インターフェイスはセントロニクス社準拠。標準価格79,800円。
- カラーインクジェットプリンタ(MZ-1P04)
- 120ドット/インチの高解像度7色カラープリンタ。標準価格228,000円。
[編集] その他
- 16ビットボードキット(MZ-1M01)
- 本体内に装着することで16ビット環境と8ビット環境のマルチCPUマシンに進化させることができた。16ビット時のCPUは8088。128KバイトRAM実装により、より高度なプログラミング環境のほか、漢字ROMボード(MZ-1R08、標準価格29,000円)を装着することにより、漢字表示環境も提供された。標準価格78,000円。
- マークカードリーダ(MZ-80MCR)
- JISカードC6244を使用した集計作業に有用なカード入力装置。OMR方式により、カードに鉛筆でマークする方法によりデータを読みとる。読みとり速度は1分間最大150枚。標準価格198,000円。
[編集] サードパーティ製
[編集] 補助記憶装置
- ミニディスクユニット(LFD-550MZ)
- 東京電子科学機材製。1ドライブ当たりの記憶容量327.68Kバイト。デュアルドライブ(1台に2ドライブ装備)で、4台まで増設可能。本体に接続するにはフロッピーI/Fカード、接続ケーブルが必要。本体128,000円。
- ディスクドライブ(TFP-200)
- 問い合わせ先は天昇電子。コントローラーを分離することにより、機種の異なるパソコンで使用できるコンパチブル設計。0.5Mバイトの5インチ両面倍密度FDD×2、JA551ドライブメカ採用。本体95,800円。
[編集] ソフトウェア
MZ-2200はMZ-2000の完全上位互換であるため、MZ-2000向けのソフトウェアも動作する。但し、MZ-2000はモノクロ(MZ-2000はグリーンディスプレイ一体型なので厳密に言えばグリーン、MZ-2000でカラー表示するにはグラフィックボード(MZ-1R01、標準価格39,000円)、グラフィックメモリ(MZ-1R02、標準価格8,000円)、カラーディスプレイが別途必要である。)1色であるため、MZ-2200に読み込ませて動作させる場合もモノクロ1色である。MZ-2200発売後に発売されたソフトウェアによっては、カセットのA面をカラー対応のMZ-2200向け、B面をモノクロ対応のMZ-2000向けといった提供をしたものもあった。
[編集] シャープ純正
[編集] システムソフトウェア
型番のハイフンの次が1で始まるものはカセットテープ、2で始まるものはフロッピーディスクによる供給である。
- 倍精度テープBASIC(MZ-1Z003)
- インタープリタPASCAL(MZ-1Z004)
- システムプログラム(MZ-1Z005)
- マシンランゲージ(MZ-1Z006)
- RS-232C/GP-IBコントロールBASIC(MZ-1Z010)
- ディスクBASIC(MZ-2Z001)
- カラーディスクBASIC(MZ-2Z002)
- 倍精度ディスクBASIC(MZ-2Z003)
- フロッピーDOS(MZ-2Z004)
- 漢字カラーディスクBASIC(MZ-2Z021)
[編集] サードパーティ製
[編集] システムソフトウェア
クリーンコンピュータ設計により、サードパーティからもユニークなプログラム言語が提供された。
- デービーソフト
- dB-BASIC
- dB-I BASIC & COMPILER
- BASICでプログラミング後、コンパイルすることによりマシン語アプリケーションを作成することのできるBASIC。数値演算は整数型であった。サンプルゲームが添付され、プログラミングしなくてもコンパイル作業を実行することができ、マシン語アプリケーションを作成でき、実行速度などを比較することができた。
- マイコンシステム企画
- Super Color BASIC
- グラフィック、サウンドを強化したBASICとして開発され、8色であったMZ-2200の表現を、タイリング技法によりグラフィック画面で36色を高速描画できた。サウンドは3重和音を実現。しゃべるインコ程度の発音であったが、またパソコンに任意の言葉をしゃべらせることができた。サンプルデモプログラム中では「スーパーカラーベーシック、し・ん・は・つ・ば・い」と喋らせている。
- Super Color BASIC
- 不明もしくは未分類
[編集] ゲーム
- SPS
- ポーラースターII
- ぐるっぺ
- 棋太平
- キャリーラボ(Carry Lab.)
- 大脱走
- High-Powered王将
- ハイドライド
- F2グランプリ
- テクノソフト
- 四人麻雀
- ゴルフアイランド
- スターフリート/B
- ニデコ
- スペースクルーザー
- フロントライン
- ワイルドウェスタン
- ちゃっくんぽっぷ
- ビクトリアスナイン
- ハドソンソフト(HUDSONSOFT)
- 花札狂
- トランプ狂
- ジャン狂
- マリオブラザーズ スペシャル
- ブレーンメディア
- ALIEN EQUATIONS
- マイクロキャビン(MICRO CABIN)
- MYSTERY HOUSE II
- ドリームランド
- 不思議の国のアリス
- マイクロネット(Micronet)
- チャンピオンプロレス
- フリッキー
- HARVEST
- 不明もしくは未分類
[編集] その他
- 久留米マイコンセンター
- 簡漢
- 漢字ROM、フロッピーディスクドライブ、漢字プリンター不要の日本語ワープロソフト。9,800円。
- 簡漢
[編集] 関連書籍・雑誌
- 『楽しく学ぶパソコンBASIC』(編著者:パソコンジャーナル編集部、発行:新紀元社、1983年)
- 本書のサブタイトルは「MZ-2200/2000を使って」。テレビ番組「パソコンサンデー」のテキストとして、レッスン内容を25にわけて「パソコンのスイッチを入れるところから、プログラムをBASICで組めるようになるまで解説」(同書より引用)し出版された。巻末には、キーボードやデータレコーダーのイラストがあり、パソコンを持っていない読者にも、キー操作の練習などができるよう配慮があった。シリーズとして『楽しく学ぶBASIC』(MZ-80B)、『楽しく学ぶプログラミング』(MZ-2000/MZ-80B)、『楽しく学ぶパソコンレッスン』(MZ-700)などがある。定価980円。
- 『マイコンBASICマガジン』(発行:電波新聞社)
- 自作プログラムを機種別に掲載、読者がそのプログラムを見ながら1行1行入力し、ゲームなどを楽しむことができた。プログラミングの知識を得るのに役立ったほか、タイピングの練習にもなった。MZ-2200を含めMZ系の掲載は、NEC系のパソコンプログラムと比べて多くなかったが、読者が工夫を凝らし、MZ系に移植したプログラムも移植版として掲載された。
- 『月刊マイコン』(発行:電波新聞社)
- 『I/O』(発行:工学社)
- 『マシン語でゲームを作る本』(著者:前田光男、発行:技術評論社)