Copland
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Copland Project(コープランドプロジェクト)はApple社が1994年に発表したMacintosh用次世代Mac OSの名称。発表以前の初期研究は90年代初頭から行われていた。完成の暁にはSystem 8(Mac OS 8)となる予定だったが開発は頓挫、1996年8月に計画は放棄される。互換機のサポート契約が7.*に限定されていたこともあり、System 7.7として開発されていた従来型MacOS(コードネーム:Tempo)がMacOS8の名を引き継ぐ事で互換機サポートを強行的に打ち切った。
発表された計画によれば、
などの特徴が挙げられていた。これはSystem 7系列で機能的には向上したものの、既に基礎設計が古くなっていたMac OSを根本から刷新するものである。この他にNewtonテクノロジーの融合やOpenDocによるドキュメント環境の改革などが挙げられる。 (注:1996年にアップルがJDCで配布した資料によれば、Coplandのマルチタスク環境は暫定的なものである。プリエンプティブに動作するのは、バックグランドタスクのみとのことだった。これは、ToolBox APIをリエントラントにすることが難しかったためだと推測される。また、メモリ管理もSystem 7系よりは進化していたが、完全なモダンOSとは言えなかった。当時のロードマップ上では、完全なMac用モダンOSは、Gershwinの登場までお預けだった。)
しかし次世代を意識し過大な期待を受けた開発計画は破綻を来し、当初1995年を予定していた出荷は1996年夏、1997年7月と二度の延期を経た後中止に至る。これは完全なシングルタスクを前提としたToolBox APIとマルチタスク環境の両立が困難だったことが主原因である(この反省は後のCarbonに生かされた)。また技術的な問題の他に、Coplandと並行してIBM社と共同出資したタリジェント社で次期OS"Pink"を開発するなど、開発戦略が迷走していたことが失敗の原因として大きい。Windows 95を意識したマーケティング側からのプレッシャーもそれに拍車をかけたと思われる。プロジェクト打ち切り時、Coplandの構成技術は各プロジェクトチームで個々別々に開発されている状態だったと言われる。
計画中止後、Apple社はNeXTを買収し次世代OS計画を"Rhapsody"へと移行させる。後に"Rhapsody"計画は変更され、代わりにMac OS Xの計画が発表される。"Rhapsody"自身は暫定的にMac OS X Serverとしてリリースされた。その間Copland技術のうち転用が可能な部分は順次Mac OS 8、9などに応用された。ファイルシステムのHFS+や、アピアランス・マネージャ、キーチェーンなどがこれにあたる。そのうちいくつかの機能は現在のMac OS Xにも引き継がれた。しかしこれらの機能は、本来Copland用の新しい概念のために設計された技術であり、MacOS8/9では完全に性能を生かしているとはいいがたかった。
なおCHRP(Common Hardware Reference Platform; AIX, Windows NT, Mac OSなどの複数オペレーティングシステムを実行可能なPowerPCハードウェアの構想)は本来Coplandを意識して開発されたものである。