BAE ニムロッド
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BAE ニムロッド(ビーエーイー — , BAE Nimrod)は、イギリス空軍の対潜哨戒機である。ホーカー・シドレー社で設計されたのでホーカー・シドレー ニムロッドとも呼ばれるが、現在はBAE システムズが販売を請け負っており、ニムロッドは旅客機のデハビランドDH-106コメットが原型になっている。特徴として、低速で長時間飛行することの多いためレシプロエンジンやターボプロップエンジンを採用されやすい対潜哨戒機の中で、ターボファンエンジンを装備している。
ニムロッドは2種のバリエーションが実用化されている。R.1型は電子偵察機として使用され MR 型が対潜哨戒機の用途に用いられる。外観上の差異として、MR型には尾部に突き出している磁気探知装置(MAD)があることが挙げられる。
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[編集] 派生型
[編集] MR.1
1964年、商品寿命の終わった旅客機コメット4型を改造して、アブロ・シャクルトンの後継機の開発がはじまった。最初の2機は、未完成のコメット4を改造した。燃料消費率を改善するために、エンジンをターボ・ジェットエンジンからロールス・ロイス「スペイ」ターボファンエンジンに換えている。主な改造点は胴体下部を拡張し、兵装スペースを設け、機首をレーダーの収納のために延長、さらにはESMなどの電子装備のために尾翼を改造した。尾部にMADブームも追加された。1967年に初飛行しイギリス空軍から、38機(後に8機追加)の注文をうけ、1969年10月から、運用が開始された。
[編集] R.1
3機のニムロッドが電子信号偵察(SIGINT)用に改造された。1974年5月に第51飛行隊のコメットC2とキャンベラの後継機になった。長期の使用により老朽化したが、任務の特性上飛行回数が限られていたため、MR.2がMRA4に更新した後も使用されている。冷戦中は機体の存在自体が極秘扱いであり、冷戦終結後に初めて機体の存在が公表された。
[編集] MR.2
1975年より、MR.1より32機が電子装備の更新した改良型MR.2への改装が開始された。フォークランド戦争時に、空中給油装置とサイドワインダー空対空ミサイルが装備できるようにされた。
[編集] AEW.3
1980年代なかばに、ニムロッドを早期警戒機として用いるためのプロジェクトがあった。機首と尾部に大型レーダーを搭載し、前後のレーダーが連動して周囲の警戒を行う仕組みであった。しかし、開発費用の面よりアメリカ製ボーイングE-3早期警戒管制機の導入が決定され、採用にいたらなかった。
11機が試験的に改装されたが、これらの機体は既存の機体の部品取りに使われ、再度通常任務に戻されることは無かった。
[編集] MRA4
1990年代後半にイギリス空軍はニムロッドの後継機として、ロッキードP-3Cまたはダッソー・アトランティックの導入も検討したが、1997年7月BAeによるニムロッドMRA.4の生産が決定された。MRA.4は新世代のターボファンエンジン、ロールスロイスBR700を搭載し、主翼を拡大し、エアバス社の旅客機技術を応用する等基本的に別の機体になった。当初の採用予定は21機であったが、コストの問題などから18機まで採用数が削減された。