銃砲刀剣類所持等取締法
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通称・略称 | 銃刀法 |
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法令番号 | 昭和33年法律第6号 |
効力 | 現行法 |
種類 | 刑法 |
主な内容 | 銃砲刀剣類の所持規制など |
関連法令 | 火薬類取締法、武器等製造法 |
条文リンク | 総務省法令データ提供システム |
銃砲刀剣類所持等取締法(じゅうほうとうけんるいしょじとうとりしまりほう、昭和33年法律第6号)は、日本の法律である。略称は銃刀法。1958年3月10日公布、同年4月1日施行。
目次 |
[編集] 概要
制定当時の題名は「等」の位置が異なる「銃砲刀剣類等所持取締法」であったが、1965年7月15日の改正法施行により現在の題名となった。銃砲刀剣類の所持を原則として禁止し、これらを使った凶悪犯罪や誤用事故による危険を未然に防止することを目的とする。銃砲・刀剣類の所持許可を与える者を限定し、許可を得た者に対しても銃砲・刀剣類の取り扱いについて厳しく定められ、これに違反すると罰せられる。
[編集] 内容
- 総則
- 銃砲又は刀剣類の所持の許可に関する規定
- 所持の禁止 - 法令に基づき職務のため所持する場合などを除き、原則として銃砲・刀剣類の所持は禁じられる。
- 許可 - 銃砲・刀剣類の所持は、厳格な基準を満たした上で、所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに、その所持について、住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない。
- 許可の基準 - 都道府県公安委員会は、次の者に銃砲・刀剣類の所持を許可してはならない。
- 18歳に満たない者(一部の銃砲については14歳に満たない者)
- 精神障害又は発作による意識障害をもたらし、その他銃砲又は刀剣類の適正な取扱いに支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるものにかかつている者
- アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者
- 自己の行為の是非を判別し、又はその判別に従つて行動する能力がなく、又は著しく低い者
- 住居の定まらない者
- 許可を取り消された日や、この法律によって処罰された日から起算して五年を経過していない者など
- 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 他人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者
- 射撃練習場、射撃指導員、射撃練習に関する規定
- 古式銃砲及び刀剣類の登録、刀剣類の製作の承認に関する規定
- 都道府県の教育委員会は、美術品若しくは骨とう品として価値のある火縄式銃砲等の古式銃砲又は美術品として価値のある刀剣類の登録をするものとする。
- 登録を受けた銃砲・刀剣類については、所持が許可される。
- 雑則 - 譲渡の制限、発見及び拾得の届出、授受・運搬・携帯の禁止又は制限、刃体の長さが6cmをこえる刃物の携帯の禁止等
- 罰則
[編集] けん銃に関する罰則
- けん銃等の発射 - 無期又は3年以上の有期懲役
- けん銃本体に関して
- けん銃等の輸入 - 3年以上の有期懲役
- けん銃等の輸入(営利目的) - 無期若しくは5年以上の有期懲役、又は1000万円以下の罰金併科
- けん銃等の所持 - 1年以上10年以下の懲役
- 加重所持 - 1年以上の有期懲役
- けん銃等の譲渡し等 - 1年以上10年以下の懲役
- けん銃等の譲渡し等(営利目的) - 3年以上の有期懲役、又は500万円以下の罰金併科
- けん銃等の輸入予備 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- 輸入資金提供等 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- けん銃等の譲渡し等の周旋 - 3年以下の懲役
- 部品に関して
- けん銃部品の輸入 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- けん銃部品の所持 - 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- けん銃部品の譲渡し等 - 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
- けん銃部品の譲渡し等の周旋 - 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
- けん銃実包に関して
- けん銃実包の輸入 - 7年以下の懲役又は200万円以下の罰金
- けん銃実包の輸入(営利目的) - 10年以下の懲役、又は300万円以下の罰金併科
- けん銃実包の所持 - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- けん銃実包の譲渡し、譲受け - 5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
- けん銃実包の譲渡し、譲受け(営利目的) - 7年以下の懲役、又は200万円以下の罰金併科
- けん銃実包の譲渡し、譲受けの周旋 - 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
[編集] 沿革
銃砲・刀剣類の取り締まりは、明治時代から行われ、「銃砲火薬類取締法」(明治43年法律第53号)では民間人の銃砲類所持を原則として禁じ、刀剣類についても明治9年太政官布告第38号(廃刀令、帯刀禁止令)により大礼服着用者・軍人・警察官以外の帯刀は禁止されていた。
もっとも、この法律は、第二次世界大戦後、日本軍の解体と軍国主義排除を徹底するため、GHQの指示を受けて定められた1946年のポツダム勅令の一つ、銃砲等所持禁止令(昭和21年勅令第300号)により銃砲等の所持を禁じたことを直接の由来とする。
当初はこのように軍事上の目的であったが、戦後急増した暴力団とその構成員による銃器犯罪や銃器を用いた対立抗争事件の頻発により、この法律は治安の回復と犯罪抑止に大きな役割を果たすこととなった。その取り締まり対象は、銃器本体の所持から輸入、譲渡し・譲受け、部品や実包の輸入・所持・受け渡し、銃砲の発射へと順次拡大して、銃器犯罪に対処している。
[編集] 問題点
[編集] 不当逮捕の温床?
銃刀法の範疇ではない小刀やカッターナイフ、十得ナイフなどを所持しているだけでも軽犯罪法違犯として逮捕書類送検される事例が沢山報告されている。しかしその際の「正当な理由」については現場の担当官の判断に依存するなど不明確な点が多い。犯罪抑止の観点から微罪で連行するなどの目的に用いられているとおもわれるが、定住し定職をもつ善良なる一般市民に対しそのような取り扱いをすることには疑問を投げかける者も少なくない。また、書類送検されてもその後実際に起訴されることは少ない。
[編集] 遊戯銃規制の不備とその対策
また、銃器愛好家によって、規制内容が現状と合わなくなっている点が指摘されていた。中でも致命的なのが、弾丸を発射するタイプの遊戯銃に関する点である。この法律が制定された当時、弾丸を発射する遊戯銃は銀玉鉄砲程度しかなく、エアソフトガンのような高い威力(といっても玩具として成立するレベルではあるが)と命中精度を持ったものは想定外であった。そのため、遊戯銃の威力に関する規制がうまくいっていない(有害玩具の項も参照)。よって、威力を危険なレベルまで増大させるカスタムパーツの販売が野放し状態となっていた。これに対し、2006年3月7日、威力を極端に増加させたエアソフトガンによる犯罪に対処すべく、警察庁は気温35度以下の環境で、銃口から1m離れた位置での威力が3.5J/cm2以上のものを「準空気銃」として所持を禁止する銃刀法改正案を提出し、5月24日に正式に公布、8月21日に施行された。この基準では威力を単位面積あたりの運動エネルギーとしており、面積として、弾丸を前から3mm後ろの部分の断面積を用いる。これは6mmBB弾を使用する機種の場合は0.98J未満のものが合法なエアソフトガンとなる計算である。この値はASGK、JASG双方の自主規制値をやや上回るため、威力を増大させていなければ、これらの自主規制団体に加盟しているメーカーのエアソフトガンは合法となると思われるが、実際には自主規制団体に加盟しているメーカーですら自主規制を守っていないことが多いので多くのエアソフトガンが対象になると思われる。対象となるエアソフトガンには、2007年2月20日までに威力低下を行う必要がある。
威力制限に対し法的根拠が生まれ、それまでグレーゾーンに位置していたエアソフトガンの法的に危うい位置づけが解消されること、悪質なパワーアップに対する抑止力となることが期待されている(後者に関しては疑問視する声もあるようである)。また、事件で使われたエアソフトガンは10~20Jなのに対し、この規制では0.98Jという値になっていることを不当だという愛好家も多い。事件で使われるエアソフトガンは改正以前の銃刀法で対処可能である。
また、銃創学的には弾丸が人体への侵徹効果を持つのは12.8J/cm2から(BB弾に換算すると3.6J)といわれている。 なので、3.6J以上の改造が不可能な構造をエアソフトガンに義務付ける方が改造銃による危険防止には実効的だという意見もある。
この改正に対応し、メーカーでは規制値を上回る恐れのある製品の威力調整を、各自主規制団体では改正銃刀法に適合した商品を表すラベルを発行している。またASGKでは、ユーザーサイドでの威力測定のための安価な簡易弾速計を販売している。