遺伝子組み換え作物
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遺伝子組換作物(いでんしくみかえさくもつ、英Genetically modified organismからGM作物、GMOとも)とは、遺伝子組み換え技術を用いて、作物となる植物の遺伝的性質を改変する品種改良等が行われた作物のこと。
「遺伝子組換作物反対派」は遺伝子組み換え作物、厚生労働省などは遺伝子組換え作物、食品衛生法では組換えDNA技術応用作物、農林水産省では遺伝子組換え農産物と表記が異なる場合がある。
従来の育種学の延長で導入された1973年以降の遺伝子組換えの手法としては放射線照射・重イオン粒子線照射・変異原性薬品などの処理で胚の染色体に変異を導入した母本を多数作成し、そこから有用な形質を持つ個体を選抜する作業を重ねるという手順で行われた。最初のGMOが作成された後に科学者は自発的なモラトリアムをその組み換えDNA実験に求めて観測した。モラトリアムの1つの目標は新技術の状態、及び危険性を評価する会議のための時間を提供することだった。生化学者の参入と新たなバイオテクノロジーの開発、遺伝子地図の作成などにより、作物となる植物に対して、「目的とする」形質をコードする遺伝子を導入したり、「問題がある」形質の遺伝子をノックアウトしたりすることができるようになった。米国では研究の進展とともに厳しいガイドラインが設けられた。そのようなガイドラインは後に米国国立衛生研究所や他国でも相当する機関により公表された。これらのガイドラインはGMOが今日まで規制される基礎を成している。
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[編集] 遺伝子組み換え作物の起源
初めて上市された遺伝子組み換え作物は、アンチセンス法(mRNAと相補的なRNAを作らせることで、標的となる酵素の産生を抑える手法)を用いて酵素ポリガラクツロナーゼの産生を抑制したトマトFlavr Savrである。他のトマトと比較して、熟しても皮が柔らかくなりにくいという特徴を持つ。
[編集] 遺伝子組み換えのアプローチ
ラウンドアップなど特定の除草剤に耐性を持つ品種を作成し、その除草剤による防除を行わせるような作物も開発されている。害虫に対して毒性を有するタンパク質を産生させることで、害虫の発生を抑える。ワクチン等の有用タンパク質の工場として利用することができる等。(スタブ)例えば、B型肝炎予防の食べるワクチンとしてB型肝炎ウイルスの表面抗原をバナナで発現させ経口免疫によってB型肝炎感染防除の試みがある(Planta, vol. 222, No. 3, p. 484-493, October 2005)。また、日本においてはインシュリンを分泌誘導して糖尿病になりにくくする米やスギ花粉症を低減する米の開発が先行している。現在、いわゆる第二世代の組換え食品として最も有望なものにGolden Riceがある。Vitamin A欠乏は多くの発展途上国において乳幼児の深刻な問題になっている。その解決策としてVitamin Aの前駆体であるβ-caroteneを内胚乳に含有するGolden Riceが開発された。β-caroteneを含有するため精米された米が黄色を呈するためにGolden Riceと命名された。Golden Rice自体を主食としてもVitamin Aの必要量を満たさないと非難する向きが遺伝子組換え食品反対派にあった。しかし、2005年には、新たにGolden Rice 2が発表され、これだけでVitamin Aの必要量がまかなえるようになった。これはcarotene生合成系遺伝子としてGolden Riceで用いられていたスイセン由来のphytoene synthaseのcDNAの代わりにトウモロコシやイネ由来のものを利用することにより達成された(Nature Biotechnology 2005 Apr;23(4):482-7)。
[編集] 生態系などへの影響と社会問題
本来野生植物が持っていない形質が、花粉の飛散等によって近縁の植物との間に雑種を作り、拡散してしまう可能性がある(遺伝子汚染)。そのため、花粉を作らない雄性不稔の形質が求められている。上記のラウンドアップ耐性作物を開発・販売しているモンサント社は農家の種子の採取に対して「特許侵害」として数多くの訴訟を起こしており、これに反発する農家も存在する。[1]
[編集] モンサント対シュマイザー
1998年、カナダモンサント社はカナダ、サスカチェワンの農民、パーシー・シュマイザーの農場でラウンドアップ耐性ナタネが無許可で栽培されていることに対し特許権侵害で訴訟を起こした。シュマイザーは種子に特許が存在しないこと、農場のナタネの9割以上がラウンドアップ耐性ナタネになっていたのは意図的に栽培したのではなく周辺で栽培されているラウンドアップ耐性ナタネによる「遺伝子汚染」の結果であることを主張した[2]。しかし、交雑等の可能性があっても約400 haに植えられたナタネの9割以上のナタネがラウンドアップ耐性ナタネになることは現実にはあり得ないとしてカナダ最高裁はモンサント社に対する特許侵害を認めた下級審の判決を妥当としシュマイザーは敗訴した。[3] 種子に対する特許が認められたことに対しカナダの市民団体と生産者団体は強く反発している。
[編集] 栽培規制
一部自治体では環境などへの影響への懸念から条例で栽培を規制している。
[編集] GM作物への「誤解」と論争
遺伝子組換え作物については「一般の人々の科学知識の欠如」「遺伝子組換え作物を人体に危険なものと消費者に訴え、自社商品の売り上げを伸ばそうとする非遺伝子組換え食品商法に走る業者」等[4]により消費者の多くは健康や環境に悪影響があるのではと不安を抱いているとされる。「種子の特許を利用してアメリカ大企業は世界支配をたくらんでいる」と主張する「反米団体」や「過激環境団体」がいるとされ、それがGM作物の印象を悪化させているとの主張もみられる。上記被告のシュマイザーは自らを「遺伝子汚染」の悲劇の被害者として、「遺伝子組換え作物反対派」と共に日本国内でもたびたび「反対活動」を行っている。
健康への影響例としてよく挙げられるものに「遺伝子組換えジャガイモを実験用のラットに食べさせたところ免疫力が低下した」と世間に大きな衝撃を与えたレポート(Pusztai(パズタイ)事件)があるが、これは実験そのものが杜撰であり、使用した遺伝子組換えジャガイモが安全性が確認され商品化されているジャガイモとは全く別なレクチンという哺乳動物に対し有害な作用を持つタンパク質を作る遺伝子を組み込んだ実験用ジャガイモであり、有害な遺伝子を組み込んだ遺伝子組換え作物は有害だったと当たり前の結果が出たに過ぎない。この実験は、マツユキソウの殺虫活性のあるレクチンを生産する組換えジャガイモ、親株のジャガイモにレクチンを注入したもの、親株のジャガイモ、を生のままものと茹でたものに分け、6頭ずつのラットに10日間与えて消化管を調べたところ、炎症や免疫の低下が組換えジャガイモを飼料としたものにみとめられたというものである(the Lancet, Vol. 354, p. 1353-1354 (1999)[5])。
この実験には栄養学的な問題や検定数が少ないという問題以前に実験の設計段階での欠陥として、
- レクチンの遺伝子を含まない空のベクターを用いて形質転換した、つまりレクチンを生産しない組換えジャガイモと、更にそれにレクチンを注入した2種類のコントロールがない。
- 注入したレクチンが複数のレクチンの混合物でないことを証明していない(組換え体は単一の遺伝子に由来するレクチンを生産しているが、実験で用いられたレクチンは単一の遺伝子産物であるという証明がなされていない)。
- 遺伝子組換えと関係がない、組織培養に伴う体細胞変異を考慮していない。
という点が挙げられる。実験設計の不備のため、この実験によって遺伝子組換え自体によって危険性が増すという結論を導き出すことはできない。この論文に関しても、社会的な問題が大きいから論文の内容にかかわらず掲載することにしたという異例の編集者の意見が明記されて掲載された経緯がある(commentary, the Lancet, Vol. 354, p. 1314-6 (1999)[6][7])。それには以下のように記されている。
- "Pusztai's work has never been submitted for peer review, much less published, and so the usual evaluation of confusing claim and counter-claim effectively cannot be made."
- "I would like see [this work] published in the public domain so that fellow scientists can judge for themselves...if the paper is not published, it will be claimed there is a conspiracy to suppress information."
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 遺伝子組換え食品ホームページ(厚生労働省医薬食品局食品安全部)
- 遺伝子組換え農作物/遺伝子組換え食品関係情報
- 遺伝子組換え作物の栽培に関する検討委員会
- 食品の安全性と遺伝子組換え生物の将来展望に関する情報と解説
- 遺伝子組み換え食品研究所
- 本当はどうなの?遺伝子組み換え食品
- 世界の遺伝子組換え作物の栽培状況
- 人類生態学の視点からみた遺伝子組換え技術
- 農林水産技術会議事務局技術安全課遺伝子組換えに関するQ&A
- 日本版バイオセーフティクリアリングハウス(環境省)
- 遺伝子組み換えの科学的情報を提供する バイテク情報普及会
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