食品照射
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食品照射(しょくひんしょうしゃ、food irradiation)とは、食品にX線、ガンマ線や電子線などの放射線を照射することによって貯蔵期間の延長と殺菌・殺虫などを行う技術のこと。
食中毒の予防や、環境に対して悪影響や残留性が認められる農薬・薬剤の代替手段として注目されている。
1900年ごろには既にX線を照射された微生物が死滅することが知られていた。また1940年ごろにはジャガイモなどの根菜類に放射線を照射することで発芽を防止できることが知られていた。
1942年-1943年にはマサチューセッツ工科大学において、アメリカ陸軍の嘱託をうけて、X線照射によるハンバーグ・パティ(整形された焼く前のハンバーグ肉)の保存についての研究報告がなされている。
現在最も多く実用化されているのは、香辛料や乾燥野菜の殺菌である。これはアメリカ、オランダ、フランス、ベルギー、大韓民国、中華人民共和国など30か国以上で実用化されている。香辛料は加熱殺菌するとその香味が著しく損なわれること、また直接に摂食するものであるため薬剤による殺菌・殺虫を避けるためである。
FAO(国際連合食糧農業機関)、IAEA、WHOの食品照射合同専門家委員会は1980年に10キログレイ以下の照射食品の安全宣言を行っている。またWHOは1997年にこの上限を撤廃し、30-50キログレイの照射を受けた食品についても安全宣言を行っている。ただし2003年のCODEX総会において、10キログレイの上限を基本的に引き継ぎ、それ以上の高線量照射食品については一部の食品についてのみ認めるという方針が出されている。
さまざまな有用性があり、国際的にも広く認められている手法であるが、日本人独特の「放射能アレルギー」(身体的なアレルギー反応ではなく、心理的、盲目的な拒絶反応)もあり、日本ではなかなか浸透していない。
日本ではジャガイモだけが食品照射を認められている。FAOなどの安全宣言に基づき、他の食品にも許可範囲を広めようという検討がなされているが、消費者団体などからの反対意見も根強い。
茨城県常陸大宮市に、ガンマーフィールド(独立行政法人農業生物資源研究所 放射線育種場)があり、照射実験が行われているほか、年一回場内を一般公開をしている。
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