複写機
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複写機(ふくしゃき)とは原稿、本の一部などの複製をとるもので、俗にコピー機と言われる。拡大や縮小も可能で、紙の大きさも可変である。乾式と湿式があり、乾式がよく使われる。また、カラーコピーも可能な複写機も存在する。英語で複写機はゼロックス (Xerox)というが、これは商標からきたものである。 用紙はたいてい普通紙(コピー用紙)であるが、OHPシートなど特殊なものにも印刷できる機種もある。大量の用紙をストックする用紙ホルダと、一時的に特別な用紙を挿入するための手差しトレイを備えているものが一般的である。また、複写機という名称からも解るように、少数の複写を作成することを意図しており、簡易に複写を作成することが出来る反面、コスト面、速度面から大量印刷には向かない。通常、大量印刷にはオフセット印刷機が用いられる。オフセット印刷機と複写機の中間に位置する機械として簡易印刷機があり、孔版印刷を用いた理想科学工業のリソグラフなどが学校・官公庁などで普及している。
2000年代に入り、ビジネス向け複写機は、ほとんどがデジタル式である。また、パーソナルコンピュータとLANの普及に伴って複写機・プリンター・ファクシミリ・イメージスキャナなどの各種機能が統合されたデジタル複合機が使用されるようになった。これらの複合機には、LAN経由で操作が行えるものも多い。
メーカーとしては、リコー、キヤノン、富士ゼロックス、シャープなどが高いシェアを誇っている。そのほかに、いくつかのメーカーがデジタル式の複合機を作っている。「コピーは三田」のキャッチフレーズや、ユニークなCMを作っていた三田工業は1998年に倒産し、2000年に京セラの出資を受けて京セラミタとなった。デジタル化に乗り遅れた、ということも倒産の一因と言われている。
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[編集] 複写機の種類
複写機の種類には、大きく分けてジアゾ式複写機とPPC複写機(Plain Paper Copier、普通紙複写機)がある。現在ではほとんどがPPC複写機であるが、ジアゾ式複写機も設計図面用(特にA2判以上の大判用紙)に根強い需要がある。
[編集] ジアゾ式複写機
ジアゾ式複写機には、湿式と乾式のものがある。 湿式の複写工程は、原紙と複写紙(感光紙)を密着させ、複写機内を通過させながら紫外線を照射する。この過程で、原稿の地肌部分に当たる複写紙上のジアゾ化合物を分解消滅させる事により感光させる。この後の工程で液体の現像剤を塗布し、ジアゾ化合物が残された「文字・線」部分を現像し発色させる。現像後の複写紙の色には青色、黒色等があるが、大多数の色は青っぽい色をしているので青焼き、青写真、青図とも言われる。なお、乾式の複写機では、現像の工程でアンモニアガスを用いる。こちらは大型・高速・高価格なタイプである。
複写紙には青焼きとして使う紙の他に、第二原紙と呼ばれる半透明の物もある。
[編集] メリット
- PPC複写機と異なり光学的プロセスを持たないため、原稿との相違(光学的な収差など)が極めて少ない。
- 機械の構造的にも単純であり大判(A0,A1)の複写も容易である。
[編集] デメリット
- 感光紙は、光線不透過(販売時に、袋詰めされている)の袋に入れて保管する必要がある。
- 現像後の複写紙も光線下では退色が激しいので、保管には注意を払わなければならない。
- 原稿は光透過性が低い本のような厚い物や、両面刷り原稿の複写はできない。
[編集] PPC複写機
PPC複写機は、1938年にアメリカのチェスター・F・カールソンによって、後にゼログラフィと呼ばれる基本技術が発明された。その特許を米ハロイド社(現在のゼロックス)が買い取って製品の開発を進め、1959年に世界初の事務用普通紙複写機(PPC複写機)が開発された。そのため前述のように欧米でXeroxと言う言葉が複写機の代名詞(レトロニム)として使われるようになった。その後、リコー、キヤノンなどからも製品が開発され、現在に至っている。
PPC複写機は、大きく分けて作像部・用紙搬送部・スキャナ部に分けられる。
[編集] 作像部
- 感光体(感光ドラム・感光フィルム)
- 半導体を用いており、暗中では絶縁体の性質を持ち、明るい場所では導体の性質を持つ為、暗中でプラスまたはマイナスに帯電させることで、トナーを付着させる電荷を持たせる事ができる。光が当たった部位は導体となり電荷を失う。
- 一次帯電
- 前露光による残留電荷が除去がされて電荷を持たない感光体に対して、プラスまたはマイナスの電荷を持たせる。 帯電器の方式としてまず、非接触型放電方式のコロトロン型およびスコロトロン型がある。また、最近は接触方式の帯電ローラや帯電ブラシを用いる製品も多い。
- 露光
- 電荷を持った感光体表面に原稿からの反射光、もしくはレーザー光を照射する事で静電潜像を作像する。レーザー露光方式ではトナーを乗せる部分へ光を当てる。反射光(従来形式のアナログ機)方式では、トナーを乗せたくない部分に光を当てる(一部機種では逆)。尚、 レーザー露光方式の物でもトナーを乗せたくない部分に光を当てるものもある。デジタル機の露光方式として、レーザを用いるものや、LEDとグラスファイバアレイの集合体などがある。
- 現像
- 露光によって電荷が失われなかった部分へ、感光体とは逆の電荷を持ったトナーを乗せる方式と、電荷が失われた部分へトナーを押し込む方式がある。ここで、感光体上にはトナーによる原稿の鏡像が作られる。
- 転写
- 感光体上のトナーによる鏡像を転写紙へ移す。転写紙の裏側からトナーと逆の電荷(転写バイアス)をかけ、感光体へ転写紙を吸着させる。
- 分離
- 吸着した転写紙を引きはがすため、転写と逆の電荷を含ませた交流放電をかける「電位分離」と転写紙を曲げて分離する「曲率分離」がある。このとき、転写対象物の電荷を逃がす分離除電針や分離帯電器も用いて、感光ドラムからの分離を補助する機構がある。
- 除電
- 感光体上に残った電荷をできる限り0にするため、感光体表面へ均一に光を当てたり(前露光)、交流放電をかける。
- クリーニング
- 感光体上のトナーは100%転写紙へ移るわけではないので、感光体上のトナーを荷電ブラシやゴムブレード等で回収する。
以上、帯電→露光→現像→転写→分離→除電→クリーニングのプロセスが感光体上で行われる。
- トナー
- マイナスかプラスの電気性質を持つ。帯電性を持ったプラスチック粒子に炭素等の色粒子を付着させた微粒子。現像剤と混合されて使用する場合もあるが、トナーだけ使用する1成分方式の場合もある。
- デベロッパー (現像剤)
- 磁性体をエポキシ樹脂等でコーティングした微粒子でトナーと混合され使用される。トナーと撹拌する事でトナーに電荷を持たせ、静電効果を利用して感光体に付着させるための触媒及び搬送体。一般には感光体と同じ程度の寿命なのでセットで交換される事が多い。トナーの消費と同期して補充、回収され、現像剤の定期交換が必要ない方式が一般化している。
[編集] 用紙搬送部
- 給紙部
- 用紙トレイから一枚ずつ転写紙を複写機内部へ送り込む。多重送りを防ぐ機構に、分離爪方式、分離ローラー方式、分離パッド方式がある。
- レジスト部
- 用紙の先端と画像の先端をあわせるため、一度転写紙を止めてタイミングを合わせる。また、給紙時に生じる斜め送りを是正する作用もある。また、レジストの制御により、用紙先端余白幅の調整も行われる。
- 転写、分離部
- 作像部の転写、分離と同じ。
- 搬送部
- 転写後の用紙を定着部へと搬送する。熱に弱い感光体と、高温部の定着部との距離を保つ役割も兼ねている。
- 定着部
- 転写紙上のトナーは不安定なため、熱または熱と圧力を同時に加え、トナーの樹脂成分を溶着させる事で定着させる。方式として、ローラ定着・フィルム定着・フラッシュ定着などがある。
- 排紙部
- 定着後の用紙が、溶解したトナーの粘性で、定着ローラーに巻き付く事を分離爪で防止させ、排紙トレイに導く。
[編集] スキャナ部
デジタル式複写機の場合、コンピュータ用のスキャナと同様の仕組みで原稿をデジタルデータ化し、感光体を露光するレーザー光を生成する。
- CCD方式
最も一般的な方法。第一・第二ミラー台が機器正面から見て左右に動き、第一ミラー台の原稿照明ランプにより発せられた光により原稿を第一~第三ミラーを経由してCCDに導かれる。CCDは固定されている。各ミラーが汚れると、画像の一部に帯状の汚れが発生したり、若しくは画像全体が黒くなるなどのトラブルがあるため、定期的な清掃が必要。
- CIS方式
機器正面から見て左右に動く読み取り部に、原稿照明ランプとCCD・グラスファイバアレイが組み合わされた読み取り部が集約されている。構造上、光路上に異物が混入するおそれが非常に少ないため、ほぼメンテナンスフリーといえる。また、簡単な構造のため、小型化しやすいというメリットも併せ持つ。デメリットとして、原稿のシワ・折れなどにより原稿台ガラスと原稿が離れてしまった場合、影やボケ・裏写りが発生する場合が多い。
アナログ式複写機の場合、原稿に照射した光源の反射光を、ミラーで誘導し、レンズを通して倍率とピントを調整して直接感光体へ当ている。
[編集] スキャナ部オプション
スキャナ部のオプションとして、以下のようなものを接続することが可能な製品もある。
- 自動原稿送り装置(ADF, Automatic Document Feeder、フィーダとも)
複数枚の原稿を自動的にスキャナに送り、連続して原稿を読み込ませる装置。オフィス向け製品に搭載されることが多い。
[編集] メリット
- 薬品の塗っていない、普通の紙を利用できる。
- 複写物を長期保管しても劣化が少ない。
- 厚い物や、両面刷り原稿の複写もできる。
- 複写時の拡大、縮小ができる。
- デジタル式の場合、大量コピーの時間が短い。
[編集] デメリット
- 光学的な収差が出る場合がある。(図面関係の読み取りで問題になる場合が出る)
- A1以上の大判用紙への複写が可能な機種は、大型かつ高価(数百~数千万円)となり、一般には導入されていない。
[編集] カラーコピーの仕組み
PPC複写機の一種である。
- PPC複写式のように光を複製したい紙に当てるが、カラーコピーではカラーフィルタ(カラーCCD)で色をRGB(赤、緑、青それぞれの頭文字、光の三原色)に分解し、それを信号化する。
- 分解された色の信号はコンピュータによって処理され、コンピュータはYMC(イエロー、マゼンタ、シアンそれぞれの頭文字、色の三原色)とBk(黒)に信号を変換する。
- PPC複写式のようにトナーを紙に写していくが、カラーコピーではコンピュータからの信号で場所によって違う色のトナーを載せていく(メーカーによって黒の載せる順番が違う)。
以前は、紙を中間転写ローラーに巻きつけ、各色毎にトナーを転写していたが最近の機種は、中間転写体に各色のトナーを転写し、そのトナーを紙に転写する構造になっている。これは、コピー速度を上げるためや、中間転写体を用いても色ぶれを起こさない制御が可能になったためである。
[編集] カラーコピーの現像方式
[編集] ロータリー現像方式
基本構造は使用するトナー色の数だけ現像部を使用して、感光体は一つですませてしまう方式。現像部から感光体に載せられたトナーは中間転写体上へ転写されそのまま保持される。この後現像部の位置を入れ替えて、トナー色の数だけ感光体→中間転写体へ転写し、最後に用紙上へトナーを再転写させる。現像部の入れ替え方式や納められている構造がリボルバー式拳銃の弾倉に似ているためにロータリー(回転体)現像方式と呼ばれるようになった。一部のメーカーではそのまま「リボルバー現像方式」と呼んでいる場合もある。
[編集] タンデム現像方式
ロータリー現像方式が感光体を1つしか使わないことに対して、タンデム現像方式はトナーの数だけ感光体を利用する。つまりPPC複写機の作像部全体が複数あることになる。現像部が入れ替わらないため、ロータリー現像方式に比べて中間転写体上でのトナー像作成時間が短くなる。これによって複写機の複写速度を上げることができる反面、機械本体や作像部が大きく作られてしまうなどのデメリットも存在する。
[編集] 銀塩写真方式
読み取った原稿画像を、写真の印画紙のようなものへ露光させる方式。大がかりなインスタントカメラの様な方式のもの。または印画紙のようなものへ露光すると、印画紙内部で普通紙へ転写可能なインクのポジ画像を作るものもある。この場合は印画紙と用紙を密着させ圧力などで転写させる事になる。感光体や現像部を持つ必要がないため機械の小型化が可能であるが、専用用紙のコストが高いなどの理由により現在ではあまり見ることのできない方式になった。
[編集] それ以外の方式
現在ではほとんど用いられていない方式について説明する。
[編集] 直接静電複写方式
現在製造販売されているほとんどの複写機は、トナー像を感光体の上に作像してコピー用紙へ転写する方式をとっている。これを総称して乾式間接静電複写機という。それに対して、現在ではほとんど見られなくなったが、感光体に使われる物質を塗布した用紙上に、トナー像を作る方式のものを乾式直接静電複写機という。ここで言う「乾式」とは現像剤やトナーが粒子状のものを指しているため、液状のものを使用する方式をそれぞれ「湿式間接静電複写機」「湿式直接静電複写機」と呼ぶ。 直接静電複写機のメリットとしては、転写によるトナー像の劣化がなくなるため、非常に鮮明な画像が得られることである。このメリットを利用してオフセット印刷用製版機として使われていたことがある。また感光体や中間転写体を機械内部で持つ必要がないため、機械本体を小型化できるという面もある。
[編集] 湿式静電複写方式
トナーや現像剤が液状のものを使う方式を指す。トナー粒子は細かければ細かいほど鮮明な画像が得られやすくなる。その反面細かい粒子として製造するには高度な技術が必要でもある。そのためトナーを液状現像剤の中に溶かしてしまうことによって、微細な粒子を簡単に得ることができた。これが湿式静電複写方式である。トナー粒子が細かくなることによって画像が鮮明になる反面、大きな面積にトナーを付着させようとするとどうしても不均一になりやすい、トナーが乾燥してしまうことを防ぐために定期的な撹拌作業が必要になる等のデメリットもある。
[編集] 複写物の著作権
- 本の一部または全部を複写して無断で配布または販売することは、一部の例外(学校での授業用に配布する必要最小限の資料など)を除いて、著作権法で禁じられている。複写物の配布には著作権者の許諾を得ることが必要であるが、手続きを簡素化するために、日本複写権センターに権利業務が委託されている場合もある。
- また、紙幣(偽札)、小切手など有価証券を複写することも法律で禁じられている。これらに関しては実際に公で使用しない目的(個人的なコレクション等)であったとしても本物と紛らわしくなるものを作成すること自体が犯罪行為と見なされ、悪質な場合は刑事罰処分を受けることにも成る。ちなみに、近年のデジタル複写機では、紙幣を認識して紙幣の複写自体が不可能(「COPY」などの文字が入ったり、黒く印刷されたりする)になっているものもある。